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7.ヤキモチなんかじゃない
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「いいチョイスですね。子どもたちも、きっと喜ぶと思います」
紙芝居を確認してくれていた保育士さんが、あたしたちに向かってにっこりほほえんだ。
「よかった。ありがとうございます!」
逢坂先輩の方を見ると、小さくうなずいてくれた。
普段怒られてばかりだから、少しでも先輩の役に立ててよかった。
にこっと笑ってみせると、逢坂先輩はあたしから顔をそらして、小さく咳ばらいした。
「じゃあ、当日までにしっかり練習してきますね」
「そうですね。よろしくおねがいします」
保育士さんとあたしのやりとりを聞いていた逢坂先輩が、明らかにイヤそうな顔をする。
「まさか、ぶっつけ本番でやるつもりだったんですか? ダメですよぉ。子どもたちって、意外とそういうとこ鋭いんですから。こっちも本気でやらなくちゃですよ」
「そうか……。まあ、この件に関しては佐倉に従うよ」
諦めたように逢坂先輩がそう言い終えた直後、ババーンッ! とドアが開いて、小さな子どもたちがわらわらと乱入してきた。
「ねえねえ、なつまつりのおはなしにきたんでしょ? ことしはなにやってくれるの?」
「ねえ、おにーちゃん、いっしょにおままごとしよ」
「まてよ。オレらとサファリマンごっこするんだからな」
そんな子どもたちに「きゃーかわいい!」とはしゃぐあたしとは対照的に、逢坂先輩は慌てたような表情を浮かべて腰を浮かす。
「ほら、今お客様とお話し中だから。早く外に出なさい」
先生がいくら言っても、応接室の中の大さわぎは収まらない。
『なんとかしてくれ』とでも言いたげな表情で、先輩があたしの方を見てくる。
「ねえ、みんな聞いて。お姉ちゃんたち、今度の夏祭りで紙芝居屋さんをやるから、楽しみにしててね!」
子どもたちの視線に合わせるようにして腰をかがめて言うと、わあーっと歓声があがる。
ツンツンと左袖を引っ張られ、見るとツインテールのかわいらしい女の子が立っていた。
「どうしたの?」
「おにーちゃんとおねーちゃんって、つきあってるの?」
「へ?」
突然の質問に、ヘンな声がもれる。
「カレシとカノジョ? それとも、ケッコンしてるの?」
あたしを見あげる女の子の瞳が、キラキラ輝いてる。
「ど、どっちもちがうよ!? 結婚は十八歳にならないとできないし、カレシなんて言ったら、お兄ちゃんに怒られちゃうからね!?」
そう言いながらも、思わず顔が引きつる。
いくら小さい子でも、こんな勘ちがいされたら、絶対イヤですよね?
おそるおそる逢坂先輩の方を盗み見ると……ほら、やっぱり!
「先輩、そんな怖い顔したら、子どもたちが怖がっちゃいますよ。ここは耐えてください」
今度は、先輩の眉間に深い深いシワが刻まれる。
「まだみんな小さいんですから。こんなことで怒っちゃダメですって」
あたしがたしなめるように言うと、逢坂先輩は大きなため息をついた。
「おにーちゃん、どんまい」
さっきのツインテールの女の子が、先輩の背中をポンポンとたたく。
あぁっ、そんな火に油を注ぐようなことをしたら大変なことに……!
慌てて止めに入ろうとしたら、予想に反して、逢坂先輩がやさしく女の子の頭をなでた。
「ありがとな」
うれしそうに先輩を見あげる女の子に、なぜだかチクッと胸が痛む。
なんだろ、これ。
ひょっとして……いやいや。ないない。
だって、保育園児だよ?
それに、あたしが……ヤキモチを妬く理由なんて、どこにもないんだから。
紙芝居を確認してくれていた保育士さんが、あたしたちに向かってにっこりほほえんだ。
「よかった。ありがとうございます!」
逢坂先輩の方を見ると、小さくうなずいてくれた。
普段怒られてばかりだから、少しでも先輩の役に立ててよかった。
にこっと笑ってみせると、逢坂先輩はあたしから顔をそらして、小さく咳ばらいした。
「じゃあ、当日までにしっかり練習してきますね」
「そうですね。よろしくおねがいします」
保育士さんとあたしのやりとりを聞いていた逢坂先輩が、明らかにイヤそうな顔をする。
「まさか、ぶっつけ本番でやるつもりだったんですか? ダメですよぉ。子どもたちって、意外とそういうとこ鋭いんですから。こっちも本気でやらなくちゃですよ」
「そうか……。まあ、この件に関しては佐倉に従うよ」
諦めたように逢坂先輩がそう言い終えた直後、ババーンッ! とドアが開いて、小さな子どもたちがわらわらと乱入してきた。
「ねえねえ、なつまつりのおはなしにきたんでしょ? ことしはなにやってくれるの?」
「ねえ、おにーちゃん、いっしょにおままごとしよ」
「まてよ。オレらとサファリマンごっこするんだからな」
そんな子どもたちに「きゃーかわいい!」とはしゃぐあたしとは対照的に、逢坂先輩は慌てたような表情を浮かべて腰を浮かす。
「ほら、今お客様とお話し中だから。早く外に出なさい」
先生がいくら言っても、応接室の中の大さわぎは収まらない。
『なんとかしてくれ』とでも言いたげな表情で、先輩があたしの方を見てくる。
「ねえ、みんな聞いて。お姉ちゃんたち、今度の夏祭りで紙芝居屋さんをやるから、楽しみにしててね!」
子どもたちの視線に合わせるようにして腰をかがめて言うと、わあーっと歓声があがる。
ツンツンと左袖を引っ張られ、見るとツインテールのかわいらしい女の子が立っていた。
「どうしたの?」
「おにーちゃんとおねーちゃんって、つきあってるの?」
「へ?」
突然の質問に、ヘンな声がもれる。
「カレシとカノジョ? それとも、ケッコンしてるの?」
あたしを見あげる女の子の瞳が、キラキラ輝いてる。
「ど、どっちもちがうよ!? 結婚は十八歳にならないとできないし、カレシなんて言ったら、お兄ちゃんに怒られちゃうからね!?」
そう言いながらも、思わず顔が引きつる。
いくら小さい子でも、こんな勘ちがいされたら、絶対イヤですよね?
おそるおそる逢坂先輩の方を盗み見ると……ほら、やっぱり!
「先輩、そんな怖い顔したら、子どもたちが怖がっちゃいますよ。ここは耐えてください」
今度は、先輩の眉間に深い深いシワが刻まれる。
「まだみんな小さいんですから。こんなことで怒っちゃダメですって」
あたしがたしなめるように言うと、逢坂先輩は大きなため息をついた。
「おにーちゃん、どんまい」
さっきのツインテールの女の子が、先輩の背中をポンポンとたたく。
あぁっ、そんな火に油を注ぐようなことをしたら大変なことに……!
慌てて止めに入ろうとしたら、予想に反して、逢坂先輩がやさしく女の子の頭をなでた。
「ありがとな」
うれしそうに先輩を見あげる女の子に、なぜだかチクッと胸が痛む。
なんだろ、これ。
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それに、あたしが……ヤキモチを妬く理由なんて、どこにもないんだから。
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