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11.体育祭本番!
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『ダルマ運びリレーに出場する選手は、入場門付近にお集まりください』
召集のアナウンスが流れ、きょろきょろとあたりを見回す。
あれっ? ヒヨちゃんがどこにもいない。
どこ行っちゃったんだろ?
そういえば、ずいぶん前に『トイレに行ってくるね』って言ってたけど、あれから姿を見ていないような気がする。
「若葉、たいへんだよ! 日和が……!」
声のする方を見ると、夏樹ちゃんが遠くの方から走ってくるのが見えた。
わたしの目の前まで来ると、はぁ、はぁ、はぁと膝に手をついて荒い呼吸をする。
「ねえ、なにがあったの?」
悪い予感に、心臓がきゅっとする。
「トイレから戻る途中に、階段を踏みはずしちゃってさ。今、保健室で応急処置してもらってるとこ」
「えぇっ⁉ 大丈夫なの?」
「それが、あんま大丈夫じゃなさそうなんだよね。足をひねっちゃったみたいで、歩くのも痛いって」
「そっか……」
今すぐにでも保健室に飛んでいきたいところだけど、行ったところで、まさか治癒能力を使う訳にもいかないし……。
それよりも、今はダルマ運びリレーをどうするか、考えなくちゃ。
責任感の強いヒヨちゃんだもん。きっとわたしのことを心配しているにちがいないよ。
「わたしが代わりに出られればいいんだけど、ダルマの次が男女混合リレーだからさ。ほんっとごめんね」
夏樹ちゃんが、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる。
「そんな、謝らないで! そう言ってくれただけで、すごくうれしいから」
「じゃあ、他に誰か出られそうな人に頼んで……」
夏樹ちゃんが女子の応援席の方を見ると、みんな一斉に視線をそらした。
誰もわたしとなんかやりたくない……よね。
「ちょっと、みんな! そんなことしてる場合じゃないでしょ⁉」
夏樹ちゃんが苛立った声をあげても、誰も立ちあがろうとしない。
そのとき。沈黙する女子の応援席へと、一人の男子が近づいていった。
佐治くんだ。
「沢村。古賀の代わりに、ダルマ運びリレーに出てくれないか?」
「え……。なんで、わたし?」
「すまない。他に頼める女子がいないんだ」
そう言って、佐治くんが凛香ちゃんに向かって深々と頭をさげる。
「も~、斗真くんに頼まれたら、断れるわけないじゃん。別にいいよ。わたしと一緒に出よ、若葉ちゃん」
にこっと笑いながら立ちあがる凛香ちゃん。
「ほら、早く行くよ」
先にすたすたと歩きはじめた凛香ちゃんの背中を慌てて追いかけようとして、ハッとして夏樹ちゃんと佐治くんの方を振り返る。
「二人とも、本当にありがとう!」
「うん、若葉も凛香もがんばれーっ!」
夏樹ちゃんの応援に背中を押され、駆け足で凛香ちゃんに追いつくと、
「うるさいわね。なんでよりによってわたしが篠崎さんと出なくちゃいけないわけ?」
と、凛香ちゃんが口の中でぶつぶつとつぶやくのが聞こえてきた。
「凛香ちゃん、あの……ありがとね」
思いきって背中に声をかけると、振り向きざまにギロッとにらまれた。
「斗真くんに頼まれたから、仕方なく出るの。わかったら、これ以上話しかけないで」
「う、うん……」
入場門の手前で、ダルマ運びリレーの前の男子四×一〇〇メートルリレーが終わるのを待っている間も、凛香ちゃんはずっとピリピリした空気を全身にまとったまま。
わたしがなにか言ったって、凛香ちゃんの神経を逆なでするだけ。
わかってるけど……でも、ちゃんと言わないと、わたしの気持ちは伝わらない。
ぎゅっとお腹に力を入れると、わたしはもう一度口を開いた。
「それでもっ! 本当に困ってたから、凛香ちゃんが一緒に出てくれるって言ってくれて、うれしかったよ」
「あっそ。せいぜいわたしに恥をかかせないように、ちゃんとやってよね」
「うん。がんばろうね!」
返事は返ってこなかった。
けど、なんとなくさっきよりも言葉のトゲが丸くなったような気がして、きっと大丈夫って思えた。
『ダルマ運びリレーに出場する選手は、入場門付近にお集まりください』
召集のアナウンスが流れ、きょろきょろとあたりを見回す。
あれっ? ヒヨちゃんがどこにもいない。
どこ行っちゃったんだろ?
そういえば、ずいぶん前に『トイレに行ってくるね』って言ってたけど、あれから姿を見ていないような気がする。
「若葉、たいへんだよ! 日和が……!」
声のする方を見ると、夏樹ちゃんが遠くの方から走ってくるのが見えた。
わたしの目の前まで来ると、はぁ、はぁ、はぁと膝に手をついて荒い呼吸をする。
「ねえ、なにがあったの?」
悪い予感に、心臓がきゅっとする。
「トイレから戻る途中に、階段を踏みはずしちゃってさ。今、保健室で応急処置してもらってるとこ」
「えぇっ⁉ 大丈夫なの?」
「それが、あんま大丈夫じゃなさそうなんだよね。足をひねっちゃったみたいで、歩くのも痛いって」
「そっか……」
今すぐにでも保健室に飛んでいきたいところだけど、行ったところで、まさか治癒能力を使う訳にもいかないし……。
それよりも、今はダルマ運びリレーをどうするか、考えなくちゃ。
責任感の強いヒヨちゃんだもん。きっとわたしのことを心配しているにちがいないよ。
「わたしが代わりに出られればいいんだけど、ダルマの次が男女混合リレーだからさ。ほんっとごめんね」
夏樹ちゃんが、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる。
「そんな、謝らないで! そう言ってくれただけで、すごくうれしいから」
「じゃあ、他に誰か出られそうな人に頼んで……」
夏樹ちゃんが女子の応援席の方を見ると、みんな一斉に視線をそらした。
誰もわたしとなんかやりたくない……よね。
「ちょっと、みんな! そんなことしてる場合じゃないでしょ⁉」
夏樹ちゃんが苛立った声をあげても、誰も立ちあがろうとしない。
そのとき。沈黙する女子の応援席へと、一人の男子が近づいていった。
佐治くんだ。
「沢村。古賀の代わりに、ダルマ運びリレーに出てくれないか?」
「え……。なんで、わたし?」
「すまない。他に頼める女子がいないんだ」
そう言って、佐治くんが凛香ちゃんに向かって深々と頭をさげる。
「も~、斗真くんに頼まれたら、断れるわけないじゃん。別にいいよ。わたしと一緒に出よ、若葉ちゃん」
にこっと笑いながら立ちあがる凛香ちゃん。
「ほら、早く行くよ」
先にすたすたと歩きはじめた凛香ちゃんの背中を慌てて追いかけようとして、ハッとして夏樹ちゃんと佐治くんの方を振り返る。
「二人とも、本当にありがとう!」
「うん、若葉も凛香もがんばれーっ!」
夏樹ちゃんの応援に背中を押され、駆け足で凛香ちゃんに追いつくと、
「うるさいわね。なんでよりによってわたしが篠崎さんと出なくちゃいけないわけ?」
と、凛香ちゃんが口の中でぶつぶつとつぶやくのが聞こえてきた。
「凛香ちゃん、あの……ありがとね」
思いきって背中に声をかけると、振り向きざまにギロッとにらまれた。
「斗真くんに頼まれたから、仕方なく出るの。わかったら、これ以上話しかけないで」
「う、うん……」
入場門の手前で、ダルマ運びリレーの前の男子四×一〇〇メートルリレーが終わるのを待っている間も、凛香ちゃんはずっとピリピリした空気を全身にまとったまま。
わたしがなにか言ったって、凛香ちゃんの神経を逆なでするだけ。
わかってるけど……でも、ちゃんと言わないと、わたしの気持ちは伝わらない。
ぎゅっとお腹に力を入れると、わたしはもう一度口を開いた。
「それでもっ! 本当に困ってたから、凛香ちゃんが一緒に出てくれるって言ってくれて、うれしかったよ」
「あっそ。せいぜいわたしに恥をかかせないように、ちゃんとやってよね」
「うん。がんばろうね!」
返事は返ってこなかった。
けど、なんとなくさっきよりも言葉のトゲが丸くなったような気がして、きっと大丈夫って思えた。
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