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相棒
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大輔が目を覚ますと、傍らには煋蘭が座していて、
「気が付いたようだな」
と大輔に声をかけた。
「煋蘭ちゃん、俺の事介抱してくれたのか?」
大輔が嬉しそうに聞くと、
「うむ」
と答えた。まさか、本当に煋蘭が介抱してくれたとは思ってもみなかった大輔は、一瞬、冗談なのかと思ったが、煋蘭が冗談を言うタイプではないと思い直し、にんまりとした。
(煋蘭ちゃん、やっぱ、俺の事を気に掛けてくれてるんだな)
「お前、私を何だと思っているのだ? 私にとってお前は大事な相棒だ。放っておくわけがなかろう」
と煋蘭は真顔で、大輔の心の声に答えた。
「そうだよね。煋蘭ちゃんは相棒を大事に想っているよね」
大輔は嬉しすぎて、確認するように言った。
「当り前だ」
煋蘭はそう答えて、一呼吸置き、
「昨夜の話をしよう」
と話を切り替えた。大輔は起き上がって煋蘭の真正面に座り、
「おう」
と煋蘭が語り出すのを待った。
夕べ、お前の寝込みを襲った者は、皇西家の者だ。名を皇澪という。お前を色仕掛けで誘惑したのは私との婚約を破談させることが目的だったようだ。澪を刺客に寄こしたのは皇西家の者だが、夜斗様ではない。澪は誰に命じられたのかは言わなかった。こちらとしても、同じ皇の者を拷問にかけるなど非道な真似はしたくはないからな。澪が口を割らないのなら、それでも良い。私には心当たりがあるから。
と煋蘭はそこまで言って、言葉を切り、
「朝食がまだであろう? 食事が済み次第出かけるぞ」
そう言って立ち上がり、障子を開けると、そこには料理の乗った膳を持った家人の女性が立っていた。
「ご苦労、下がってよいぞ」
煋蘭は膳を受け取ると、大輔の座る前に置き、
「ゆっくり食せ。膳は片付けるのだぞ」
と言い残し、部屋をあとにした。
「おう。ありがとう煋蘭ちゃん」
大輔は礼を言って、朝食に手を付けた。
食事を終えて、膳を片付けて部屋へ戻ると、
「では支度をしよう」
煋蘭が待っていて、いつものように甲斐甲斐しく大輔の身支度を整えた。
「では、行くぞ」
煋蘭は行き先も、その目的も言わず大輔を促した。
「あの~? 煋蘭ちゃん? 今から何処へ何しに行くの?」
全く説明もないままでは、気になって仕方がない大輔が煋蘭に尋ねると、
「皇西家へ行く。あの曲者、澪みおを連れてな」
と答えた。玄関には式神に拘束された澪が待たされていた。
「あっ、大輔さん、煋蘭さん。おはようございます」
澪は屈託なく笑って言った。
(え? 何、この人? なんで笑顔なの?)
縄でぐるぐる巻きにされて、無表情の式神二体が両側にいる状況で、平然と笑っているとはおかしな奴だと、大輔は思った。
「曲者、お前を主の元へ連れて行ってやる。ついてまいれ」
煋蘭はそう言って先を歩いた。
「え? 煋蘭ちゃん? あのまま連れて行くの?」
「そうだ」
煋蘭は一言そう言って、振り返ることなく歩くと、黒い車の前まで行き、
「乗せろ」
と式神に命令した。澪を車の後部座席に乗せると、式神は澪の両側に座った。そして、もう一台の黒い車の後部座席に煋蘭が乗り、
「お前も乗れ」
と大輔を促した。
「おう」
大輔が煋蘭の隣に座ると、車は動き出した。
「煋蘭ちゃん、皇西家って、ここから近いの?」
大輔が隣に座る煋蘭に顔を向けて聞くと、
「近くではないが、術を使えば時間はかからぬ」
と答えた。大輔には煋蘭の言っている意味が分からなかったが、煋蘭の向こう側の窓には、不自然な景色が見えていた。皇家の敷地内でこの車に乗ったはずだったが、そこは見慣れぬ屋敷の前だったのだ。一瞬にして違う場所へと移動したような感覚だ。
「着いたぞ、降りろ」
「おう」
わけも分からず、大輔は言われた通りに車のドアを開けて降りてみると、重量感のある荘厳な佇まいの家屋が目の前にあった。煋蘭が続いて車を降りて、
「行くぞ」
と大輔を促した。もう一台の車からは式神が二体、澪を連れて煋蘭の斜め後ろについた。
「煋蘭様、お待ちして居りました。どうぞ中へ」
皇西家に仕える家人が、数名居並び、煋蘭たちを出迎えた。玄関では一人の女が笑みを浮かべ、
「煋蘭、来てくれて嬉しいわ。どうぞ上がって」
と煋蘭たちを嬉しそうに迎え入れ、
「式神たちは、そこでお留守番よ」
と言うと、煋蘭の式神は頭から強い力で押しつぶされたように三和土に額を打ち付けられた。
「澪、お帰りなさい。あなたはお風呂でも入って、部屋で休んでいてちょうだい」
と澪に言葉をかけてから、奥へ向かって歩いていく。煋蘭と大輔は女の後ろについて奥へと向かった。煋蘭はその間、何も話さなかった。
(どうなってんの? この人、何者? 澪さんを刺客に使ったのって、この人なの?)
大輔がそんな事を考えていると、
「さあ、入って」
と女は二人を部屋へ招き入れた。座卓が真中に配置されていて、座布団が敷かれている。
「座って」
女は笑みを向けて言って、座布団の上に座った。煋蘭が用意された座布団の上に座ると、大輔もそれに従った。
「零お姉さま、このような御ふざけは許容し難く存じます。仮にもこの者は私の伴侶となる者。まかり間違っても他の女と淫らな行為など許されませぬ」
と煋蘭は強い口調で口火を切った。
「ふふふっ。煋蘭、相変わらず初心で、冗談の分からない堅物ね。澪の誘惑に負ける男なら、即刻切り捨てれば良いのよ。まあ、何もなかったみたいで残念だったわ。面白くもないわね」
と零は真顔になって、冷たい視線を大輔に向けた。
(何? この人。頭おかしいの? そんなことして、何が面白いんだよ? こっちは大迷惑だぞ)
大輔が心の中で言うと、
「お前の様な下賤、煋蘭の隣にいることも許されぬ。消えてしまえばいい」
女は汚いものから目を背けるように大輔から視線を逸らした。
「お姉さま、この者は皇の血も薄く、下賤であることは認めましょう。ですが、この者を側に置く事を決めたのは私です。そして、伴侶を決めるのも私です。どうか、これ以上のお戯れはお控えください」
と煋蘭は頭を下げた。
(煋蘭ちゃん、こんな頭の可笑しなやつに、頭を下げる必要ないよ。この人、どうかしてるよ)
「下賤の者、気に食わぬ。即刻死ね」
零はそう言って、大輔に向かって波動を放ったが、すぐさま煋蘭が防御し、
「お姉さま、どうか気を静めてください」
と煋蘭は零に向かって言い、
(お前はその思考を止めろ)
と大輔に向かって思念を送った。
(ごめん、煋蘭ちゃん)
大輔は己の思考のせいで、煋蘭が誰かに謝らなければならない事態になる事を深く反省して謝った。
「ほんと、躾の悪い猿だわ」
零はフンッと鼻を鳴らして、顔を背けた。そこへ、
「煋蘭が来ているようだな。顔を見に来たぞ」
と夜斗がやって来て、
「零、余計な真似をして、我ら皇西家の顔に泥を塗るとはな」
と零に向かって静かに言った。
「叔父様、ごめんなさい。だって、私、煋蘭があんな猿と一緒になるなんて耐えられないんですもの! 叔父様だってそうでしょ? 煋蘭には叔父様がお似合いですもの! あんなのいなくなればいいのに!」
零は夜斗の前では、まるで子供のような口調となって言い訳をした。
「零、お前の気持ちは分かった。あとはおじさんに任せなさい。だから、今は大人しく下がりなさい」
夜斗も零を子ども扱いして下がらせる。
(なんだ? この茶番は? こいつら、一体何なんだ?)
夜斗はその思考を読み取り、大輔を一睨みして、煋蘭へ向き直り、
「煋蘭、この度は私の姪が迷惑をかけて済まなかったな」
頭を下げて素直に詫びた。
「夜斗様、頭を上げてください。零お姉さまのお戯れはいつもの事。今回は少々度が過ぎており、この者も、このような事には慣れておらず、事が大きくなりました。今後、お姉さまには、このようなお戯れをお控えいただくよう、夜斗様からもお伝え頂きたく存じます」
と煋蘭は夜斗に向かって頭を下げた。
「分かった。お前がそんなに言うのならそうしよう。ただ、零は私の言うことなど聞かぬ。兄の代わりにと、私が甘やかして育ててしまったからな。まあ、また、あいつの戯れに付き合う事になるかもしれないが、その時はまた相談に乗る」
と夜斗は笑みを浮かべた。
(こいつ、姪っ子に注意する気ねえだろう)
大輔はつい心の中でそう言ってしまった。もちろん、夜斗にも聞かれているが、相手にもされず、
「煋蘭、時間があるなら、ここでゆっくりしていてもいいのだぞ? 何なら、帰らずにここに住んでもいいぞ」
と笑みを浮かべて言う夜斗に、
「いいえ。私はこの者と共に帰ります。夜斗様、それでは失礼します」
と煋蘭は夜斗に言って、
「立て、帰るぞ」
と大輔を促してその部屋を出た。玄関には煋蘭の式神が二体、縄で縛られ座らされていた。それを楽しそうに澪が見ている。
「あら、煋蘭さん、大輔さん。もう、お帰りですか?」
と笑みを浮かべて二人に言う。煋蘭はそれを無視して、右手を振ると、式神を縛っていた縄がほどけた。
「帰るぞ」
煋蘭が言うと、式神は黙って煋蘭の後ろについて行く。そして、また黒い車に乗って、皇東家へと帰った。
「気が付いたようだな」
と大輔に声をかけた。
「煋蘭ちゃん、俺の事介抱してくれたのか?」
大輔が嬉しそうに聞くと、
「うむ」
と答えた。まさか、本当に煋蘭が介抱してくれたとは思ってもみなかった大輔は、一瞬、冗談なのかと思ったが、煋蘭が冗談を言うタイプではないと思い直し、にんまりとした。
(煋蘭ちゃん、やっぱ、俺の事を気に掛けてくれてるんだな)
「お前、私を何だと思っているのだ? 私にとってお前は大事な相棒だ。放っておくわけがなかろう」
と煋蘭は真顔で、大輔の心の声に答えた。
「そうだよね。煋蘭ちゃんは相棒を大事に想っているよね」
大輔は嬉しすぎて、確認するように言った。
「当り前だ」
煋蘭はそう答えて、一呼吸置き、
「昨夜の話をしよう」
と話を切り替えた。大輔は起き上がって煋蘭の真正面に座り、
「おう」
と煋蘭が語り出すのを待った。
夕べ、お前の寝込みを襲った者は、皇西家の者だ。名を皇澪という。お前を色仕掛けで誘惑したのは私との婚約を破談させることが目的だったようだ。澪を刺客に寄こしたのは皇西家の者だが、夜斗様ではない。澪は誰に命じられたのかは言わなかった。こちらとしても、同じ皇の者を拷問にかけるなど非道な真似はしたくはないからな。澪が口を割らないのなら、それでも良い。私には心当たりがあるから。
と煋蘭はそこまで言って、言葉を切り、
「朝食がまだであろう? 食事が済み次第出かけるぞ」
そう言って立ち上がり、障子を開けると、そこには料理の乗った膳を持った家人の女性が立っていた。
「ご苦労、下がってよいぞ」
煋蘭は膳を受け取ると、大輔の座る前に置き、
「ゆっくり食せ。膳は片付けるのだぞ」
と言い残し、部屋をあとにした。
「おう。ありがとう煋蘭ちゃん」
大輔は礼を言って、朝食に手を付けた。
食事を終えて、膳を片付けて部屋へ戻ると、
「では支度をしよう」
煋蘭が待っていて、いつものように甲斐甲斐しく大輔の身支度を整えた。
「では、行くぞ」
煋蘭は行き先も、その目的も言わず大輔を促した。
「あの~? 煋蘭ちゃん? 今から何処へ何しに行くの?」
全く説明もないままでは、気になって仕方がない大輔が煋蘭に尋ねると、
「皇西家へ行く。あの曲者、澪みおを連れてな」
と答えた。玄関には式神に拘束された澪が待たされていた。
「あっ、大輔さん、煋蘭さん。おはようございます」
澪は屈託なく笑って言った。
(え? 何、この人? なんで笑顔なの?)
縄でぐるぐる巻きにされて、無表情の式神二体が両側にいる状況で、平然と笑っているとはおかしな奴だと、大輔は思った。
「曲者、お前を主の元へ連れて行ってやる。ついてまいれ」
煋蘭はそう言って先を歩いた。
「え? 煋蘭ちゃん? あのまま連れて行くの?」
「そうだ」
煋蘭は一言そう言って、振り返ることなく歩くと、黒い車の前まで行き、
「乗せろ」
と式神に命令した。澪を車の後部座席に乗せると、式神は澪の両側に座った。そして、もう一台の黒い車の後部座席に煋蘭が乗り、
「お前も乗れ」
と大輔を促した。
「おう」
大輔が煋蘭の隣に座ると、車は動き出した。
「煋蘭ちゃん、皇西家って、ここから近いの?」
大輔が隣に座る煋蘭に顔を向けて聞くと、
「近くではないが、術を使えば時間はかからぬ」
と答えた。大輔には煋蘭の言っている意味が分からなかったが、煋蘭の向こう側の窓には、不自然な景色が見えていた。皇家の敷地内でこの車に乗ったはずだったが、そこは見慣れぬ屋敷の前だったのだ。一瞬にして違う場所へと移動したような感覚だ。
「着いたぞ、降りろ」
「おう」
わけも分からず、大輔は言われた通りに車のドアを開けて降りてみると、重量感のある荘厳な佇まいの家屋が目の前にあった。煋蘭が続いて車を降りて、
「行くぞ」
と大輔を促した。もう一台の車からは式神が二体、澪を連れて煋蘭の斜め後ろについた。
「煋蘭様、お待ちして居りました。どうぞ中へ」
皇西家に仕える家人が、数名居並び、煋蘭たちを出迎えた。玄関では一人の女が笑みを浮かべ、
「煋蘭、来てくれて嬉しいわ。どうぞ上がって」
と煋蘭たちを嬉しそうに迎え入れ、
「式神たちは、そこでお留守番よ」
と言うと、煋蘭の式神は頭から強い力で押しつぶされたように三和土に額を打ち付けられた。
「澪、お帰りなさい。あなたはお風呂でも入って、部屋で休んでいてちょうだい」
と澪に言葉をかけてから、奥へ向かって歩いていく。煋蘭と大輔は女の後ろについて奥へと向かった。煋蘭はその間、何も話さなかった。
(どうなってんの? この人、何者? 澪さんを刺客に使ったのって、この人なの?)
大輔がそんな事を考えていると、
「さあ、入って」
と女は二人を部屋へ招き入れた。座卓が真中に配置されていて、座布団が敷かれている。
「座って」
女は笑みを向けて言って、座布団の上に座った。煋蘭が用意された座布団の上に座ると、大輔もそれに従った。
「零お姉さま、このような御ふざけは許容し難く存じます。仮にもこの者は私の伴侶となる者。まかり間違っても他の女と淫らな行為など許されませぬ」
と煋蘭は強い口調で口火を切った。
「ふふふっ。煋蘭、相変わらず初心で、冗談の分からない堅物ね。澪の誘惑に負ける男なら、即刻切り捨てれば良いのよ。まあ、何もなかったみたいで残念だったわ。面白くもないわね」
と零は真顔になって、冷たい視線を大輔に向けた。
(何? この人。頭おかしいの? そんなことして、何が面白いんだよ? こっちは大迷惑だぞ)
大輔が心の中で言うと、
「お前の様な下賤、煋蘭の隣にいることも許されぬ。消えてしまえばいい」
女は汚いものから目を背けるように大輔から視線を逸らした。
「お姉さま、この者は皇の血も薄く、下賤であることは認めましょう。ですが、この者を側に置く事を決めたのは私です。そして、伴侶を決めるのも私です。どうか、これ以上のお戯れはお控えください」
と煋蘭は頭を下げた。
(煋蘭ちゃん、こんな頭の可笑しなやつに、頭を下げる必要ないよ。この人、どうかしてるよ)
「下賤の者、気に食わぬ。即刻死ね」
零はそう言って、大輔に向かって波動を放ったが、すぐさま煋蘭が防御し、
「お姉さま、どうか気を静めてください」
と煋蘭は零に向かって言い、
(お前はその思考を止めろ)
と大輔に向かって思念を送った。
(ごめん、煋蘭ちゃん)
大輔は己の思考のせいで、煋蘭が誰かに謝らなければならない事態になる事を深く反省して謝った。
「ほんと、躾の悪い猿だわ」
零はフンッと鼻を鳴らして、顔を背けた。そこへ、
「煋蘭が来ているようだな。顔を見に来たぞ」
と夜斗がやって来て、
「零、余計な真似をして、我ら皇西家の顔に泥を塗るとはな」
と零に向かって静かに言った。
「叔父様、ごめんなさい。だって、私、煋蘭があんな猿と一緒になるなんて耐えられないんですもの! 叔父様だってそうでしょ? 煋蘭には叔父様がお似合いですもの! あんなのいなくなればいいのに!」
零は夜斗の前では、まるで子供のような口調となって言い訳をした。
「零、お前の気持ちは分かった。あとはおじさんに任せなさい。だから、今は大人しく下がりなさい」
夜斗も零を子ども扱いして下がらせる。
(なんだ? この茶番は? こいつら、一体何なんだ?)
夜斗はその思考を読み取り、大輔を一睨みして、煋蘭へ向き直り、
「煋蘭、この度は私の姪が迷惑をかけて済まなかったな」
頭を下げて素直に詫びた。
「夜斗様、頭を上げてください。零お姉さまのお戯れはいつもの事。今回は少々度が過ぎており、この者も、このような事には慣れておらず、事が大きくなりました。今後、お姉さまには、このようなお戯れをお控えいただくよう、夜斗様からもお伝え頂きたく存じます」
と煋蘭は夜斗に向かって頭を下げた。
「分かった。お前がそんなに言うのならそうしよう。ただ、零は私の言うことなど聞かぬ。兄の代わりにと、私が甘やかして育ててしまったからな。まあ、また、あいつの戯れに付き合う事になるかもしれないが、その時はまた相談に乗る」
と夜斗は笑みを浮かべた。
(こいつ、姪っ子に注意する気ねえだろう)
大輔はつい心の中でそう言ってしまった。もちろん、夜斗にも聞かれているが、相手にもされず、
「煋蘭、時間があるなら、ここでゆっくりしていてもいいのだぞ? 何なら、帰らずにここに住んでもいいぞ」
と笑みを浮かべて言う夜斗に、
「いいえ。私はこの者と共に帰ります。夜斗様、それでは失礼します」
と煋蘭は夜斗に言って、
「立て、帰るぞ」
と大輔を促してその部屋を出た。玄関には煋蘭の式神が二体、縄で縛られ座らされていた。それを楽しそうに澪が見ている。
「あら、煋蘭さん、大輔さん。もう、お帰りですか?」
と笑みを浮かべて二人に言う。煋蘭はそれを無視して、右手を振ると、式神を縛っていた縄がほどけた。
「帰るぞ」
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