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第3部 第2章 魔王の肖像 -強化倍力鎧-
第155話 これから魔王に会いに行くよ
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「シオン、魔王退治に行くんだろう? 俺たちも協力するぜ。お前の【クラフト】を、これ以上悪用させるわけにはいかねえ」
バーンたちの申し出に、おれは首を横に振った。
「ありがたいけれど、ちょっと誤解してるよ。退治はあくまで最後の手段だ。おれたちは、できることなら話し合いで解決したい」
バーンは目を丸くして、小さく息を呑んだ。
「お前、さっきの合成生物や、やつらの兵器を知ってて言ってるんだよな?」
「そうだよ。あんなに凄い物を作れる人を退治してしまうなんてもったいないと思ってる」
「どれだけ危険かもわかってて言うんだな?」
「おれたちの技術だって、兵器利用すれば危険だよ。でも違う使い方で人を幸せにすることもできた。表裏一体なんだ。おれは、魔王の技術も良いほうに変えられると思ってる」
「そうか。なら、俺に文句はねえな」
「そんな簡単に言うけど、相手は魔王なのよ。話にもならないかもしれないのよ」
ラウラへの問いかけに、おれは頷く。
「そうかもしれない。だから準備はしておくよ。バーン、君のその鎧も、切り札になるかもしれない。貸してもらうことはできるかな?」
「それはいいが、魔王相手にどこまでやれるか」
「少なくとも【クラフト】で殺されるのは防げるよ」
「どうやって?」
その問いに答えてあげると、バーンはにやりと笑った。
「さすがシオン。いいアイディアだ」
◇
「じゃあ、ノエルちゃん、みんな、また会いに来てね」
戦闘の後処理を終えたあと、おれたちはマルタから封印道具について書かれた本や、いくつかの贈り物を受け取った。
「うん! 今度はひ孫の顔を見せてあげるからね~!」
封印道具は、一種の魔導器――いや魔法道具だった。
その名を『魔封の短剣』。
特殊な製法で作られた短剣に、複雑な魔力回路を書き込むことで完成する。
刺した相手の生命力を魔力に変換して体外に強制放出させ、その魔力で対象を包む強力な障壁を発生させる。
刺された者は意識が昏倒。生命力が尽きるまで障壁に閉じ込められる。不死身の存在なら、『魔封の短剣』が抜けるまで封印され続けることになる。
刺されたら意識が無くなるのだから、封印された本人が抜くのは不可能なはずだ。なのになぜ魔王の封印は解けてしまったのか。
おそらく、放出させる魔力が強力すぎたのだ。『魔封の短剣』自体に負荷がかかり過ぎて、数百年のうちに破損してしまったのだろう。
「そこで、この欠点を補う改造をしようと思う」
おれたちは武装工房車に戻り、さっそく製作に取りかかっていた。
「はい。短剣の製法はそのままに、強度を上げます」
「放出させる魔力が強すぎるなら、ちょっと弱くするよう出力を調整すればいいのよね」
ソフィアとノエルは、気持ちよく即答してくれる。
「そういうこと。アリシアはふたりを手伝ってあげて。おれは、バーンたちとやることがあるから」
『魔封の短剣』の製作は三人に任せて、おれは武装工房車を降りた。
バーンたちはおれたちの護衛として付いてきてくれる。魔王とは話し合うつもりだが、それ以前に襲われる可能性もある以上、彼らの助力は本当にありがたい。
おれはバーンの鎧――強化倍力鎧が扱えるよう、ラウラに魔力操作の手ほどきを受ける。
とはいえ一箇所に留まるのは危険なので、グラモルを目指して場所を変えながら、製作と修行を続けた。
強化倍力鎧で【クラフト】を無効化するアイディアを実現させるのは難易度が高かった。しかし、強化倍力鎧に少々手を加えたり、毎日遅くまで魔力操作の修行を続けて、なんとか成功にこぎつけた。
その頃には『魔封の短剣』の製作も完了していた。
おれはいよいよ通信魔導器を取り出す。撃破した装甲車に搭載されていた物だ。
起動させるとグラモルの軍部に繋がった。どうやら、あのとき倒した部隊は無事に戻ったらしく、おれたちの存在を把握している様子だ。
「メイクリエのショウ王子。わざわざ連絡を寄越すとは何用か」
「そちらの魔王へ伝えていただきたいことがふたつある」
「ほう?」
「ひとつは、魔王が処分したがっていた『魔封の短剣』の製法はおれたちが手に入れた。もうシマリリスを襲う意味はない。ちょっかいを出すのはやめて欲しい」
「もうひとつは?」
「マルタさんは魔王の幸せを願ってる。そのためにおれたちは、これから魔王に会いに行くよ。お茶とお菓子でも用意して待っていて欲しい」
「我がグラモルに乗り込んでくるつもりか。調子に乗るなよ。貴様らが破壊した車両は、偵察任務用で戦闘力は最弱だ。本物の戦闘車両の威力を見せてやる」
「それはありがたい。どんな技術が使われているのか、見せてもらうのが楽しみだ」
「舐めやがって……!」
そこで通信は切られる。
「舐めてないし、本当に楽しみなんだけどなぁ……」
「はい、そうですよね」
おれのぼやきにソフィアは同意してくれたが、ラウラにはツッコミを入れられた。
「いやいや、普通の人からは煽ってるように聞こえるからね? おかしいからね、あの返し」
ロハンドール帝国とグラモルの国境線は、もう目と鼻の先だった。
バーンたちの申し出に、おれは首を横に振った。
「ありがたいけれど、ちょっと誤解してるよ。退治はあくまで最後の手段だ。おれたちは、できることなら話し合いで解決したい」
バーンは目を丸くして、小さく息を呑んだ。
「お前、さっきの合成生物や、やつらの兵器を知ってて言ってるんだよな?」
「そうだよ。あんなに凄い物を作れる人を退治してしまうなんてもったいないと思ってる」
「どれだけ危険かもわかってて言うんだな?」
「おれたちの技術だって、兵器利用すれば危険だよ。でも違う使い方で人を幸せにすることもできた。表裏一体なんだ。おれは、魔王の技術も良いほうに変えられると思ってる」
「そうか。なら、俺に文句はねえな」
「そんな簡単に言うけど、相手は魔王なのよ。話にもならないかもしれないのよ」
ラウラへの問いかけに、おれは頷く。
「そうかもしれない。だから準備はしておくよ。バーン、君のその鎧も、切り札になるかもしれない。貸してもらうことはできるかな?」
「それはいいが、魔王相手にどこまでやれるか」
「少なくとも【クラフト】で殺されるのは防げるよ」
「どうやって?」
その問いに答えてあげると、バーンはにやりと笑った。
「さすがシオン。いいアイディアだ」
◇
「じゃあ、ノエルちゃん、みんな、また会いに来てね」
戦闘の後処理を終えたあと、おれたちはマルタから封印道具について書かれた本や、いくつかの贈り物を受け取った。
「うん! 今度はひ孫の顔を見せてあげるからね~!」
封印道具は、一種の魔導器――いや魔法道具だった。
その名を『魔封の短剣』。
特殊な製法で作られた短剣に、複雑な魔力回路を書き込むことで完成する。
刺した相手の生命力を魔力に変換して体外に強制放出させ、その魔力で対象を包む強力な障壁を発生させる。
刺された者は意識が昏倒。生命力が尽きるまで障壁に閉じ込められる。不死身の存在なら、『魔封の短剣』が抜けるまで封印され続けることになる。
刺されたら意識が無くなるのだから、封印された本人が抜くのは不可能なはずだ。なのになぜ魔王の封印は解けてしまったのか。
おそらく、放出させる魔力が強力すぎたのだ。『魔封の短剣』自体に負荷がかかり過ぎて、数百年のうちに破損してしまったのだろう。
「そこで、この欠点を補う改造をしようと思う」
おれたちは武装工房車に戻り、さっそく製作に取りかかっていた。
「はい。短剣の製法はそのままに、強度を上げます」
「放出させる魔力が強すぎるなら、ちょっと弱くするよう出力を調整すればいいのよね」
ソフィアとノエルは、気持ちよく即答してくれる。
「そういうこと。アリシアはふたりを手伝ってあげて。おれは、バーンたちとやることがあるから」
『魔封の短剣』の製作は三人に任せて、おれは武装工房車を降りた。
バーンたちはおれたちの護衛として付いてきてくれる。魔王とは話し合うつもりだが、それ以前に襲われる可能性もある以上、彼らの助力は本当にありがたい。
おれはバーンの鎧――強化倍力鎧が扱えるよう、ラウラに魔力操作の手ほどきを受ける。
とはいえ一箇所に留まるのは危険なので、グラモルを目指して場所を変えながら、製作と修行を続けた。
強化倍力鎧で【クラフト】を無効化するアイディアを実現させるのは難易度が高かった。しかし、強化倍力鎧に少々手を加えたり、毎日遅くまで魔力操作の修行を続けて、なんとか成功にこぎつけた。
その頃には『魔封の短剣』の製作も完了していた。
おれはいよいよ通信魔導器を取り出す。撃破した装甲車に搭載されていた物だ。
起動させるとグラモルの軍部に繋がった。どうやら、あのとき倒した部隊は無事に戻ったらしく、おれたちの存在を把握している様子だ。
「メイクリエのショウ王子。わざわざ連絡を寄越すとは何用か」
「そちらの魔王へ伝えていただきたいことがふたつある」
「ほう?」
「ひとつは、魔王が処分したがっていた『魔封の短剣』の製法はおれたちが手に入れた。もうシマリリスを襲う意味はない。ちょっかいを出すのはやめて欲しい」
「もうひとつは?」
「マルタさんは魔王の幸せを願ってる。そのためにおれたちは、これから魔王に会いに行くよ。お茶とお菓子でも用意して待っていて欲しい」
「我がグラモルに乗り込んでくるつもりか。調子に乗るなよ。貴様らが破壊した車両は、偵察任務用で戦闘力は最弱だ。本物の戦闘車両の威力を見せてやる」
「それはありがたい。どんな技術が使われているのか、見せてもらうのが楽しみだ」
「舐めやがって……!」
そこで通信は切られる。
「舐めてないし、本当に楽しみなんだけどなぁ……」
「はい、そうですよね」
おれのぼやきにソフィアは同意してくれたが、ラウラにはツッコミを入れられた。
「いやいや、普通の人からは煽ってるように聞こえるからね? おかしいからね、あの返し」
ロハンドール帝国とグラモルの国境線は、もう目と鼻の先だった。
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