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第2章 王立ロンデルネス修道学園
第17話 誰がシスコンだ
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「アリア! こいつを治せるか!?」
声をかける前から、アリアはこちらへ駆けてきていた。
「任せて! って、わあっ? カイン、やりすぎ!」
「いや、俺がやった分より限界突破でのダメージのほうがでかい」
グレンを仰向けにしてやってから、アリアは癒しの力を発動させる。
俺が治療しても良かったが、それでは本来あるはずのアリアとの関係がほぼ無くなってしまう。
だからこうしてアリアにグレンを助けさせ、縁を繋いでおくのだ。
本来の歴史では、グレンは試験で実力を発揮したアリアにライバル心を抱き、模擬戦を申し込んだのだという。
当然グレンは敗北するわけだが、その悔しさと、アリアの強さへの憧れが混じり合った複雑な感情を抱くようになった。
学園内で発生していたアリアに対するいじめからも、力及ばずながら密かに守ろうとしていた節がある。
結局、学園時代には感情の正体に気付けず、卒業後にそれが恋だったと知ったという。
その後、勇者アリアの仲間に加わって各地を転戦するわけだが……最終的にはゼートリック軍との戦いの最中、壮絶な戦死を遂げて彼女の心に強い影響を与えた。
今のアリアを、俺が望む冷たい殺意の塊に育て上げるには、同様の流れを辿らせる必要がある。
つまり、グレンにはアリアに惚れてもらわねばならない!
「う……?」
グレンが目を覚ます。俺は手を差し伸べてやる。
「なんのつもりだ?」
グレンはその手を取ろうとしない。
「情けのつもりだ」
「いらねえよ、そんなもん……! 強いやつが、弱いやつをいちいち気にしてんじゃねえ」
「強さにこだわるんなら、なんで剣を使わない? ラングランは剣士の家系のはずだろう」
グレンはぎくり、と目を見開いた。
「命懸けの限界突破を使うよりは、マシだったろうに」
「う、うるせえ! 剣を使うくらいなら、死んだほうがマシなんだよ」
「ふん、家の力は使いたくない、か? 立派な自立心だがな、近づく者を拒絶してばかりでは、お前は弱いままだ」
「なんだと?」
アリアとの関係を築かせるためにも、少し説教してやるか。
「独りの強さには限界がある。誰かとの繋がりが――仲間との関係が、真の強さを生むんだ」
前世の日々を思う。素晴らしい仲間たちと、彼らを失った思い出を。
「だからお前なんかより、俺の姉のほうがずっと強い」
「Dクラスのこいつが?」
「アリアはな、心が勇者なんだ。力がなくても、誰かを助けようとする。そんな周囲を愛する心が、今お前を癒した力を目覚めさせたし、これからも様々な力に目覚めていくだろう」
グレンは黙って聞くが、その隣でアリアはきょとんと目を丸くして俺を見つめている。
「わかるか? いくら才能があっても、孤独では得られない力だ。独りでは到達できない本当の強さだ。お前も強くなりたいなら、少しは考えてみろ」
俺は野次馬の中にいる、グレンの取り巻きに目を向ける
「あいつらは、お前についていくのは『家名じゃない』と言っていた」
グレンは上半身を起こし、彼らを見つめる。
「俺は、お前がなぜ実家を嫌うのか知らない。興味もない。だが家名に頼らず、伝統の剣技も使わず、自立を求めるお前の姿には、引かれるものがあったんじゃないか」
グレンはしばらくうつむいてから、改めて俺を見上げた。
「……そうか。お前のその強さは、姉を大事に思う気持ちから生まれたのか」
「いや俺の話はいい。お前はアリアの凄さだけ知っておけば――というかお前! アリアをブスとか言ってたな、正気か!? 改めてよく見て謝罪しろ!」
「お、おぉ。悪かった。あのときは挑発するつもりで適当に言ったんだ。いや確かに普通に可愛いかもな」
「普通だぁ!? とびきりの美少女だろうが!」
「わわわ、なに言ってんのカイン!? 恥ずかしいからやめてよぉ!」
慌てて俺の口を塞ぐアリアである。
グレンは初めて少年らしい笑みを見せた。
「ははっ。よくわかったよ。お前のシスコンぶりが、強さの証明だな」
「誰がシスコンだ。またぶっ飛ばされたいか」
ともかく、これでひとまずアリアとグレンの縁は繋いだぞ。
これから徐々に、やつがアリアに惚れるように仕込んでいってやる。
ただし! アリアがやつに惚れるのはダメだがな!
こうして騒動も終わり、本日の学園の予定はすべて終了した。
アリアのクラスは、本人がもういいとごねるので、結局Dクラスのままとなってしまった。
次の機会に挽回させることにして今は溜飲を下げておく。
その後、俺たちは学生寮に案内された。配られた部屋割り表によると、2人1部屋が基本らしい。
もちろん男子寮と女子寮で分かれている。別れ際、俺はアリアに忠告した。
「もしグレンに言い寄られても無視しろよ」
「ん~、でもちゃんと謝ってくれたし、もうあんなことしないなら仲良くしたいんだけどなぁ」
「しなくていい。いくら家柄が良くて才能があっても、お前には不釣り合いだ」
「あははっ、カイン妬いてる~? 恋人になるわけじゃないんだから、そんな心配しなくても……」
「恋人になんか、絶対させないからな」
それからアリアとレナと別れ、俺は自分の部屋に向かう。
「よお、来たな! これからよろしく頼むぜ!」
グレンがいた。部屋を間違えたか?
「部屋割りなら変えてもらった。お前はオレと同室だ!」
「なんでだよ」
「お前の話を聞いたからさ。お前の強さを、近くで学ばせてもらう。友情ってものもな」
「マジか」
今後は朝昼晩、こいつと顔を突き合わせることになるのか……。
まあいい。好都合と解釈しよう。
「そういうことなら、早速話してやる。アリアの魅力をたっぷりとな!」
「いやアリアよりお前の話を……」
「いいから聞け!」
それから数時間ほど、しっかりと語ってやった。
「どうだ、わかったか」
「……ああ」
「ふふん。だが、アリアに惚れるなよ」
「まあ、今は色恋より強さが優先だからな」
「はあ!? なんでだよ、惚れろよ!」
「どっちだよ!?」
学園入学初日は、最後まで騒がしかった。
声をかける前から、アリアはこちらへ駆けてきていた。
「任せて! って、わあっ? カイン、やりすぎ!」
「いや、俺がやった分より限界突破でのダメージのほうがでかい」
グレンを仰向けにしてやってから、アリアは癒しの力を発動させる。
俺が治療しても良かったが、それでは本来あるはずのアリアとの関係がほぼ無くなってしまう。
だからこうしてアリアにグレンを助けさせ、縁を繋いでおくのだ。
本来の歴史では、グレンは試験で実力を発揮したアリアにライバル心を抱き、模擬戦を申し込んだのだという。
当然グレンは敗北するわけだが、その悔しさと、アリアの強さへの憧れが混じり合った複雑な感情を抱くようになった。
学園内で発生していたアリアに対するいじめからも、力及ばずながら密かに守ろうとしていた節がある。
結局、学園時代には感情の正体に気付けず、卒業後にそれが恋だったと知ったという。
その後、勇者アリアの仲間に加わって各地を転戦するわけだが……最終的にはゼートリック軍との戦いの最中、壮絶な戦死を遂げて彼女の心に強い影響を与えた。
今のアリアを、俺が望む冷たい殺意の塊に育て上げるには、同様の流れを辿らせる必要がある。
つまり、グレンにはアリアに惚れてもらわねばならない!
「う……?」
グレンが目を覚ます。俺は手を差し伸べてやる。
「なんのつもりだ?」
グレンはその手を取ろうとしない。
「情けのつもりだ」
「いらねえよ、そんなもん……! 強いやつが、弱いやつをいちいち気にしてんじゃねえ」
「強さにこだわるんなら、なんで剣を使わない? ラングランは剣士の家系のはずだろう」
グレンはぎくり、と目を見開いた。
「命懸けの限界突破を使うよりは、マシだったろうに」
「う、うるせえ! 剣を使うくらいなら、死んだほうがマシなんだよ」
「ふん、家の力は使いたくない、か? 立派な自立心だがな、近づく者を拒絶してばかりでは、お前は弱いままだ」
「なんだと?」
アリアとの関係を築かせるためにも、少し説教してやるか。
「独りの強さには限界がある。誰かとの繋がりが――仲間との関係が、真の強さを生むんだ」
前世の日々を思う。素晴らしい仲間たちと、彼らを失った思い出を。
「だからお前なんかより、俺の姉のほうがずっと強い」
「Dクラスのこいつが?」
「アリアはな、心が勇者なんだ。力がなくても、誰かを助けようとする。そんな周囲を愛する心が、今お前を癒した力を目覚めさせたし、これからも様々な力に目覚めていくだろう」
グレンは黙って聞くが、その隣でアリアはきょとんと目を丸くして俺を見つめている。
「わかるか? いくら才能があっても、孤独では得られない力だ。独りでは到達できない本当の強さだ。お前も強くなりたいなら、少しは考えてみろ」
俺は野次馬の中にいる、グレンの取り巻きに目を向ける
「あいつらは、お前についていくのは『家名じゃない』と言っていた」
グレンは上半身を起こし、彼らを見つめる。
「俺は、お前がなぜ実家を嫌うのか知らない。興味もない。だが家名に頼らず、伝統の剣技も使わず、自立を求めるお前の姿には、引かれるものがあったんじゃないか」
グレンはしばらくうつむいてから、改めて俺を見上げた。
「……そうか。お前のその強さは、姉を大事に思う気持ちから生まれたのか」
「いや俺の話はいい。お前はアリアの凄さだけ知っておけば――というかお前! アリアをブスとか言ってたな、正気か!? 改めてよく見て謝罪しろ!」
「お、おぉ。悪かった。あのときは挑発するつもりで適当に言ったんだ。いや確かに普通に可愛いかもな」
「普通だぁ!? とびきりの美少女だろうが!」
「わわわ、なに言ってんのカイン!? 恥ずかしいからやめてよぉ!」
慌てて俺の口を塞ぐアリアである。
グレンは初めて少年らしい笑みを見せた。
「ははっ。よくわかったよ。お前のシスコンぶりが、強さの証明だな」
「誰がシスコンだ。またぶっ飛ばされたいか」
ともかく、これでひとまずアリアとグレンの縁は繋いだぞ。
これから徐々に、やつがアリアに惚れるように仕込んでいってやる。
ただし! アリアがやつに惚れるのはダメだがな!
こうして騒動も終わり、本日の学園の予定はすべて終了した。
アリアのクラスは、本人がもういいとごねるので、結局Dクラスのままとなってしまった。
次の機会に挽回させることにして今は溜飲を下げておく。
その後、俺たちは学生寮に案内された。配られた部屋割り表によると、2人1部屋が基本らしい。
もちろん男子寮と女子寮で分かれている。別れ際、俺はアリアに忠告した。
「もしグレンに言い寄られても無視しろよ」
「ん~、でもちゃんと謝ってくれたし、もうあんなことしないなら仲良くしたいんだけどなぁ」
「しなくていい。いくら家柄が良くて才能があっても、お前には不釣り合いだ」
「あははっ、カイン妬いてる~? 恋人になるわけじゃないんだから、そんな心配しなくても……」
「恋人になんか、絶対させないからな」
それからアリアとレナと別れ、俺は自分の部屋に向かう。
「よお、来たな! これからよろしく頼むぜ!」
グレンがいた。部屋を間違えたか?
「部屋割りなら変えてもらった。お前はオレと同室だ!」
「なんでだよ」
「お前の話を聞いたからさ。お前の強さを、近くで学ばせてもらう。友情ってものもな」
「マジか」
今後は朝昼晩、こいつと顔を突き合わせることになるのか……。
まあいい。好都合と解釈しよう。
「そういうことなら、早速話してやる。アリアの魅力をたっぷりとな!」
「いやアリアよりお前の話を……」
「いいから聞け!」
それから数時間ほど、しっかりと語ってやった。
「どうだ、わかったか」
「……ああ」
「ふふん。だが、アリアに惚れるなよ」
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