最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

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第2章 王立ロンデルネス修道学園

第16話 相手が悪かったと今更気づいたか?

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 模擬戦開始直後、男子生徒は瞬間的に距離を詰めてきた。

 放たれた拳を、手のひらで受け止める。踏ん張った床に亀裂が走る。

「よく受け止めたなぁ! だがお得意の魔法攻撃はできねえだろぉ!」

 一気呵成に拳や脚の連撃で攻めたててくる。それらを冷静に、一撃一撃を丁寧に受け止めてやる。

 どうやらこいつの強みは、身体強化魔法を使っての格闘戦らしい。

 言うだけのことはある。こいつの実力なら、俺の村を襲った程度の魔族なら単独で一掃できるだろう。

 といっても、俺の敵じゃない。発射まで溜めのある魔法攻撃でさえ、やつの拳より速い。

 しかし徹底的に叩き潰すなら、相手の得意分野で、言い訳できない敗北を与える必要がある。

 つまり格闘戦だ!

「喋ってると舌を噛むぞ」

 俺は隙をついて、強化した拳を顔面に叩き込んでやった。

「なに、こいつ!?」

「お前に合わせて拳で相手をしてやる。もっとかかってこい」

「舐めんじゃねえぞ!」

 弱犬が遠吠えするように叫んでから、再び攻勢に戻ってくる。

 俺は次々に繰り出される攻撃を見切っては、その度にカウンターをぶちこむ。すぐ気絶しないよう手加減して。

「ぐ、ぅ! マジかよ……!」

「最初の威勢はどうした。相手が悪かったと今更気づいたか?」

「……ああ、くそ。確かにお前は強い。こんなすげえやつに会えるとは、嬉しいぜ! このオレが本気で戦えるんだからなあ!」

 男子生徒は一旦後退すると、さらに魔力を集中させた。

「うぉりゃああ!」

 その突進はさっきまでとは比べ物にならない速度と重さだった。

 受け止めることはできず、咄嗟に両腕で防御した。体重差で大きく弾き飛ばされる。

 こいつ、マジか!?

 ただの身体強化魔法じゃない。限界突破オーバーリミットだ。

 通常の身体強化魔法より遥かに効果が高いが、身体への負荷がまったく考慮されていない。

 攻撃の反動だけでも全身に痛みが走るし、踏み込みひとつで足を骨折することもあり得る。継続しているだけで死ぬことさえある危険な魔法だ。

 たかが模擬戦でこんなものを使うなんて、よほどのバカだぞ!

「――うぉああ!」

 続く、かかと落としは回避。床が砕け、破片が飛散する。

 しかもかなり使いこなしている。大した才能だが、それで危険性が緩和されるわけでもない。

 放っておけば、勝手に自滅して死ぬだろう。

 だがそうなると、俺が模擬戦で殺したことになってしまうのか?

「ちっ、退学は困るんだよ」

 俺は瞬間的に魔力を集中させ、身体強化魔法の効果を最大化する。限界突破オーバーリミットではない、あくまでの通常の強化魔法だ。

 男子生徒が放った拳に、こちらの拳を合わせる。

 岩同士が衝突するような音。

 力負けした男子生徒の拳が砕け、ひしゃげていく。

 俺はその胸板に、飛び蹴りで追い打ちをかける。

「がああ!? まだ、届かねえのか!?」

 床を転がった男子生徒はしかし、まだ瞳に闘志を燃やしたままだ。

 立ち上がり、さらに魔力を集中させようとする。

 バカが! これ以上は即死もありうるぞ!

 俺は床が砕けるほどの勢いで踏み切った。風より速く、男子生徒の鳩尾に肘を叩き込む。

「が――っ!」

 それで男子生徒は気絶した。どさり、と顔面から倒れ込む。

 手加減はしてある。すぐ目を覚ますだろう。

「勝者、カイン・アーネスト!」

 さっそく女教師が勝ち名乗りを上げるが、直後、頭を抱えた。

「って、もおぉ~。ラングラン家のご子息がボロボロじゃない~。これって私のせい? 私のせいになっちゃうのぉ~?」

 ……ラングラン?

 俺は倒した男子生徒を見下ろす。

 まさかこいつ、グレン・ラングランか!?

 しまった! 俺としたことが、またやってしまった!

 グレン・ラングランは、本来の歴史ではアリアと模擬戦をおこなうはずだったのだ。その縁でのちに勇者アリアの仲間となり、非常に重要な役目を果たすはずだったのに。

 俺がまたその機会を潰してしまった。

 いや、まだ間に合うか? 挽回しなければ!
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