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第3章 試験の後の試練
第29話 後悔させてやる
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「D-1教室のミスティだな? ちょっと来てもらうぞ」
「えっ、ちょっ、むぐぅっ!?」
その日の放課後、俺はさっそく行動を開始した。
女子寮に帰ろうとするミスティなる生徒を背後から取り押さえ、口を塞ぎ、人気のない学舎裏に拉致したのである。
学舎裏に連れてきたところで解放してやる。
「あの、えっ、なに? なんなの?」
すでに待機していたアリア、レナ、グレンの前で、ミスティは混乱している。
「ごめん、ミスティちゃん! うちのカインが手荒な真似しちゃったみたいで! ただちょっと手伝って欲しいだけなの!」
「えええ、アリアちゃん? というか、みんなSとかAのエリートな子ばっかりじゃない。どういうことなの? ねえ、どういうことなの?」
俺たちは手短に、俺やアリアが退学の危機であることと、それを庇ったエミリー教師がクビを言い渡されたことを説明した。
「そこで逆に教頭のほうをぶっ潰し、それらの処分を撤回してやりたいんだ」
「それで、なんであたしに?」
「アリアからは学園随一の情報通と聞いていてな。教頭をやり込めるような情報はないか?」
「って、言われても……」
「入学からほんのわずかな間に、学園中の生徒の大まかな情報を把握してたそうじゃないか。どんな手品か知らないが、それだけのことができるんなら、当然、教師陣のことも調べているんだろう?」
「いやその、あたし、興味あることしか調べないし。そんなスキャンダルなんて……」
「なんでもいい。手がかりさえあれば、あとは俺たちが掘り起こす。なにかないか?」
「えーっと……あるかないかでいったら……ある、かも?」
「ほう、どんな情報だ?」
しかしそこでミスティは、一旦口を閉じて、俺たちを見渡した。
「これ話したら、失敗したときあたしも道連れにならない?」
「リスクが怖いか。ならリスク以上のリターンを約束してやる。望むものを言ってみろ」
「無事に卒業すること」
「手伝いたくないという意味か」
「いやだって、こんな拉致されて危ないことに協力しろって言われても……。あたし、これでもノーって言える女だし……!」
「お願いミスティちゃん! 例の、あのリードくんと上手くいくように手伝うから!」
アリアからの懇願に、ミスティの耳がぴくりと動いた。
「あの、私も手伝います! リードさんが誰だか教えてくれれば、さり気なくミスティさんをアピールしておきますから!」
レナも続く。ミスティの耳が、ぴくぴくとさらに動く。
「なあ、リードって……もしかしてD-2教室のリード・ケフレンか?」
「そうそう。ミスティちゃんが気になってる男の子」
「へえ、そうなのか。あいつも隅に置けねえな。リード・ケフレンなら、俺の昔からの友達だよ。ミスティ、あんたが手伝ってくれるなら直接紹介してやってもいい。なんなら、ふたりきりのお茶会でもセッティングしてやるが」
ミスティはいよいよ目を輝かせた。が、すぐ目を逸らす。
「の……の……」
やはりノーか?
そうなると最後の手段で、魔法で口を割らせることになるが……。
「の……乗ったぁあ! 絶対だよ、絶対ですからね、グレンさん! リードくんとのセッティング、マジのマジのマジでお願いしますよっ!」
「お、おお。任せろ」
「いつですか? いつ頃お願いできますか!?」
目をきらきらさせながらグレンに迫るミスティである。
俺はその首根っこを引っ掴んで、グレンから引き離す。
「わわわ、カインくん、なにすんのっ」
「報酬は働いてからと相場が決まってる。まずは情報をよこせ」
「あっ、そうだったっけ」
ミスティは上機嫌に口を開いた。
「教頭先生、どうやら不倫してるらしいんだよねぇ~……」
「不倫か。相手はわかるか?」
「あんまり学園には来ないから特定はできてないんだけど、王都の貴族の御婦人だってことは間違いないと思う。教頭先生、その人にたくさん貢いでるって噂だよ」
「なるほど。それは面白いな。そのセンを追ってみるか」
「あと追加情報。ここ毎年、学園の設備補修費の減りが早いんだって。定期的にメンテナンスが必要だからって話だけど、そう簡単に壊れないって触れ込みとは矛盾してる気がしない? しかも減りが早くなったのが、教頭先生の不倫疑惑が出た頃と一致してるんだよねぇ」
俺は素直に感心した。
「やるな、ミスティ。その情報収集能力が、試験に活かされてないのがもったいないな」
「ここを測ってくれる試験がないからね~。ま、逆に目立たないから調べやすいのもあるんだけど」
「貴重な情報提供感謝する。あとは俺たちの仕事だ」
俺は学舎を見上げ、教頭の執務室を睨みつける。
俺は言ったことはやるぞ、ベスタ教頭。
「ふふふ、後悔させてやる」
「えっ、ちょっ、むぐぅっ!?」
その日の放課後、俺はさっそく行動を開始した。
女子寮に帰ろうとするミスティなる生徒を背後から取り押さえ、口を塞ぎ、人気のない学舎裏に拉致したのである。
学舎裏に連れてきたところで解放してやる。
「あの、えっ、なに? なんなの?」
すでに待機していたアリア、レナ、グレンの前で、ミスティは混乱している。
「ごめん、ミスティちゃん! うちのカインが手荒な真似しちゃったみたいで! ただちょっと手伝って欲しいだけなの!」
「えええ、アリアちゃん? というか、みんなSとかAのエリートな子ばっかりじゃない。どういうことなの? ねえ、どういうことなの?」
俺たちは手短に、俺やアリアが退学の危機であることと、それを庇ったエミリー教師がクビを言い渡されたことを説明した。
「そこで逆に教頭のほうをぶっ潰し、それらの処分を撤回してやりたいんだ」
「それで、なんであたしに?」
「アリアからは学園随一の情報通と聞いていてな。教頭をやり込めるような情報はないか?」
「って、言われても……」
「入学からほんのわずかな間に、学園中の生徒の大まかな情報を把握してたそうじゃないか。どんな手品か知らないが、それだけのことができるんなら、当然、教師陣のことも調べているんだろう?」
「いやその、あたし、興味あることしか調べないし。そんなスキャンダルなんて……」
「なんでもいい。手がかりさえあれば、あとは俺たちが掘り起こす。なにかないか?」
「えーっと……あるかないかでいったら……ある、かも?」
「ほう、どんな情報だ?」
しかしそこでミスティは、一旦口を閉じて、俺たちを見渡した。
「これ話したら、失敗したときあたしも道連れにならない?」
「リスクが怖いか。ならリスク以上のリターンを約束してやる。望むものを言ってみろ」
「無事に卒業すること」
「手伝いたくないという意味か」
「いやだって、こんな拉致されて危ないことに協力しろって言われても……。あたし、これでもノーって言える女だし……!」
「お願いミスティちゃん! 例の、あのリードくんと上手くいくように手伝うから!」
アリアからの懇願に、ミスティの耳がぴくりと動いた。
「あの、私も手伝います! リードさんが誰だか教えてくれれば、さり気なくミスティさんをアピールしておきますから!」
レナも続く。ミスティの耳が、ぴくぴくとさらに動く。
「なあ、リードって……もしかしてD-2教室のリード・ケフレンか?」
「そうそう。ミスティちゃんが気になってる男の子」
「へえ、そうなのか。あいつも隅に置けねえな。リード・ケフレンなら、俺の昔からの友達だよ。ミスティ、あんたが手伝ってくれるなら直接紹介してやってもいい。なんなら、ふたりきりのお茶会でもセッティングしてやるが」
ミスティはいよいよ目を輝かせた。が、すぐ目を逸らす。
「の……の……」
やはりノーか?
そうなると最後の手段で、魔法で口を割らせることになるが……。
「の……乗ったぁあ! 絶対だよ、絶対ですからね、グレンさん! リードくんとのセッティング、マジのマジのマジでお願いしますよっ!」
「お、おお。任せろ」
「いつですか? いつ頃お願いできますか!?」
目をきらきらさせながらグレンに迫るミスティである。
俺はその首根っこを引っ掴んで、グレンから引き離す。
「わわわ、カインくん、なにすんのっ」
「報酬は働いてからと相場が決まってる。まずは情報をよこせ」
「あっ、そうだったっけ」
ミスティは上機嫌に口を開いた。
「教頭先生、どうやら不倫してるらしいんだよねぇ~……」
「不倫か。相手はわかるか?」
「あんまり学園には来ないから特定はできてないんだけど、王都の貴族の御婦人だってことは間違いないと思う。教頭先生、その人にたくさん貢いでるって噂だよ」
「なるほど。それは面白いな。そのセンを追ってみるか」
「あと追加情報。ここ毎年、学園の設備補修費の減りが早いんだって。定期的にメンテナンスが必要だからって話だけど、そう簡単に壊れないって触れ込みとは矛盾してる気がしない? しかも減りが早くなったのが、教頭先生の不倫疑惑が出た頃と一致してるんだよねぇ」
俺は素直に感心した。
「やるな、ミスティ。その情報収集能力が、試験に活かされてないのがもったいないな」
「ここを測ってくれる試験がないからね~。ま、逆に目立たないから調べやすいのもあるんだけど」
「貴重な情報提供感謝する。あとは俺たちの仕事だ」
俺は学舎を見上げ、教頭の執務室を睨みつける。
俺は言ったことはやるぞ、ベスタ教頭。
「ふふふ、後悔させてやる」
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