一度目の人生は散々だったので、二度目の人生をやり直させて頂きます

七宮 ゆえ

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一章

11.それぞれの役割

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 ミルフィは次の日、早速今回協力させるアルベルト、レオンハルト、フェリクス、リュディガーの四人を部屋に収集した。

「今から話すことはここだけのことにして頂戴」

 ミルフィの言葉に四人は心得たように頷く。

「大まかな話はそれぞれ聞いていると思うけれど念のために簡単に説明していくわ。」

 そう前置きしてから今回の件を簡単に、それでいて的確に説明し始めた。

「今回やらなくてはならないことはレオンハルトお兄様の派閥の筆頭貴族であるローネイン公爵家が人身売買しているという証拠を掴むこと。今の所怪しい点は見つかってはいないけれどお兄様の能力を疑わない限りでは公爵は黒のはずよ」

 ミルフィの説明に真剣に耳を傾ける四人を見渡しながら説明を続ける。

「本来ならばお父様が調べることなのかもしれないけれどどこに内通者が潜んでいるのか判らないからわたし達が証拠を掴むことになった。そこでみんなには協力してもらいたいの」

 まず始めにとミルフィはリュディガーを見る。

「リュディガー、貴方は表から公爵の動向を伺っていて欲しい。ローネイン公爵はハーバル帝国と繋がっている可能性があるから、もしそうならそのうち接触するはず。そこを探って欲しいの」
「外側から探るのは騎士にとっては基本中の基本。まぁ適材でしょう」

 御意。とリュディガーは頷く。
 次にミルフィはフェリクスへと視線を向けた。

「フィル、貴方はリュディガーの調査結果をわたしに報告して。方法は何でもいいから。それからここ数年のうちに消息の分からなくなっている子供達を調べておいて」

 今度は返事を聞く前にレオンハルトへと視線を向けた。フェリクスの返事を待っていたら面倒くさいだの何だのという愚痴を聞くことになるからだ。

「お兄様はこれ以上は動かないで。貴方が動くと公爵に気付かれる可能性があるから。一番探りを入れやすいのは貴方だけれど、その分奥まで首を突っ込むことは出来ないから」
「分かった。それなら俺は暫く大人しくしておくことにするよ」

 レオンハルトの言葉にミルフィは満足そうに頷く。
 そして最後にアルベルトを見る。

「アルベルトはわたしと一緒に公爵に近づくわ。方法はわたしに考えがあるからそれはまた後で説明する。それで納得してもらえるかしら?」
「分かった」

 それぞれが是の意を示したので、ミルフィは取り敢えずこれで人員の不安はないわね、ほっと息をついた。

「なにか質問はあるかしら?」
「一つだけ聞いてもいいですかぁ?」

 はーい、といつも通り気の抜けた声でフェリクスが手を挙げた。

「それは姉上がする必要のあることなのでしょうかぁ?僕が聞いている限りでは、問題は姉上でなくて兄上の方だと思うのですが。姉上がする必要のないことだと思うのですけどぉ」

 フェリクスはレオンハルトを見ながら不思議そうに首を傾げていた。
 そもそもフェリクスはミルフィ以外の兄弟は自身の同腹の妹の他に特に何とも思ってはいなかった。
 だからこそ、どうしてミルフィがそこまでするのかが不思議でならないのだ。

(第一、兄上は姉上と仲が良かったわけではないようですしぃ。たしかに人身売買なんてことをしている公爵は早急に捕らえなければならないとは思いますが、それを姉上が手伝ってもたいしてプラスになることなんてない筈ですよねえ。強いていうなら兄上の派閥をおとしめることくらいでしょうかぁ?)

 ミルフィが手伝わなくても結果は変わらないのでは、と暗に告げる。
 そんな弟の心境を明確に読み取ったミルフィは苦笑気味に頷いた。

「たしかにそれはフィルの言う通りだわ。でも今回のこれはちょっとした交渉あってのことよ」

 姉上が納得してるのならいいですかどぉ、と渋々引き下がるフェリクスを見ながらミルフィは内心自嘲した。

(それに、これはのお兄様に対しての贖罪でもあるのよね……何もしなかったわたしからの)

 これで取り敢えず各自のやらなくてはならないことの確認をし終えたので、ミルフィはアルベルト以外は解散させた。
 三人を見送ってからさて、とアルベルトに向き直る。

「私達の詳細を話していくわよ」

 アルベルトは無言で頷く。

「まず始めにわたし達は教会に孤児として入ることになる。その時わたしと貴方は兄弟という設定にしておいて頂戴。教会はローネイン公爵が月に一度慰問するから、その時に雇ってもらえるように願い出る。公爵は教会の子供達も珍しいものがいたら商品として買い取っているから、それに応じて雇ってもらえるように掛け合うつもり」

 裏で繋がりがあるということをミルフィは暗に告げた。というよりも、告げてしまった。

「何故教会と繋がっていると断言できるんだ?」

そんなことを今の情報の中で知るよしのないことであるはずなのに、とアルベルトは最もな疑問を抱く。
それにミルフィは失敗した、と己の失言を悔やんだ。

(……でとっくに知っていたからなんて言える筈ないじゃない。どう誤魔化すのがベストかしら?)

 ああでもない、こうでもないと数秒の内に考えを巡らせ、それでも結局いい案が浮かばなかったので仕方なく根拠のない理由を提示する。

「……知っていたから」
「は?」

 何を言っているんだと訊き返そうとしたが、それ以上何も訊かないでというミルフィの無言の圧力に負けて、結局アルベルトは口を噤んだ。

「……そのうち、きちんと話ができる時が来たら説明してあげるわ」

 ぽつりと呟かれた言葉にアルベルトは内心首を傾げた。

「まあ、それは今は置いておくとして。話を戻すけれど、公爵邸に無事に雇われたらそこから内情を探ることにするわ。貴方はほかの雇われているメイドから少しずつ探りを入れて見て。その間にわたしは公爵に取り入るから。公爵には手駒として扱いやすいと思わせることが出来ればこちらの有利に動く。そうしたら貴方はわたしのフォローをお願いね。ちなみに決行は一週間後よ」

 随分と早いなと思いつつアルベルトは頷いた。

「質問は大丈夫かしら?」
「今の所は問題ない……いや、一つだけあったな」

 その言葉にミルフィは首を傾げる。

「教会に入るまではなんとかなるだろうが、公爵には殿下の顔は知られているだろう?どうするんだ?」
「それは心配しないで。わたしに考えがあるから」
「どうするんだ?」
「変装すればいいだけの話。髪の色と瞳の色さえ変えればあとはなんとかなるものよ」

それだけで何とかなるものかとアルベルトは疑いの目をミルフィに向けた。

「そういうものなのか?」
「そんなものよ」
(わたしの場合はその変装が少しだけ特殊なのだけれど)

 それを今言う必要はないかとミルフィは口を閉じる。

(まあ、でもわたしの“例のもの”のことはそのうち嫌でもばれることになるのだろうし、どうしても知られたくないことではないから少し誤魔化しつつ話せば何も問題は無いわよね)

 アルベルトが首を捻っている一方で、ミルフィは一人うんうんと納得していた。
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