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11話
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フェリクスに連れられて入った部屋は、一見シンプルそうにみえて、よくよく見ればどの調度品もとても凝った造りをしていた。
そして、その部屋の窓際にセルシウス殿下が立っていた。
「突然呼び出してしまってすまない、レティーシア嬢」
「いえ、殿下がお気になさる必要はございませんわ。それでご要件はなんでしょうか」
「少し、レティーシア嬢からフォルエスタ男爵令嬢について聞きたいことがあるんだ」
取り敢えず座ってくれ、と部屋の中央に位置付けられた革張りのソファーに視線で促された私は、その言葉に頷きありがたく座らせてもらうことにした。
私が座れば目の前に殿下が、そしてその隣にフェリクスが腰を下ろす。
「君はフォルエスタ男爵令嬢の周囲についてどれくらい知っているか?」
「周囲、ですか?」
お互いに腰を下ろしてから間髪入れずに繋げられた言葉に、私はきょとんと目を瞬かせた。
「それは一体どういうことでしょうか」
「……実は、フォルエスタ男爵令嬢はレオナードだけではなく他にも逢瀬を重ねている者がいるという噂を聞いたんだ」
若干言いにくそうに、なんともいえない表情でそう告げた殿下の言葉に、私はああ、そのことかと頷いてみせた。
「私も友人から聞いた話ではありますけれど、どうやら本当のことだそうですよ」
「相手は?」
「ええっと……たしか、エルワンド侯爵家嫡男のシゼル様とシルフォリス公爵家次男のエドワード様、あとはロゼリス侯爵家嫡男のライル様と、ジュラルディ伯爵家嫡男のユーニス様でいらっしゃったかと」
騎士副団長の息子であったり、この国の重鎮に位置付いている貴族の息子であったりと、そのいずれもそれなりに地位のある第二王子派の貴族令息ばかりである。
それが何を示しているのか、これすなわち。
「レオナードの側近達か……」
殿下は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
その隣では、フェリクスがいつにも増して真剣な表情を作っている。
「レティーシア、事実だという証拠はあるか?」
「証拠、というよりは第三者による証言ならありますね。嬉々として噂の真相を確かめようと情報を集めた私の友人が一名おりますので、その友人に聞けば」
「それは誰だ?」
「メルティス侯爵令嬢のルクレティアです」
「メルティス侯爵家の……」
私の言葉に、フェリクスと殿下が目を見開かせる。
「ルクレティア嬢って、あの宰相の娘だよな」
「あのいつも冷静沈着な宰相が溺愛してやまない愛娘と有名な、彼の令嬢のことか」
驚愕から未だ立ち直る気配のない二人を、私は内心で苦笑しながら黙って見つめていた。
二人が驚くのも無理はないと思う。何せ彼女はそういったこととは縁遠そうな見た目と世間の目を持っているのだから。
ルクレティアは、極度の病弱体質であるのだ。
だからデビュタント以来夜会に顔を出すこともしないし、下手したら学院でも見かける者は少ないだろう。
関わる人が少ない分、社交界の中で彼女の存在は謎に包まれているところも多く、病弱体質であるがゆえに大人しいご令嬢であるという私からしたら見当違いにも程があるといいたくなるような認識をされているのだ。
そして彼女の親であるメルティス侯爵夫妻が否定していないというのも、その認識が正しいと思われてしまっている理由の一つであるだろう。
「ルクレティアはたしかに驚く程によく寝込む病弱体質の持ち主ですけれど、社交界で認識されているような大人しいご令嬢とは程遠いのですよ。どちらかといえば活発な性格をしていますわ」
「そうなのか?」
困惑気味に眉を寄せる殿下に、私は微笑んで頷いてみせる。
「……そうか。彼女に証言を頼むことは可能だろうか」
「そうですね……多分大丈夫かと思います。もし良ければ私からルクレティアに話を通しておきましょうか?その方が話は早いと思いますし」
「そうしてくれると助かる」
「かしこまりました。では、後程話を通しておきますね」
そして、その部屋の窓際にセルシウス殿下が立っていた。
「突然呼び出してしまってすまない、レティーシア嬢」
「いえ、殿下がお気になさる必要はございませんわ。それでご要件はなんでしょうか」
「少し、レティーシア嬢からフォルエスタ男爵令嬢について聞きたいことがあるんだ」
取り敢えず座ってくれ、と部屋の中央に位置付けられた革張りのソファーに視線で促された私は、その言葉に頷きありがたく座らせてもらうことにした。
私が座れば目の前に殿下が、そしてその隣にフェリクスが腰を下ろす。
「君はフォルエスタ男爵令嬢の周囲についてどれくらい知っているか?」
「周囲、ですか?」
お互いに腰を下ろしてから間髪入れずに繋げられた言葉に、私はきょとんと目を瞬かせた。
「それは一体どういうことでしょうか」
「……実は、フォルエスタ男爵令嬢はレオナードだけではなく他にも逢瀬を重ねている者がいるという噂を聞いたんだ」
若干言いにくそうに、なんともいえない表情でそう告げた殿下の言葉に、私はああ、そのことかと頷いてみせた。
「私も友人から聞いた話ではありますけれど、どうやら本当のことだそうですよ」
「相手は?」
「ええっと……たしか、エルワンド侯爵家嫡男のシゼル様とシルフォリス公爵家次男のエドワード様、あとはロゼリス侯爵家嫡男のライル様と、ジュラルディ伯爵家嫡男のユーニス様でいらっしゃったかと」
騎士副団長の息子であったり、この国の重鎮に位置付いている貴族の息子であったりと、そのいずれもそれなりに地位のある第二王子派の貴族令息ばかりである。
それが何を示しているのか、これすなわち。
「レオナードの側近達か……」
殿下は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
その隣では、フェリクスがいつにも増して真剣な表情を作っている。
「レティーシア、事実だという証拠はあるか?」
「証拠、というよりは第三者による証言ならありますね。嬉々として噂の真相を確かめようと情報を集めた私の友人が一名おりますので、その友人に聞けば」
「それは誰だ?」
「メルティス侯爵令嬢のルクレティアです」
「メルティス侯爵家の……」
私の言葉に、フェリクスと殿下が目を見開かせる。
「ルクレティア嬢って、あの宰相の娘だよな」
「あのいつも冷静沈着な宰相が溺愛してやまない愛娘と有名な、彼の令嬢のことか」
驚愕から未だ立ち直る気配のない二人を、私は内心で苦笑しながら黙って見つめていた。
二人が驚くのも無理はないと思う。何せ彼女はそういったこととは縁遠そうな見た目と世間の目を持っているのだから。
ルクレティアは、極度の病弱体質であるのだ。
だからデビュタント以来夜会に顔を出すこともしないし、下手したら学院でも見かける者は少ないだろう。
関わる人が少ない分、社交界の中で彼女の存在は謎に包まれているところも多く、病弱体質であるがゆえに大人しいご令嬢であるという私からしたら見当違いにも程があるといいたくなるような認識をされているのだ。
そして彼女の親であるメルティス侯爵夫妻が否定していないというのも、その認識が正しいと思われてしまっている理由の一つであるだろう。
「ルクレティアはたしかに驚く程によく寝込む病弱体質の持ち主ですけれど、社交界で認識されているような大人しいご令嬢とは程遠いのですよ。どちらかといえば活発な性格をしていますわ」
「そうなのか?」
困惑気味に眉を寄せる殿下に、私は微笑んで頷いてみせる。
「……そうか。彼女に証言を頼むことは可能だろうか」
「そうですね……多分大丈夫かと思います。もし良ければ私からルクレティアに話を通しておきましょうか?その方が話は早いと思いますし」
「そうしてくれると助かる」
「かしこまりました。では、後程話を通しておきますね」
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