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第二話 不安の塊
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(……まさか。)
どくんと心臓が脈打ち、全身の毛穴から汗が吹き出した。毛玉は虚空を見つめたまま、じっと動かなくなっていた。
呼吸が浅い。胸ぐらを掴んで、部屋の隅で膝を抱えた。毛玉を蹴った足が震えている。
埋めたらバレないかな。罪悪感よりも先に、臆病な丸井は真っ先に自分を守ることを考えた。自分のやったことを、揉み消してなかったことにしようとしたがった。
不法侵入した宇宙生命体をやっつけたのだから、悪いことをしたわけじゃない。ヒーローだって怪物をやっつけてる。僕は悪くない。
丸井は自分のしたことを弁明するように何度も何度も心の中で言い訳を繰り返した。だが、悪くないと言うほど、自分のせいだという現実が後ろ髪を引いてくる。
「僕のせいじゃない……僕は悪くない……。」
隠すことばかり思いつく。誤魔化すことばかり考える。底なし沼のような感覚に心が食い尽くされた。
「もにゃ!」
「……え。」
「もにゃ!にゃ!もにゃ!」
犯罪者になった気分で顔を膝に埋めていたら、例の変な鳴き声がした。息を吐きながら、見上げると、横転した毛玉が起きあがろうともがいていた。
丸井はショックから都合のいい幻覚を見ているのかと思った。震える体で恐る恐る毛玉に近づいた。
鳴き方が厳つい。毛玉は少し怒っているようだった。
息があることにはーっと胸を撫で下ろす。幾ら正体不明な生物とはいえ、怒りに身を任せて蹴るのはよくなかったと猛省した。
「ごめん……。」
言葉が通じるのかはわからなかったが、丸井は弱々しく呟く。手を伸ばして、蹴った箇所を撫でた。本当に悪いことをしたと思った。自分勝手なのはわかっていたが、謝らずにはいられなかった。
「もにゃ、もにゃ~。」
尻尾のようなものを振り、毛玉は目を細めて嬉しそうに鳴く。――すると驚いたことに今度は毛玉がみるみる小さくなり、始めに見たサイズ感に戻っていった。
それに比例して、澱んでいた丸井の心も軽くなっていくような不思議な感覚があった。
…
最悪な事態は避けられたとはいえ、この未確認生命体をどうするかは未だ決まっていなかった。丸井が不安を抱えて触れると大きくなり、撫でれば規定サイズに戻る(ような気がする)ということだけはわかったが、それ以外のことは全くわからなかった。
ただ追い出すつもりでいたが、予想以上に懐かれてしまい、気が引けた。甘えられると情が湧いてしまうのが人間の性。
小さくバウンドしながら丸井の膝に擦り寄ってきて、撫でをせがんでくる。もにゃ~と喉を鳴らすような声を出す。
春先とはいえまだ寒い。寒空の下に放り投げるのは酷だと思うようになっていた。
丸井は考えた結果、今晩は毛玉を家に置いておくことにした。
腹が鳴る。そういえば毛玉の対応に必死で夕ご飯を食べるのをすっかり忘れてしまっていた。
玄関に置きっぱなしになっていたレジ袋を持って来て、中から冷めた弁当を取り出す。電子レンジに突っ込み約2分ほど加熱した。ご飯を覆うように海苔が乗り、揚げた白身魚が添えてある海苔弁当だ。スーパーで一番安いのがこれなのだ。
「もにゃ~?」
毛玉が興味深そうに丸井の弁当を見つめている。スマホで軽く調べたが猫には食べさせてはいけないものばかりらしい。この猫もどきにとっても毒なのだろうか?と考えていると、バウンドしてひょいと揚げ物を掻っ攫っていった。ああ!と丸井が声を上げた時にはもう遅く、毛玉は揚げ物をぺろりと平らげていた。
「もにゃ!もにゃ!」
ひやりとしたが、元気そうに尻尾を振っている。やはりやつは猫でもない謎の生命体のようだ。
海苔弁当の目玉を取られ、げんなりしつつも毛玉が嬉しそうに転がっているのを、見るとそう悪い気持ちではなかった。
どくんと心臓が脈打ち、全身の毛穴から汗が吹き出した。毛玉は虚空を見つめたまま、じっと動かなくなっていた。
呼吸が浅い。胸ぐらを掴んで、部屋の隅で膝を抱えた。毛玉を蹴った足が震えている。
埋めたらバレないかな。罪悪感よりも先に、臆病な丸井は真っ先に自分を守ることを考えた。自分のやったことを、揉み消してなかったことにしようとしたがった。
不法侵入した宇宙生命体をやっつけたのだから、悪いことをしたわけじゃない。ヒーローだって怪物をやっつけてる。僕は悪くない。
丸井は自分のしたことを弁明するように何度も何度も心の中で言い訳を繰り返した。だが、悪くないと言うほど、自分のせいだという現実が後ろ髪を引いてくる。
「僕のせいじゃない……僕は悪くない……。」
隠すことばかり思いつく。誤魔化すことばかり考える。底なし沼のような感覚に心が食い尽くされた。
「もにゃ!」
「……え。」
「もにゃ!にゃ!もにゃ!」
犯罪者になった気分で顔を膝に埋めていたら、例の変な鳴き声がした。息を吐きながら、見上げると、横転した毛玉が起きあがろうともがいていた。
丸井はショックから都合のいい幻覚を見ているのかと思った。震える体で恐る恐る毛玉に近づいた。
鳴き方が厳つい。毛玉は少し怒っているようだった。
息があることにはーっと胸を撫で下ろす。幾ら正体不明な生物とはいえ、怒りに身を任せて蹴るのはよくなかったと猛省した。
「ごめん……。」
言葉が通じるのかはわからなかったが、丸井は弱々しく呟く。手を伸ばして、蹴った箇所を撫でた。本当に悪いことをしたと思った。自分勝手なのはわかっていたが、謝らずにはいられなかった。
「もにゃ、もにゃ~。」
尻尾のようなものを振り、毛玉は目を細めて嬉しそうに鳴く。――すると驚いたことに今度は毛玉がみるみる小さくなり、始めに見たサイズ感に戻っていった。
それに比例して、澱んでいた丸井の心も軽くなっていくような不思議な感覚があった。
…
最悪な事態は避けられたとはいえ、この未確認生命体をどうするかは未だ決まっていなかった。丸井が不安を抱えて触れると大きくなり、撫でれば規定サイズに戻る(ような気がする)ということだけはわかったが、それ以外のことは全くわからなかった。
ただ追い出すつもりでいたが、予想以上に懐かれてしまい、気が引けた。甘えられると情が湧いてしまうのが人間の性。
小さくバウンドしながら丸井の膝に擦り寄ってきて、撫でをせがんでくる。もにゃ~と喉を鳴らすような声を出す。
春先とはいえまだ寒い。寒空の下に放り投げるのは酷だと思うようになっていた。
丸井は考えた結果、今晩は毛玉を家に置いておくことにした。
腹が鳴る。そういえば毛玉の対応に必死で夕ご飯を食べるのをすっかり忘れてしまっていた。
玄関に置きっぱなしになっていたレジ袋を持って来て、中から冷めた弁当を取り出す。電子レンジに突っ込み約2分ほど加熱した。ご飯を覆うように海苔が乗り、揚げた白身魚が添えてある海苔弁当だ。スーパーで一番安いのがこれなのだ。
「もにゃ~?」
毛玉が興味深そうに丸井の弁当を見つめている。スマホで軽く調べたが猫には食べさせてはいけないものばかりらしい。この猫もどきにとっても毒なのだろうか?と考えていると、バウンドしてひょいと揚げ物を掻っ攫っていった。ああ!と丸井が声を上げた時にはもう遅く、毛玉は揚げ物をぺろりと平らげていた。
「もにゃ!もにゃ!」
ひやりとしたが、元気そうに尻尾を振っている。やはりやつは猫でもない謎の生命体のようだ。
海苔弁当の目玉を取られ、げんなりしつつも毛玉が嬉しそうに転がっているのを、見るとそう悪い気持ちではなかった。
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