異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する

眠眠

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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜

レジスタンス2

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 レジスタンス。崩壊都市ヴェルニカの生き残りを中心に構成された反帝政組織。

 その発足は2年前に遡る。まだ、ヴェルニカが崩壊都市と呼ばれる以前のころ。交通の要所として、人に、活気に満ちていたころの話である。

 いつもと何の代わり映えしない、とある晴れた日の早朝だった。青白い空を割るように、一筋の白い光が天よりヴェルニカへと飛来した。やがて白い光はオレンジ色に輝き、尾を引くように白煙と黒煙がたなびき、郊外へと何かが墜落した。

 落ちたそれを最初に確認したのは都市ヴェルニカの警ら部隊であった。彼らは帝国の軍人ではない。属国には帝国からの駐留軍として軍隊が存在する(それらは帝国軍第二軍団~第六軍団と呼称される)が、警ら部隊は各国独自に組織された軍事組織である。警ら部隊は派遣された各軍団より小規模になるように統制されていた。だからこそ、より迅速に素早く問題に対処できるのだが、今回はそれが裏目に出てしまった。

 警ら部隊は発見したそれをーー宇宙船テラ・マーテル号の残骸と思しきそれを上司であるヴェルニカ領主へと報告。領主は真偽を確認しようと現場へと赴き、そして二度と帰って来なかった。

 代わりにヴェルニカへ来たのはモンスターの大群。まるで何かに追い立てられるように都市の四方よりモンスター達は現れた。頼みの綱の城壁は砲弾でも打ち込まれたかのように突如弾けて一部が崩れ落ち、モンスターはそこに殺到する。早朝に起きた突然の惨事にヴェルニカの住民はパニックに陥った。

 常住していた帝国軍は、第二軍団ヴェルニカ都市部隊。彼らは必死になって応戦するが、奮戦虚しくモンスターは都市を蹂躙して回った。部隊には先祖返りが居らず、城壁が破壊され、想定外のモンスターの大群に対抗できる戦力は存在しなかった。戦車は黒像に踏まれて拉げ、黒獅子、黒狼の群れが抵抗する軍人や住民達を殺し回った。食らうでもなく、弄ぶでもなく、まるでモンスター達も何かから遁走しており、その邪魔者を排除するかのごとく住人を殺害していった。家族を連れ、自動車で都市からの脱出を試みた者たちもいた。その多くがモンスターに囲まれてその生涯を終えた。なんとか逃げ延びたものも居るかもしれないが、二年経った今も生存者の話は聞かない。

 レジスタンスを結成したメンバーは都市ヴェルニカの生き残りであった。

 領主の娘、アスカ。
 使用人、ユキト。
 街医者、軍人、商人、etc...。

 領主の館の倉庫に彼らは逃げ込んでいた。手傷を負っている者も多い。外にはモンスターが徘徊しており、すでに館は蹂躙の限りを尽くされていた。

 突然の災禍に絶望する彼ら。
 そんな中、彼らは人外の声を聞く。

「力を望みますか?」 

 倉庫の内にどこからともなく声が響き彼らは狼狽する。誰何する声を無視して再び人外は言葉を発する。

「多くの声が、悲鳴が、願いが聞こえました。力を望みますか?」

 正体不明の声にアスカは答えた。昨日までは平穏と笑顔に満ちていた都市が、惨害と恐怖に塗りつぶされた怒りに声を震わせながら彼女は答えた。

「力を望むか、だと……?」

「お嬢様」と彼女を呼ぶ声がする。ユキトが彼女を見ていた。彼だけではない、倉庫に居る者全員が彼女を見ていた。

「決まっている! そんなものは決まっている!! 寄越せ!! 父様と、街の皆をこんな目に合わせた奴らを、モンスターたちを全員ぶっ殺してやる!! そのための力を!! 俺たちに寄越しやがれ!!!」
「……数多の願いあり。パートナーの選別は不可。強き声を持つ者達よ。等しき力を与えましょう」

 そして、人外はアスカ達に力を与え、彼らはその力を奮うことでなんとかヴェルニカを脱出した。脱出の最中、彼らは目撃する。ヴェルニカを囲うように駐留する武器を携えた人間の姿を。そして、車両の中に居る皇帝の姿を。彼らが崩壊するヴェルニカを静観していたことを知る。そして、これらの事実と墜落したテラ・マーテル号の話が世間に広がることはなかった。

 だから、彼らはレジスタンスを結成した。復讐のため、真実を知るため、敵を知り、仲間を集めるためにレジスタンスを結成した。皇帝と帝国は裏の顔を持っている。敵は国家システム。迂闊に表に出てしまえばすぐに命を狙われる。だから彼らはひっそりと活動を開始した。表向きはバラクラードの教会を管理、運営し、裏では独自の諜報活動を今まで行ってきた。

「それが、彼らレジスタンスです」

 と、クリスくんは説明を締めくくった。

「ふん、渡した資料はもう把握したか。なら返してもらうぞ」
「どうぞ。ひと目見たものは忘れませんので安心してください」

 クリスくんは紙束をアスカに渡す。俺が目覚めたときに読んでいたやつだな。

「というわけです、悪霊さん。何か質問は?」

 クリスくんは俺に話を振る。今までの説明は気絶していて状況の分からない俺にしてくれたものだ。せっかくだしいろいろと質問させてもらおう。

(その人外って何? 謎の声の主)
「お前らのレイジーと同じだよ。ガイアからの来訪者だ。彼の能力で俺たちは事なきを得た」

 えっ!? レイジーちゃん以外にもガイアから来た人が居たの?

「"人"、と呼べるかどうかは知らねえけどな。名前はユグドだ」
(そのユグドとやらは今どこに?)
「秘密だ。奴の存在はこっちの生命線に関わるからな。初期メンバーにしか教えられない」

 人差し指を口に当ててアスカは言う。さようでござるか。

「レイジーもまだ会ったことないんですよ」
(え、そうなの)
「うん。それらしい気配はするんだけどね……」

 キョロキョロと周囲を見渡してレイジーちゃんは答える。気配とか分かるんだ。同じガイア出身だからかな。

「まあ、すべてが終わったら会わせてやるよ。他に質問は?」
(ユグドの能力って? ガイア出身であるならば、レイジーちゃんくらいには強いってこと? それでなんとかヴェルニカを脱出したとか?)

 そう尋ねるとアスカは俺ではなくクリスくんの方を見た。

「クリス。まだ話してないのか?」
「時間が無くてね」
「そうか。それは後にしよう。百聞は一見に如かずだ。他には?」

 むう、後回しにされてしまった。あと、クリスくんはすでにご存知の様子。話せない事情でもあるのかな。

(皇帝が居たって本当?)
「本当だ。俺もこの眼で見た。あれは間違いなく皇帝だった」

 まじか。もし本当だとすると間違いなく黒幕じゃないか。けど、本当にそうなのかな? 黒虎騒ぎのとき自ら現場に出張って住民を助けてくれたし、レイジーちゃんのことも知らない風だったけど。

(そっくりさんの可能性は?)
「知らん。影武者は居てもおかしくないけど、あのときあそこにいた皇帝がそうだったかは知らない。ただ、俺たちは皇帝が黒幕と見て動いている」

 アスカは険しい顔でそう断言した。ううん、どっちが本当なんだろう。

(クリスくんはどう思ってる?)
「五分五分ですね。なんとも言えません」

 そっか。まだ不確定って感じなんだな。

(そういえば、リーシャが見えないけど、彼女もレジスタンスの仲間でいいんだよね)
「ああ。リーシャはまだ巡業中だ。あと一週間もすれば帰ってくる。リーシャとセイ、それにマネージャとSPも全員レジスタンスのメンバーだ。貴重な活動資金を稼いでもらっている」

 あ、あのマネージャーもメンバーだったのか。俺はオカマネージャーを思い出す。身体が無いにも関わらずぞわりと悪寒が走った。未だアレを超える恐怖体験は存在しない。まさか、アレとまた対面することになろうとは……。

「悪霊もメンバーの顔と名前は把握しておいてくれるか。教会に居る子供は引き取った孤児だからレジスタンスのことは一切知らない。話せても話さないで欲しい。メンバーの詳細はイータに聞いてくれ」
(分かった)

 ペコリとイータさんがこちらに頭を下げた。

(あと、アルがどうしてここに居るか知りたいんだけど……)
「それは本人に聞いてくれ」

 アスカはぶっきらぼうに答える。むう、また後回しにされてしまったか。そんなに面倒くさいのかな。

「他に質問は?」
(すぐには思いつかないな)
「分かった。それじゃあ、予定通り戦力把握をしようか。クリス、ベータ、準備はいいか」
「ええ」
「もちろん」

 ベータと呼ばれた強面の男性とクリスくんが首肯する。
 え、戦力把握って? これから何が始まるの?

「悪霊さんが目覚めるまで時間がかかったように、僕のほうも回復するまで時間がかかりましてね」

 ちょんちょんと、クリスくんは頭を指差す。

「ようやく全快してレイジーにも慣れ・・・・・・・・てきたので、いっちょうお手合わせと思いましてね」

 ん? クリスくんは何を言っているんだ?

「百聞は一見に如かずですよ。ユグドの能力、知りたがってましたよね」
(いや、まあ、そうだけど……)
「レイジー」
「うん」

 名前を呼ばれたレイジーちゃんがクリスくんに近づく。そして彼女の身体を光を帯び、溶けるようにクリスくんの身体にまとわりついた。

(へ?)

 間の抜けた声が俺の口から漏れる。レイジーちゃんの身体は見てる間に変質していき、ついには全身が溶けてクリスくんと混ざり合う。次の瞬間クリスくんに背中に六枚の白翼が現れた。

「これが、僕とレイジーの能力です」

 彼はいつもと変わらないちょっと小生意気な笑顔でそう言った。その双眸は左右で瞳の色が違う。左が青色で、右が琥珀色。彼の右瞳は、青から琥珀へーーレイジーちゃんの瞳の色へと変わっていた。
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