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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
コンちゃん = 取引先?
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それからしばらく経ったある日の夜。教会の屋根で日課の瞑想と見張りをしていると、死神さんがやってきた。
「こんばんは、悪霊さん」
そう挨拶して、彼女は俺の隣に座る。
(あ、死神さん、こんばんは。コンちゃんの事件以来ですね。……剣神さんと闘神さん、ちゃんと無事でした?)
コンちゃんと神格4柱が激突した結果、どういう理屈かわからないが、剣神さんと闘神さんの二人はこの世界から消えてしまった。創造神さんは無事だと言っていたけど、どうだったんだろう。
「そうですね、二人は無事です。幸い私達の世界に戻されただけのようで、特に怪我もないようでした。今日も仕事に励んでますよ」
そっか。無事ならよかった。
「……ちなみに、コンちゃんのご機嫌はいかがですか? 貢物、気に入って貰えましたかね?」
(いやあ、それが、あれから俺もコンちゃんとは会ってないんですよ。なのでよく分からないです)
「そうですか……」
死神さんは緊張気味にそう尋ねるのだが、コンちゃんの反応が分からないと知ると、途端に力が抜けたように肩が降りた。
あれから、コンちゃんはこの世界に現れていない。いつぞや死神さんを呼んだときと同じように、こちらから彼女に呼びかけたりもしたのだが、一向に返事が無かったのである。可愛い、美人、素敵と褒めちぎっても何の反応もなかったので、死神さんより手強い相手だ。
ただ、戻る前に眠そうにしていたし、貢物を飲んで食らって熟睡している可能性も否定できない。
(それで、結局のところコンちゃんは神様だったんですか? 課長さんに聞いてみたんですよね?)
「あー! そうです、そうです! 悪霊さん! 聞いて下さいよ。なんとビックリ、コンちゃんの正体はですね……!」
死神さんは声を大にして俺に迫る。
「正体は、です……ね……」
迫るのだが、徐々に声量は尻すぼみになり、さらに彼女は俺から視線を逸らすと、悩むような素振りを見せる。
(えっと、どうしたんですか?)
「……何て説明していいのか分かんない」
(はい?)
死神さんは意気揚々とコンちゃんについて話そうとしたのだが、説明に相応しい表現が見つからなかったようだ。
(別に言い換えなくても、上司さんから伝え聞いた話をそのまますればいいんじゃないんですか?)
「いや、それはそれで守秘義務等々がありますのでまずいんですよ。それにーー」
死神さんは躊躇うように少し黙ると、やがて意を決して口を開く。
「■■■。……悪霊さん、今の単語、聞こえました?」
(いや、よく聞き取れませんでした)
死神さんたちの名前みたいに、ただ変な音が聞こえただけだ。
「やっぱりですか。じゃあ駄目ですね。課長から伝え聞いた話をそのまましても、虫食いだらけのよく分かんない言葉が聞こえるだけです。というわけで、悪霊さんが聞き取れる適切な言葉を探してるんですけど……」
死神さんは首をひねる。しばらく彼女は悩む素振りを見せるが、なかなか相応しいものが見つからないらしい。
彼女が適当な表現を思いつくより、こっちから質問をしたほうが早いかな。
(えっと、結局、コンちゃんは死神さん達と同じ神様なんですかね?)
「いえ、違います。少なくとも私達の仲間ではありません」
あら、違うんだ。
(でも『理の外』の住人なんですよね)
「そうですね。えーと、私達の世界の住人であることは間違いないです。……あ、ですので、悪霊さんが私達の秘密を漏らした件は不問となりました」
それはよかった。やっぱり俺は悪くなかった。
(神様の仲間じゃないけど、神様の世界の住人と……。それが何でまたこの世界に現れたんです?)
「それは悪霊さんとコンちゃんが繋がっているからでは? コンちゃんもそう言ってましたし」
確かにコンちゃんは、自分と俺が奇妙な縁で繋がっていると言っていた。俺を経由してこちらの世界に現れたし、夢の中でもなぜか彼女の寝床に俺が現れたし。
「というわけで、私達より悪霊さんのほうが、コンちゃんとの結びつきは強いと思っています。身内みたいな?」
(身内って、俺の先祖に狐は居ませんよ?)
多分。
「ああ、そういう意味の身内ってわけじゃないんですけど……。うーん、何て言ったらいいかな? 家族ではないし、仲間とも違うし……、同類……かなぁ。でも、コンちゃんと悪霊さんは全然違うし……」
ふむ。死神さんはそこが腑に落ちないようだ。
手助けになるかもしれないし、試しに候補を挙げてみよう。
(戦友?)
「ーーとも違うし……」
(友達?)
「ーーは、多分そうですけど、だから何だって話ですし……」
(恋人?)
「ーーは、ありえないし……」
ありえないってなんだよ!
確かに現世で恋人はいなかったけどさ!
前世の恋人の生まれ変わりの可能性だってあるだろ!
「……悪霊さんは変なところ乙女チックですね。運命神さんと話が合いそうです」
死神さんは、ちょっと引き気味にそう言った。
運命神さん? 死神さんの仕事仲間だろうか。
「ええ、そうですね。……あ、今回のミッションのお二人に加護を授けたのも運命神さんーーです」
(そうだったんですか。今度会ったら悪霊がお礼を言っていたと伝えてください)
効果はよくわからないけど、神様の加護はセカンド・ミッションの難易度に大きく関わっているはずだ。
もし加護が無かったら、下手すると既にミッションは失敗に終わっていたかもしれない。結構、クリスくん無茶をしていたし。
「分かりました。……うーん、駄目ですね。適切な言葉が見当たりません」
そう言って、死神さんは頭を振る。
駄目か、仕方ない。質問の切り口を変えよう。
(死神さん達はコンちゃんと敵対してるんですか?)
「いえ、敵対はしていません。むしろ、こちらとしては協力関係を築いていきたいんですが、コンちゃんがどう思っているか……」
死神さんは首をひねって悩ましげな表情を見せる。コンちゃんは死神さんたちのことを『盗人』と表現していたからな。あまり心象は良くないんだろう。
「ですよねー。貢物で何とか機嫌を直してもらいたいんですけど、どうでしょうかね?」
(さあ。でも、死神さんが貢物を収めたら盗人扱いするのはやめると言っていましたし、少しは良くなってるんじゃないですかね? 今もきっと眠っているだけですよ)
「そうだといいんですが……」
死神さんはため息をつく。
さて、死神さんに聞いた話をまとめるとこんな感じかな。
《相関図》
コンちゃん → 神様たち
神様たち → コンちゃん
コンちゃん ⇔ 俺
……よく分かんねぇ。
一応、コンちゃんが神様の世界の住人で、なおかつ神様ではないということは判明したけど、それは上司さんが《理の外》の存在と呼んでいたことから察しがついてたからなぁ。
あと、神様たちが仲良くしたいってどういうことだよ。コンちゃんからは盗人扱いされ、彼女の機嫌を取るために貢ぐとか、普通立場が逆では? コンちゃんが神様ならまだ納得できるのだが。
(どうして死神さんたちは、コンちゃんと仲良くしたいんですか?)
「管理世界を、誰かに悪戯に壊されたら……困りますよね」
(それは確かに)
神様たちを上回る力をコンちゃんは持っている。本人やる気無さそうだったけど、その可能性があるから無碍に扱えないのだろう。
(あ、コンちゃんが実は引退した神様ってことはありえる?)
会長ポジション的な。で、現社長ポジションの死神さん達と対立しているとか。
「それはないですね。コンちゃんは過去においても神様じゃありません」
(そうですか……)
思いついただけだし、やっぱり違うか。
……そういえば、死神さんたちは神様なのに普通に企業務めな感じなんだよな。役職ついてるし、給料もらってるし。そう考えると、コンちゃんは死神さんたちが仲良くしたいってことだからーー。
(取引先……とか?)
「取引先……、取引先……。いいですね、それ、ピッタリです!」
死神さんが驚いたように俺を指差す。
(本当に?)
「ええ! まさに、ドンピシャの表現ですよ。なるほど、取引先ですか……うん、確かにそんな感じですね」
うんうん、と死神さんは頷く。よほどきれいに言葉が嵌ったようである。予想以上に死神さんが喜んでくれたので、俺は少し嬉しくなった。
「というわけで、コンちゃんは私達の取引先、みたいな存在です。こちらがちょっと情報の取扱いをミスってしまったため、盗人扱いするほどコンちゃんはご機嫌を損ねてしまいました。ただ、菓子折り的な貢物を渡ししたので、何とか引き続き取引を継続して貰えるのではないかと、期待しています」
ああ、なるほど、そんな関係か。それならまあ、理解できるな。
(情報の取扱いって?)
「守秘義務があるので言えません」
むう、そこが駄目か。
「ただ、これからもコンちゃんとは懇意にして行きたいので、悪霊さん、協力をお願いしますね」
(それは構わないけど、何をすればいいの?)
「うーん。悪霊さんはコンちゃんから気に入られているようなので、とりあえずそのままでお願いします」
ほうほう。じゃあ、特に何もしなくていいかな。起きたらまた耳かきしてもらおっと。別に駄目じゃないよね。
あ、コンちゃんにミッションの手助けをしてもらうのはありなのかな。
「うーん、それはちょっとやめていただきたいですね。こちらとしても、それではミッションの意味が無くなってしまうので……」
(ミッションの意味が無くなるって、どういうこと?)
「あ……。えっと、多分、コンちゃんなら世界への影響を無視して力づくでミッション達成してしまいそうなので……」
あー、そういうことか。確かに、コンちゃんに現在のミッションの手伝いを要求したら、頑丈な部屋にクリスくんとレイジーちゃんの二人を閉じ込めそうな気がする。イータさんの下着が見たいという俺の純粋な願いも、後先考えずに叶えてくれたし。そのとき風で農作物を駄目にしていたし、世界への影響なんて微塵も考えそうにないな、あの狐娘は。
(分かった。コンちゃんにお願いするのはできるだけ控える。最後の手段にするよ)
「ありがとうございます」
死神さんは晴れやかな表情となって、お礼を言う適当な表現が見つかったので、悩みも消えたといった感じなのだろう。
それにしてもコンちゃんは死神さんたちの「取引先」か。実態はさっき言ってた■■■なので比喩表現なんだろうけど、本当に死神さんたちの世界観は企業じみているな。で、そんな取引先のコンちゃんと俺はなぜか縁があり、しかもその結びつきは死神さんたちのものより強い……と。
(……死神さん。俺のやってるミッションって、死神さんたちの企業の下請けみたいですよね)
「下請け……。うーん、厳密には違いますが、まあ、似ていると言えば似ていますね」
(で、コンちゃんは死神さんたちより俺のほうが結びつきが強い、と)
「そうですね」
(……)
「悪霊さん?」
(実は俺はコンちゃんの部下で、死神さんの企業に派遣されている、という絵面が思い浮かんだんですけど)
「ああ、確かに、それはピッタリですね」
(……)
「悪霊さん? 黙ってしまってどうしたんですか?」
(偽装請負?)
「……もちろん、アナロジーですからね。勘違いしちゃ駄目ですよ」
「こんばんは、悪霊さん」
そう挨拶して、彼女は俺の隣に座る。
(あ、死神さん、こんばんは。コンちゃんの事件以来ですね。……剣神さんと闘神さん、ちゃんと無事でした?)
コンちゃんと神格4柱が激突した結果、どういう理屈かわからないが、剣神さんと闘神さんの二人はこの世界から消えてしまった。創造神さんは無事だと言っていたけど、どうだったんだろう。
「そうですね、二人は無事です。幸い私達の世界に戻されただけのようで、特に怪我もないようでした。今日も仕事に励んでますよ」
そっか。無事ならよかった。
「……ちなみに、コンちゃんのご機嫌はいかがですか? 貢物、気に入って貰えましたかね?」
(いやあ、それが、あれから俺もコンちゃんとは会ってないんですよ。なのでよく分からないです)
「そうですか……」
死神さんは緊張気味にそう尋ねるのだが、コンちゃんの反応が分からないと知ると、途端に力が抜けたように肩が降りた。
あれから、コンちゃんはこの世界に現れていない。いつぞや死神さんを呼んだときと同じように、こちらから彼女に呼びかけたりもしたのだが、一向に返事が無かったのである。可愛い、美人、素敵と褒めちぎっても何の反応もなかったので、死神さんより手強い相手だ。
ただ、戻る前に眠そうにしていたし、貢物を飲んで食らって熟睡している可能性も否定できない。
(それで、結局のところコンちゃんは神様だったんですか? 課長さんに聞いてみたんですよね?)
「あー! そうです、そうです! 悪霊さん! 聞いて下さいよ。なんとビックリ、コンちゃんの正体はですね……!」
死神さんは声を大にして俺に迫る。
「正体は、です……ね……」
迫るのだが、徐々に声量は尻すぼみになり、さらに彼女は俺から視線を逸らすと、悩むような素振りを見せる。
(えっと、どうしたんですか?)
「……何て説明していいのか分かんない」
(はい?)
死神さんは意気揚々とコンちゃんについて話そうとしたのだが、説明に相応しい表現が見つからなかったようだ。
(別に言い換えなくても、上司さんから伝え聞いた話をそのまますればいいんじゃないんですか?)
「いや、それはそれで守秘義務等々がありますのでまずいんですよ。それにーー」
死神さんは躊躇うように少し黙ると、やがて意を決して口を開く。
「■■■。……悪霊さん、今の単語、聞こえました?」
(いや、よく聞き取れませんでした)
死神さんたちの名前みたいに、ただ変な音が聞こえただけだ。
「やっぱりですか。じゃあ駄目ですね。課長から伝え聞いた話をそのまましても、虫食いだらけのよく分かんない言葉が聞こえるだけです。というわけで、悪霊さんが聞き取れる適切な言葉を探してるんですけど……」
死神さんは首をひねる。しばらく彼女は悩む素振りを見せるが、なかなか相応しいものが見つからないらしい。
彼女が適当な表現を思いつくより、こっちから質問をしたほうが早いかな。
(えっと、結局、コンちゃんは死神さん達と同じ神様なんですかね?)
「いえ、違います。少なくとも私達の仲間ではありません」
あら、違うんだ。
(でも『理の外』の住人なんですよね)
「そうですね。えーと、私達の世界の住人であることは間違いないです。……あ、ですので、悪霊さんが私達の秘密を漏らした件は不問となりました」
それはよかった。やっぱり俺は悪くなかった。
(神様の仲間じゃないけど、神様の世界の住人と……。それが何でまたこの世界に現れたんです?)
「それは悪霊さんとコンちゃんが繋がっているからでは? コンちゃんもそう言ってましたし」
確かにコンちゃんは、自分と俺が奇妙な縁で繋がっていると言っていた。俺を経由してこちらの世界に現れたし、夢の中でもなぜか彼女の寝床に俺が現れたし。
「というわけで、私達より悪霊さんのほうが、コンちゃんとの結びつきは強いと思っています。身内みたいな?」
(身内って、俺の先祖に狐は居ませんよ?)
多分。
「ああ、そういう意味の身内ってわけじゃないんですけど……。うーん、何て言ったらいいかな? 家族ではないし、仲間とも違うし……、同類……かなぁ。でも、コンちゃんと悪霊さんは全然違うし……」
ふむ。死神さんはそこが腑に落ちないようだ。
手助けになるかもしれないし、試しに候補を挙げてみよう。
(戦友?)
「ーーとも違うし……」
(友達?)
「ーーは、多分そうですけど、だから何だって話ですし……」
(恋人?)
「ーーは、ありえないし……」
ありえないってなんだよ!
確かに現世で恋人はいなかったけどさ!
前世の恋人の生まれ変わりの可能性だってあるだろ!
「……悪霊さんは変なところ乙女チックですね。運命神さんと話が合いそうです」
死神さんは、ちょっと引き気味にそう言った。
運命神さん? 死神さんの仕事仲間だろうか。
「ええ、そうですね。……あ、今回のミッションのお二人に加護を授けたのも運命神さんーーです」
(そうだったんですか。今度会ったら悪霊がお礼を言っていたと伝えてください)
効果はよくわからないけど、神様の加護はセカンド・ミッションの難易度に大きく関わっているはずだ。
もし加護が無かったら、下手すると既にミッションは失敗に終わっていたかもしれない。結構、クリスくん無茶をしていたし。
「分かりました。……うーん、駄目ですね。適切な言葉が見当たりません」
そう言って、死神さんは頭を振る。
駄目か、仕方ない。質問の切り口を変えよう。
(死神さん達はコンちゃんと敵対してるんですか?)
「いえ、敵対はしていません。むしろ、こちらとしては協力関係を築いていきたいんですが、コンちゃんがどう思っているか……」
死神さんは首をひねって悩ましげな表情を見せる。コンちゃんは死神さんたちのことを『盗人』と表現していたからな。あまり心象は良くないんだろう。
「ですよねー。貢物で何とか機嫌を直してもらいたいんですけど、どうでしょうかね?」
(さあ。でも、死神さんが貢物を収めたら盗人扱いするのはやめると言っていましたし、少しは良くなってるんじゃないですかね? 今もきっと眠っているだけですよ)
「そうだといいんですが……」
死神さんはため息をつく。
さて、死神さんに聞いた話をまとめるとこんな感じかな。
《相関図》
コンちゃん → 神様たち
神様たち → コンちゃん
コンちゃん ⇔ 俺
……よく分かんねぇ。
一応、コンちゃんが神様の世界の住人で、なおかつ神様ではないということは判明したけど、それは上司さんが《理の外》の存在と呼んでいたことから察しがついてたからなぁ。
あと、神様たちが仲良くしたいってどういうことだよ。コンちゃんからは盗人扱いされ、彼女の機嫌を取るために貢ぐとか、普通立場が逆では? コンちゃんが神様ならまだ納得できるのだが。
(どうして死神さんたちは、コンちゃんと仲良くしたいんですか?)
「管理世界を、誰かに悪戯に壊されたら……困りますよね」
(それは確かに)
神様たちを上回る力をコンちゃんは持っている。本人やる気無さそうだったけど、その可能性があるから無碍に扱えないのだろう。
(あ、コンちゃんが実は引退した神様ってことはありえる?)
会長ポジション的な。で、現社長ポジションの死神さん達と対立しているとか。
「それはないですね。コンちゃんは過去においても神様じゃありません」
(そうですか……)
思いついただけだし、やっぱり違うか。
……そういえば、死神さんたちは神様なのに普通に企業務めな感じなんだよな。役職ついてるし、給料もらってるし。そう考えると、コンちゃんは死神さんたちが仲良くしたいってことだからーー。
(取引先……とか?)
「取引先……、取引先……。いいですね、それ、ピッタリです!」
死神さんが驚いたように俺を指差す。
(本当に?)
「ええ! まさに、ドンピシャの表現ですよ。なるほど、取引先ですか……うん、確かにそんな感じですね」
うんうん、と死神さんは頷く。よほどきれいに言葉が嵌ったようである。予想以上に死神さんが喜んでくれたので、俺は少し嬉しくなった。
「というわけで、コンちゃんは私達の取引先、みたいな存在です。こちらがちょっと情報の取扱いをミスってしまったため、盗人扱いするほどコンちゃんはご機嫌を損ねてしまいました。ただ、菓子折り的な貢物を渡ししたので、何とか引き続き取引を継続して貰えるのではないかと、期待しています」
ああ、なるほど、そんな関係か。それならまあ、理解できるな。
(情報の取扱いって?)
「守秘義務があるので言えません」
むう、そこが駄目か。
「ただ、これからもコンちゃんとは懇意にして行きたいので、悪霊さん、協力をお願いしますね」
(それは構わないけど、何をすればいいの?)
「うーん。悪霊さんはコンちゃんから気に入られているようなので、とりあえずそのままでお願いします」
ほうほう。じゃあ、特に何もしなくていいかな。起きたらまた耳かきしてもらおっと。別に駄目じゃないよね。
あ、コンちゃんにミッションの手助けをしてもらうのはありなのかな。
「うーん、それはちょっとやめていただきたいですね。こちらとしても、それではミッションの意味が無くなってしまうので……」
(ミッションの意味が無くなるって、どういうこと?)
「あ……。えっと、多分、コンちゃんなら世界への影響を無視して力づくでミッション達成してしまいそうなので……」
あー、そういうことか。確かに、コンちゃんに現在のミッションの手伝いを要求したら、頑丈な部屋にクリスくんとレイジーちゃんの二人を閉じ込めそうな気がする。イータさんの下着が見たいという俺の純粋な願いも、後先考えずに叶えてくれたし。そのとき風で農作物を駄目にしていたし、世界への影響なんて微塵も考えそうにないな、あの狐娘は。
(分かった。コンちゃんにお願いするのはできるだけ控える。最後の手段にするよ)
「ありがとうございます」
死神さんは晴れやかな表情となって、お礼を言う適当な表現が見つかったので、悩みも消えたといった感じなのだろう。
それにしてもコンちゃんは死神さんたちの「取引先」か。実態はさっき言ってた■■■なので比喩表現なんだろうけど、本当に死神さんたちの世界観は企業じみているな。で、そんな取引先のコンちゃんと俺はなぜか縁があり、しかもその結びつきは死神さんたちのものより強い……と。
(……死神さん。俺のやってるミッションって、死神さんたちの企業の下請けみたいですよね)
「下請け……。うーん、厳密には違いますが、まあ、似ていると言えば似ていますね」
(で、コンちゃんは死神さんたちより俺のほうが結びつきが強い、と)
「そうですね」
(……)
「悪霊さん?」
(実は俺はコンちゃんの部下で、死神さんの企業に派遣されている、という絵面が思い浮かんだんですけど)
「ああ、確かに、それはピッタリですね」
(……)
「悪霊さん? 黙ってしまってどうしたんですか?」
(偽装請負?)
「……もちろん、アナロジーですからね。勘違いしちゃ駄目ですよ」
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