【R18】二重の執愛〜花枯らしの歌姫と呪われた王〜【完結】

双真満月

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第二幕:化身との契約

2-4:絶望の情交※

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 その夜。仕事も捗り、夕食のときもシュトリカやディーンと共に、無事過ごせた。

 だが、暗雲が空を満たし、雷の音を鳴らしはじめた頃合いだろうか。雷鳴だけが轟く館の自室で、エンファニオは一人、激しい動悸に襲われていた。

 それは、呪いが出てくる前兆だということを、自身だけがよく理解している。

「やめろ……」

 雷が光るたび、鼓動が激しくなる。寝台に横たわり、汗を掻きながら必死に胸を押さえた。そんな抵抗を嘲笑うかのように鼓動は増し、全身から力が抜けていく。

 なぜ、こんな大事なときに表に出ようとする――忌々しさをこめて歯噛みするも、こめかみまでが痛みはじめた。ぼやける視界で、思わずシュトリカの部屋に続く扉を見る。

(シュトリカを抱きたいのだろう、お前は)

 花枯はながらしの歌を求めた瞬間、頭の中に声が響いた。己と似た、それでいて全く違う声音に肩が跳ね上がる。呪いの化身、アーベの声を聞いたのは、これがはじめてだ。

「違う……」
(違うだと? 温室で、獣のようにシュトリカの唇を貪ったくせに、よく言う)
「あれ、は……花の、せいだ」
(笑わせてくれる。お前はシュトリカの、あの柔らかな体にしゃぶりつきたい。自分を突き入れ、溜まりに溜まった欲を放ちたくてたまらない、ただのけだものだ)

 せせら笑いと共に、シュトリカの淫靡な姿が浮かび上がる。アーベに抱かれ、甘い声音を上げて絶頂に達する姿。谺する嬌声。震える胸、その頂きの尖りまでがくっきりと。体中の血管が沸騰しそうになり、頭を抱えて唇を噛んだ。だが、声は止まない。

(温室で表に出てやってもよかったが、花枯らしの歌はさすがに堪えた。今夜もまた、お前にシュトリカの淫らな姿を見せてやろう。今宵はじっくり抱いてやるつもりだからな)
「やめてくれ……やめ、ろ」
(さあ、宴の時間だ、我が半身。その体を、俺によこせ)

 飛び出した絶叫が落ちた雷にかき消された瞬間、抵抗していた意識は無情にも、泥に飲みこまれるように暗闇へ落ちていった。

 静寂が再び部屋を支配する。灯るのは角灯ではなく、頬に浮き上がる彼岸花の紋様だ。

「……くく」

 エンファニオの意識は離脱し、ただ空中から見ることしかできない。欲情した己の瞳や大仰に舌なめずりする、醜悪な様を。

 アーベは動く。まっすぐ、迷いもなくシュトリカの部屋へと滑りこむ。意志が効かない体に引っ張られるように、自身の意識もまた。

 シュトリカは、自らの大きい寝室の片隅で眠りについていた。アーベが訪れたことを察してだろう。鳥籠に入り、大人しくしていたペクが羽根を動かし、小さく鳴いた。それでもシュトリカは起きない。無防備にその体を横たえたままだ。

 逃げてくれ、と願う祈りも届かない。アーベは微笑み、寝間着を寝台の側で脱いだ。そのまま、眠るシュトリカの上に覆い被さる。

 シーツを剥がすと、薄い寝間着に包まれたシュトリカの肌が露わとなった。肩から胸にかけ、大きく露出した白い寝間着は、暗闇の中でも眩しく光るように感じる。

 昨夜の乱暴な様子とは違い、アーベは優しい手つきで前開きの寝間着を解いていく。ふるりと飛び出る胸、股を隠す金色の和毛が薄い暗がりの中、暴かれてしまう。

 目覚めぬシュトリカの体を堪能するように、アーベはその細い太股から腹にかけ、するすると指でなぞった。何度も、何度も、執拗に。全身を手のひらと指で蹂躙していく。シュトリカは夕食のとき、葡萄酒を飲んでいる。そう簡単に起きることはないかもしれない。

「ん……」

 身動ぎするシュトリカは、まだ目覚めない。それどころか、違和感を覚えたのか片足を立て、和毛で隠されていた花弁を開け放つ始末だ。夜気に当たったためか、それとも愛撫で感じているのだろうか――薄い乳輪の先はぷくりと膨らみ、触られるのを待っている。

 やめろ、と叫ぶ己をあざ笑い、アーベは形のよい乳房の頂きを、くすぐるように爪弾く。

「あぅ……んっ」

  シュトリカの口から、微かに甘い吐息が漏れた。アーベが舌先で、再び乳首をつつく。唾液に塗れる頂きはほんのりと赤く染まり、熟れた果実みたいだ。

 そのまま、そう――己がそうしたかったように、乳輪ごと口に含んで尖りを軽く噛むと、はじめてシュトリカが重たげに瞼を持ち上げた。

「う、んっ……?」
「夢でも見ていたのか、シュトリカ。寝ているところを抱いてやろうと思ったのだが」
「あ……アーベ、様っ……?」
「ほう、すぐに俺だとわかったか。あいつの真似事をしてもよかったかもな」
「どうして、また……あなたが、ぁ……っ」

 酷薄に笑うアーベは音を立て、じゅうっと乳房を吸う。裸にされていることを理解したシュトリカは足掻くように動くも、長躯で押し潰されては叶わない。今すぐ体を引き剥がしたい気持ちに駆られるエンファニオだが、意識のままではそれすらできないのが悔しい。

「どうして、どうして……っ」
「俺はあいつ自身だ。それを認めない限り、俺はアーベのまま、お前を抱く」
「いや、ぁ……」

 片手で乳房を揉み、もう一方の胸を舌と唇で嬲りながら、アーベは瞳を暗く輝かせる。

「お前が俺を拒むというなら、そうだな……面白い話をしていたろう、確か。議会が開かれると。そのときにも俺が表に出てやろうか? 臣下の前で、洗いざらいぶちまけてやる」

 その言葉にエンファニオは愕然がくぜんとする。それは、シュトリカも同じだったようだ。目を見開き、全身を震わせた。上げていた顔をうつむかせ、その表情が空中からでは見えなくなる。

「だめ……です。それは、だめです……」
「ならば、俺に体を許せ。俺の言う通りにその身を俺に捧げろ。娼婦のように俺を誘い、欲をその胎に出させろ。そうすれば、表向きは優しい陛下でいることを許してやる」

 そんな約束をしてはいけない――意識だけで、叫ぶ。これ以上、君が傷付く必要はないと。それは悪魔の誘いだ。呪いの化身の言うことなんて、信じてはならないと。

 しかし、意識だけになったエンファニオの声は届くことはない。

「……わかり、ました」

 重たい沈黙を破り、シュトリカがおもてを上げた。どこか、そう、諦めたかのような顔で。だが、その翡翠の瞳に強い光があるのを見た。

「わ、わたしを……好きにして、いいです。でも、だから……お願いです、陛下の邪魔だけは、し、しないで下さい。お願いします……」
「……お前は本当に、あのお優しい陛下とやらを慕っているようだ。忌々しいが」

 意識のまま、体から力が抜けるというのも変だが、脱力した。シュトリカ、と呟く。どうして君は、そこまでして私を守ろうとするんだ――無力さばかりが去来する。

 アーベが裸身ごと寝台に横になり、自由になったシュトリカへ陰険な笑い声を上げる。

「いいだろう。だが、好きにするとは言ったが、同時に誘え、とも言ったはずだ。さあ、シュトリカ、やってみせろ。抱いて下さい、そう言え。最も淫らに請うんだ」

 シュトリカの体は震えていた。抱きしめて震えを止めてあげたい。今すぐにこの悪夢から彼女を逃がしてあげたい――そう思うのに、反面、ほぼ裸体となったシュトリカの体から目が離せなかった。

「……抱いて、下さい」
「何をどうしてほしい。どこに何を入れて、どうされたいのか、自分の体を使ってやれ」

 シュトリカが、再びうつむく。尻をついて座る。肩にかかっている寝間着を自ら落とし、完全な裸体となって、震えながらその股を開いていった。雷光が轟く。その光の下、初々しい桃色の媚肉、そして雌芯が明るみに出る。

 小さな可憐な指で、自らの秘部を広げ、潤んだ瞳でシュトリカはささやく。

「こ、ここ、に。アーベ様、を下さい……中に、入れて……出して……」
「何をぶちまけてほしいんだ? いやらしいシュトリカ」
「……こ、子種、を……アーベ様の、子種を、お腹に、たくさん……」
「いい子だな、シュトリカ。お前の言う通り子種を注いでやろう。だが、その前に」

 アーベの手が乱暴に伸び、シュトリカの体を寝台へと押し倒した。

「足は閉じるな。自分で持って開いたままにしていろ。わかったな?」
「は……い……」

 シュトリカは言われるまま、両手で自らの太股を押さえた。まるで、空中にいるエンファニオへ見せつけるように。己の目では見たことのない秘路が暴かれて、思わず息を呑む。

「今夜はじっくり、お前の体を開いていってやる。ただの女になれるように」
「ん、んっ」

 シュトリカの首筋に、アーベが唇を落とし、吸っては赤痣を残す。舌で筋を舐めながら、両胸の蕾を引っ張るようにしていくと、強烈な愛撫にだろう、シュトリカの瞳が蕩けていくのが見えた。

「ふあ……ン、んぁ……」
「胸はどうしてほしい。爪で弾かれたいか? また舌でねぶられたいか。言え」
「あ、ああ……口、口で……して、下さい……」
「好き者だな。だが、そうでなくては意味がない。お前をただの女にするのはこの俺だ」

 アーベが舌先で胸の蕾を嬲るたび、ひくひくとシュトリカの体が蠢く。アーベの指は下へ、下へと焦らすように下がっていき、ついには――

「ああっ……!」

 ツンと飛び出た花芽に触れた途端、シュトリカは身をよじる。親指と人差し指、それで捏ねるように花芯を弄くられたシュトリカは、おとがいを反らして瞳を見開いた。

「だめ、それ、だめですっ……! いや……ぁあ、ああっ。そこぉっ……」
「蜜を溢れさせてるくせに、よく言う。お前のここ、小さく可愛らしいが膨らんできたぞ」
「だめ、なのぉ……! 潰さ、ないでぇ……ひ、ぃっ」

 懇願を無視するアーベの手は巧みに動いた。秘芽を潰しながら中指を媚肉に差し入れ、蜜に塗れた淫筒を掻き回す。雷光で丸見えの秘部は、確かに愛液に濡れていた。

「いやっ……わたし、わたしっ、また……来るのっ……」
「達しろ。好きなだけ快楽の海に溺れるがいい、シュトリカ」
「あ、ああ、あぁぁあーっ!」

 全身を震わせ、胸を揺らしてシュトリカは絶頂の悲鳴を上げた。それでも言いつけを守っているのだろう。太股に指が食いこむくらいに強い力を使い、股を広げたままだ。そのせいで、宙にいる己にも淫猥な恥部はよく見えた。

「ほう……足は閉じなかったようだな。いい子だ。褒美をやる」

 達した余韻に浸るシュトリカは、荒い呼気をするばかりで返事もしない。

 アーベが一瞬、こちらを目だけで見た。見透かされている――そう思った。シュトリカにしたい全てを理解していると言わんがばかりに、アーベは口元だけをつり上げる。

 そして、ついにその唇を乳房から離し、シュトリカの股間へと近づけていった。

「ああ……蜜だ。お前の甘い香りが、する。達したばかりで濃密な、女の香りだ」
「ふぁああっ!」

 アーベは雌芯を鼻で擦り上げ、秘路から溢れる愛蜜を掬うように舌を使い、全体を啜る。甘い悲鳴を上げるシュトリカは、また登りつめたのだろう。四肢をおののかせ、背筋を反らした。それでもアーベは責め苦をやめない。幾度となく絶頂に達しているというのに。

「も、だめ……ぇ……許し、て……」

 息も絶え絶えなシュトリカの言葉も、意味をなさない。アーベは蜜壺に入れる指を増やし、隘路を掻き分けながら、今度は内部を開いていく。陸に打ち上げられた魚みたいに体を跳ねさせ、何度も訪れる絶頂という波に、シュトリカの顔は完全に蕩けていた。

「……もうそろそろいいだろう。シュトリカ、足を開いてこちらに向け、尻を高く上げろ」

 シュトリカの弛緩しきった体を見てだろうか、アーベはシュトリカを抱き、横向けに倒した。ようやく一息つけたシュトリカは、健気にも命じられるまま気怠そうに動く。

 小ぶりな尻が高く上げられ、唾液と愛液が混ざった雫が、太股を汚しているのを見た。目が、逸らせない。辛そうにしているシュトリカに、何もできない己を悔やみながらも。

 アーベが笑みを浮かべ、赤黒い怒張を秘裂に当てた。そして一気に、腰を突き出す。

「あ、ああぁ――!」

 濡れきった媚肉は、易々と巨悪な男根を受け入れた。甘い悲鳴が響く。アーベは倒れそうになるシュトリカの両腕を引っ張り、後ろに反らしながらも腰を動かすのをやめない。

「入れただけで達したか。だが、まだだ。いくらでもお前を犯してやる。約束だからな」
「あ、あっ、ん、んぅっ……ひぁあっ」
「いいぞシュトリカ。絡みついて離れない最上の肉だ。一突きで持っていかれそうになる」

 肉同士がぶつかる打擲ちょうちゃく音と二人の荒い呼気、鼻にかかった嬌声。軋む寝台の音をかき消し、部屋に響くのは紛れもない情交の証しだ。何度も全身を震わせ、愛液を撒き散らして達するシュトリカに、容赦せずアーベは肉の塊を突き入れ、淫肉の収斂を堪能している。

「善い、と言え。よがり狂った様をもっと見せろ。俺の名を呼んでいくらでも達せ」
「アーベ様、アーベさま、ぁ……っ。いいの……いい、わた、しっ。壊れるぅっ……」

 己の名を呼ばず、狂ったように呪いの化身、その名を叫ぶシュトリカの体を、顔を、エンファニオは空中で見守ることしかできない。蕩けきった彼女のおもてに、頭を掻きむしりたい気持ちになる。

 シュトリカ、ああ、シュトリカ。私だって君を――そう強く願い、アーベをただ憎んだ。

「あ、ああっ、アーベ様、来る、来るっ。わたし、また、あ、ひぁあ……」
「俺も、限界だ。さあ、お前の胎に子種を注ぐぞ。請え、出してくれ、と」
「だ、して……中、にっ。たくさん、下さい、一杯出してぇっ!」
「くぅ……っ」

 腰の打ちつけが速まり、ぶるりと一つ尻を揺らすと、アーベはためらいもなく欲望の果てをシュトリカの中にぶちまけた。

「あ、ああんっ、ああ――っ!」

 シュトリカが一際甘い悲鳴を上げた瞬間、雷鳴が轟き、絶頂の声を消し去った。アーベは、欲の残滓をこれでもかと吐き出すように、肉竿を縮むシュトリカの膣孔に擦りつけると、ようやくその胎内から屹立を抜く。

 すっかり開いた蜜口からは、精液と愛液の混じった液体が零れ落ち、乱れきったシーツに染みを作った。男ならば誰でも興奮するであろう淫靡な光景はしかし、エンファニオにとっては絶望を呼び起こすだけの代物だ。

 惚けるこちらを無視し、アーベは倒れ伏したシュトリカの体を元に戻す。今度は上乗りになり、未だ萎えることのない肉棒を隘路へと突き入れた。

「ひ、あああっ……!」
「今日は徹底的に抱いてやる。お前が気絶しても、その胎に子種を注ぐぞ、シュトリカ」
「んあ、あっ、ああ、あ……」

 ぐちゅぐちゅと蜜肉を掻き回される都度、シュトリカの顔は再び蕩けていく。その瞳に灯るのは快楽の灯火で、虚ろいだ視線はこちらを見ることはない。二人の獣じみた性交は続く。己を無視したまま、いつしか暗雲が晴れても。

 ときに舌を絡め合い、汗を混ぜ、体位を変えて抱きしめ合う二人の姿を見せつけられて、己の中に情欲がこみ上げてくるのがわかった。

 私は彼女から離れた方がいい――そう思い、脱力したまま意識を手放す。眠りに落ちるように闇の中へ落下する最中、それでも浮かぶのはシュトリカの柔らかい微笑みだった。
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