133 / 169
第7章:未来への学びと絆
第217話「灯された信頼の火」
しおりを挟む
研究塔を後にしたエルヴィンとカトリーヌは、塔の外に広がる緑の小径をゆっくりと歩いていた。苔むした石畳には淡い陽光が差し込み、花壇に咲くラナンキュラスが風に揺れている。季節の移ろいを感じさせるその風景は、塔内の緊張感とは対照的だった。
「……ねえ、エルヴィン様。少し、驚きましたわね。」
カトリーヌが静かに口を開く。その横顔には、まだどこか複雑な思いが残っている。
「うん。まさか研究塔が、王宮の魔道炉とそんな形で繋がっていたなんて……。正直、想像してなかった。」
エルヴィン・シュトラウスは、そっと手を胸元に当てながら、塔の高い天辺を見上げた。
「でも、主任さん……いや、あの人の言葉には、ちゃんとした想いがあった気がする。ただ秘密を話したかったんじゃなくて、僕たちに未来を託したかったんじゃないかな。」
「ふふ、確かに。途中からずいぶん饒舌になられていましたものね。」
カトリーヌは、さりげなくエルヴィンを覗き込む。
「けれど、“期待している”なんて言葉を向けられると……責任が重いですわ。」
「それでも、僕たちが選んだ道だから。」
エルヴィンはにこりと笑った。
「魔力を“誰かのもの”から“みんなのもの”にする。それが僕たちの目標だし……それに、こうやって仲間がいてくれるから、きっとできると思ってる。」
その言葉に、カトリーヌは柔らかな笑みを浮かべる。
「……ええ、私も信じておりますわ。貴方と、皆となら。」
そこへ――
「おーい、エルヴィンーっ!」
少し離れた場所からレオンの声が響いた。彼の後ろから、リヴィアも落ち着いた足取りで近づいてくる。
「ようやく終わったみたいだなー。こっちは魔力測定室で装置の確認してたけど、そっちはどうだった?」
「お疲れさまでした。二人とも。こちらも、一応の話は終わったわ。」
カトリーヌがにっこりと微笑む。
「へぇ? ってことは、主任の話も聞いたんだな。」
レオンは肩を回しながら近づいてきて、塔を振り返る。
「……すごいよな、あの規模の魔道炉。あんなの、そうそう見られるもんじゃねぇ。」
「内部構造はとても精密でした。王宮の供給線と繋がっていたのも……記録に残しておきます。」
リヴィアは控えめに頷きながら、すでに手帳に何かを書き込んでいる。
「うん。今回のことは、僕たちにとって大きな意味がある。技術的にも、信頼の面でもね。」
エルヴィンがそう締めくくると、一同は自然と歩き出した。
「それで、次はどこ行くんだ? まだ旧市街の件も残ってるよな?」
レオンの問いかけに、エルヴィンは真っ直ぐ前を見つめながら答える。
「そう。旧市街は特に魔力供給が不安定って聞いてるから、まずは現地調査から始めよう。」
「準備が整い次第、私たちで向かいましょう。古い魔力設備の記録も確認しておきますわ。」
「はい。現地の方の声も、ちゃんと聞かないといけませんね。」
夕刻の陽が傾く道を、四人の足音が並んで響く。
それはただの実験や研究ではない、王都全体を巻き込んだ、新しい未来のための一歩だった。
「……ねえ、エルヴィン様。少し、驚きましたわね。」
カトリーヌが静かに口を開く。その横顔には、まだどこか複雑な思いが残っている。
「うん。まさか研究塔が、王宮の魔道炉とそんな形で繋がっていたなんて……。正直、想像してなかった。」
エルヴィン・シュトラウスは、そっと手を胸元に当てながら、塔の高い天辺を見上げた。
「でも、主任さん……いや、あの人の言葉には、ちゃんとした想いがあった気がする。ただ秘密を話したかったんじゃなくて、僕たちに未来を託したかったんじゃないかな。」
「ふふ、確かに。途中からずいぶん饒舌になられていましたものね。」
カトリーヌは、さりげなくエルヴィンを覗き込む。
「けれど、“期待している”なんて言葉を向けられると……責任が重いですわ。」
「それでも、僕たちが選んだ道だから。」
エルヴィンはにこりと笑った。
「魔力を“誰かのもの”から“みんなのもの”にする。それが僕たちの目標だし……それに、こうやって仲間がいてくれるから、きっとできると思ってる。」
その言葉に、カトリーヌは柔らかな笑みを浮かべる。
「……ええ、私も信じておりますわ。貴方と、皆となら。」
そこへ――
「おーい、エルヴィンーっ!」
少し離れた場所からレオンの声が響いた。彼の後ろから、リヴィアも落ち着いた足取りで近づいてくる。
「ようやく終わったみたいだなー。こっちは魔力測定室で装置の確認してたけど、そっちはどうだった?」
「お疲れさまでした。二人とも。こちらも、一応の話は終わったわ。」
カトリーヌがにっこりと微笑む。
「へぇ? ってことは、主任の話も聞いたんだな。」
レオンは肩を回しながら近づいてきて、塔を振り返る。
「……すごいよな、あの規模の魔道炉。あんなの、そうそう見られるもんじゃねぇ。」
「内部構造はとても精密でした。王宮の供給線と繋がっていたのも……記録に残しておきます。」
リヴィアは控えめに頷きながら、すでに手帳に何かを書き込んでいる。
「うん。今回のことは、僕たちにとって大きな意味がある。技術的にも、信頼の面でもね。」
エルヴィンがそう締めくくると、一同は自然と歩き出した。
「それで、次はどこ行くんだ? まだ旧市街の件も残ってるよな?」
レオンの問いかけに、エルヴィンは真っ直ぐ前を見つめながら答える。
「そう。旧市街は特に魔力供給が不安定って聞いてるから、まずは現地調査から始めよう。」
「準備が整い次第、私たちで向かいましょう。古い魔力設備の記録も確認しておきますわ。」
「はい。現地の方の声も、ちゃんと聞かないといけませんね。」
夕刻の陽が傾く道を、四人の足音が並んで響く。
それはただの実験や研究ではない、王都全体を巻き込んだ、新しい未来のための一歩だった。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。