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4章

恋煩い(環奈視点)

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ー水城環奈視点ー


その日自宅でフルートの自主練習をしていると、美咲ちゃんから連絡が入りました。

今日はチーちゃんと美咲ちゃんと狩人モンスターで遊ぶことになっています。

この二人は私の数少ないゲーム仲間で、今日は私のアカウントが戻った記念と美咲ちゃんが見つけたという珍しいダンジョンを攻略するために狩りに行くことになっていました。

美咲ちゃんのメッセージは簡潔なものでした。
『今日3人予定だったけど、もう一人連れて行くことになったからよろしく(*´∀`*)』

時々美咲ちゃんは急にこういうことを言ってきたりします。
以前もどこで知り合ったのか読者モデルをしているという男性を狩りのパーティに誘ってきたことがあります。美咲ちゃんの交友関係は謎が多く、とても広いので誰を連れてくるつもりなのかは想像ができません。

ただ、私はこの話を聞いたときにすぐに村井くんのことが頭をよぎりました。
美咲ちゃんは村井君とほとんど話をしたことがないという事だったので違う人だというのはわかってはいます。
わかってはいるのですが、彼も狩人モンスターをしているなと、どうしてもふと彼のことを考え、彼の顔が脳裏に浮かびます。


そして彼の顔を思い出すと今でも胸がドキドキして仕方がありません。

我ながらとても単純だとは思うのですが、彼に助けてもらって彼の笑顔を見た時から私は恋をしてしまったみたいです。

あの笑顔は本当に反則でした。

もしかしたら吊橋効果というものなのかもと思って時間をおいてみましたが、今でもふとした瞬間に彼のことを考えてドキドキしてしまいます。もうこれは確定的でした。

しかし、助けてもらったその日に連絡先を渡してみましたが、彼から連絡が来たのは狩人モンスターで垢BANされたという1度きり。それも私のせいで迷惑をかけてしまって、その後はただただ合わす顔が無くなってしまいました…。

そして、せめて何かしらお詫びとお礼をしたいと彼に言ってみましたが、「いらないです。それと注目されるのでできれば教室には来ないでほしいです」と言われてしまいました…。

その時の冷たい彼の言葉は拒絶されているみたいでとても悲しかったです。

また、彼のことをはっきりと意識するようになって気が付きましたが、どうも彼は私のことをあまりよく思っていない様でした。
飯塚君の処遇を聞かされる時、彼に久しぶりに会いましたがどうにも私との接触を最低限にしたいと思っていることがわかってしまい、さらに悲しくなりました。

でも、今までの事を振り返って考えると当然です。私は初めて会った時からナンパの人、覗きの人と彼は何もしていないのに疑ってかかってしまいました。彼からしたら面倒な人だと思われていてもおかしくありません。

あの時の私に戻れるなら、絶対にそんなことしないのに…私の馬鹿!!

それからはため息が出る日が続きました。
皆、飯塚くんに怖い目に遭わされたせいで精神的に不調になってしまったようだと誤解していましたが、それは違います。
あえて否定しませんでしたが、単に私は村井くんのことを考えてしまい、今のうまくいっていない現状にため息が出るようになってしまっていただけでした。

普通の恋であればもっと甘酸っぱい思いになっていたのかもしれませんが、彼には迷惑をかけ通しだったため、私の恋は最初からただ心苦しいだけでした。正直恋というものがここまで苦しくなるものだとは思ってもいませんでした。

唯一この状態になって良かったこととしては、村井君の事で頭が一杯で飯塚君のことは全く考えず済んだことくらいです。あの人のことは思い出したくもありません。


どうやったら彼との距離を縮めることができるか…最近の私はそんなことばかり考えていました。


★★★★★

夜になり、約束の時間になったので狩人モンスターにログインしてみるとそこにはすでに美咲ちゃんと彼女が連れてきた人がパーティに入っていました。

えっと…Yu-10さん?

【MiKan:遅くなって、すみません。よろしくお願いします。…Yu-10さんですか?初めまして。今日はお願いしますね。】

【Yu-10:MiKanさん初めまして。こちらこそ今日はお願いしますね。】

良かった。このあいだ美咲ちゃんが連れてきた人と違って馴れ馴れしそうじゃない。今回はしっかりした人そうで少しホッとしました。


【PrettyCut:初めましてwww 】
美咲ちゃんが変なチャットをしてきます。

【MiKan:???】
【PrettyCut:初めましてじゃないよ。(→ヒント:名前)】

…Yu-10?ゆーじゅう、ゆーとう、ゆーと、まさか村井優斗くん!?

【MiKan:え?もしかして村井君!??】
【PrettyCut:大正解ψ(`∇´)ψ】

なんでですか!
だって美咲ちゃん彼とは交流がないって言ってたじゃないですか!?

私は大層驚いてしまい、ネット上についつい彼の本名を挙げてしまい、そこでまた彼に呆れられてしまいました…。

どうして私はこう…。
またため息が出てきてしまいます。
彼の前では失敗ばかり見せてしまって自己嫌悪しかありません。

きっと彼の中の私のイメージは地を這うような低評価がついていることでしょう…。
本当に、もっと私のイメージを向上させていきたいです…。

そんなふうに美咲ちゃんには驚かされましたが、もっと驚いたのがいつの間にやら美咲ちゃんが村井君の1ineのアドレスも教えてもらっていたことです。

私も教えてもらってないのに…。
少し凹みましたが、美咲ちゃんは私にも教えてくれるようで、おかげで私は念願の彼の1ineを知ることができました。

今の私には彼と連絡する手段がなく、どうやって彼に近づくか頭を悩ませていました。
正直彼に直接聞きに行ったら、嫌な顔をされる想像しかできなかったのでこれは本当にありがたかったです。

ここからです!
ここから私のイメージを払拭してみせます!

ようやく私の印象挽回作戦が始まろうとしていました。
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