転生ニートは迷宮王

三黒

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第5章

126 再び街へ

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 結局スーツ姿のまま朝を迎えたが、なんつーか……妙な圧迫感がある。動きづらいってのもあるだろうが、まず着る機会もほとんどなかったからな。着慣れてないどころの騒ぎじゃない。
 既に若干後悔してるが、言い出しっぺの俺が着ていかないわけにもいくまい。
 
「……っし、行くか」
 
 壁に立てかけてある邪竜剣と紅蓮刀を背負い、扉を開ける。改良で最大限の軽量化はしてあるが、それでも少し重いな。
 だが二刀はロマンだ。実際には片方ずつしか使えないとしても、だ。貴様ごとき一本で十分……なんてね。
 
「! マスター」 
「レルア、おはよう」
 
 部屋を出たところでレルアに会った。このオッドアイに見つめられると、未だに鼓動が早くなる気がする。なんかいい匂いするし。思春期男子の初恋か。
 反射的におはようって言ったが多分レルアも寝てないよな。まあ朝の挨拶だし寝てなくてもいいか。
 てか、そもそもこの迷宮で寝てるやついな……いやリフィストはよく寝てる。菓子食って寝てる。あのニートめ。
  
「おはようございます。出発ですか?」
「ああ、そろそろ時間だしな」
「記憶は消しましたが、一度はマスターを殺そうとした者たちです。くれぐれもお気を付けて」
「そうするよ。ヤバそうならすぐ逃げてくる――んじゃ、留守は頼んだ」 
「お任せください」 
 
 レルアは地上に何か用があったのか、転移門ゲートを踏んで転移していった。二人が来るまで暇だな。
 
 ……あ、そういやルドゥードのおっさんまだシレンシアか。ここに来てないってことは多分そうだろ。
 なんか差し入れでもするかね。少し前に、狭い範囲の時空間凍結ができるようになった――といってもそう大層なものではないが――から、屋台の料理とか持ってくのはアリだな。
 丁度こういうときにしか使えない魔術なんだよ。大体30センチ四方くらいの時空間を凍結するだけで、魔力を全部持ってかれる。
 要は、タッパー数個分の中身をホカホカのまま持ち運ぶ分にはもってこいの魔術ってことだ。ホカホカどころかサクサク感もそのまま。折角だしフライドポテトを持っていこう。
 サイズ的にもう一つくらいいけるな。こっちになさそうなものを持っていきたい。
 小麦粉に似たものはあるし、粉ものとかはやめておこう。焼きそばも若干ルドゥードっぽいしつまらん。かといって綿飴りんご飴ってのもなんだかな。
 そうだ、最近追加したフランクフルトにするか。肉は肉でも、こっちとは根本的に種類が違う。腸詰めなんてのもなさそうだし、ここでしか食えない料理の一つとして探索者にも割と好評だ。
 最初は使い捨ての木串に驚いたやつも多かったが、皆すぐに慣れてくれた。ちなみにポイ捨ては罰金5万エル、払えなければブラックリスト入りで迷宮&迷宮街出禁だ。ゴミ箱は色々なとこに設置してあるからちゃんと捨てろ。だが街のゴミ箱も例の謎空間に繋がってるから、間違って大切なものとか捨てないように注意してほしい。俺でも探せない。
 
「……マスター」
「おおアイラ! おはよう、早かったな」
「ん……そうでもない」 
 
 時計に目をやると、まだ七時半を少し過ぎたところだった。そうでもなくない。十分じゅうぶんに早い。
 アイラは俺の向かいに座って、短剣の手入れを始めた。
 
「あれ、槍はいいのか?」 
「目立つし……どうせ、役に立たない……から」
 
 役に立たない? 実力の話じゃないことは間違いないし、単純に城内で槍を振るうのが難しいとかか。
 にしてもスーツ姿のアイラ、カッコよすぎる。めっちゃキマってるし俺より似合ってる。銃とか小型マイクとか持たせたい。
 
「カインはまだ来なそうだし、ちょっと待っといてくれるか」
「……うん」 

 今のうちに屋台に寄っとくか、と考えかけて気付いたが、あれはDPの処理を自動化してるだけだ。別に揚げたり焼いたり捏ねたり炒めたりしてるわけではなく、最初から完成品を仕入れて売っている。
 だからここで買っちまってもいいわけだ。早速購入ページに移動、と。
 
『フライドポテト:30DP』
『フランクフルト:40DP』  
 
 ちょっとぼったくりな感じはあるが、調理済みだし仕方ない。てかぼったくられても安い。
 ……っと、タッパーも買わないとな。
 
『タッパー:10DP』
 
 こいつは100均で十分。二つで20DP。
 見た感じサイズも問題なさそうなので、パパっと料理を中に入れる。で、封をして――
 
「――止界テルメス
 
 これで良し。魔法のタッパーの出来上がりってわけだ。
 このサイズ二つなら、大体六割くらいの魔力で足りるらしい。つまりもう一ついけるってことだが、まあ欲張るのはやめておく。
 この魔術の効果は開封するまで永続だ。解呪ディスペルは試したことない。ただ外部から術をかけたわけだし、多分ダメになるんだろうな。
 
「よォマスターァ! なんかいい匂いすんじゃねェか!」
 
 カインがリビングに入ってきた。思ってたより早いな。
 それに、スーツの着こなしも及第点だ。崩して着てこないあたり、やっぱり真面目になったっつーか。
 
「ようカイン。それは開けるなよ、街にいる知り合いへの差し入れ用だ」
「なァ!? じゃあもう一個出してくれよォ、いいだろ?」
「自分のエルで買え……と思ったが、まあいい。特別だぞ」  
「やったぜェ! マスターァ、アンタは最高だァ!」 
 
 まあ特別任務みたいなもんだし、追加手当を出してもいいだろ。レイ戦ほどではないが、これも重要な役割だしな。

「アイラも食うか?」
「ううん……私は、いい」
「そうか。帰ってきてからでも、なんか欲しくなったら言ってくれよ」   
「……うん」
 
 カインだけにってのも不公平だしな。つってもアイラは何か物を欲しがるタイプじゃないし、一応給料的なイメージで渡してるエルもほぼ使ってない印象だ。倹約家というかなんというか、もう少し贅沢してくれていいんだが。
 
「ああ美味かったァ、やっぱマスターの世界の料理は美味ェなァ」
「こっちの料理も美味いと思うぞ。まあ口に合ったんなら何よりだ」
 
 さて、と。ジャンクな朝飯も済んだところでそろそろ出発といくか。
 流石に早すぎる気がするし、先にルドゥードのおっさんに会うことにしよう。まだ店にいなかったらそれはそのときだ。
 
「よし、出発するぞ」
「おうよォ! 準備はできてんぜェ!」 
「……わかった」
 
 転移門ゲートを踏んで地上に出ると、雲一つない青空が広がっていた。いい天気だ。
 
「俺の腕にしっかり掴まっといてくれ。じゃあ行くぜ――転移ラムルト!」
 
 
 

 
 
 
「おォ、懐かしい街だァ」
「……ん」

 今回も人気ひとけのない裏路地に出た。隠れる必要がないメンツではあるが、転移の様子を見られても面倒だしな。
 
「先に知り合いに会いに行こうと思う。とりあえず大通りに出たいが……二人とも道は分かるか?」
 
 この前はレルアに案内してもらったんだった。
 
「ンなもんテキトーに進んでりゃ……」
「こっち」
 
 アイラが歩き始めた。
 
「……ついてきて」
「こんな場所の道わかんのかよォ? オレァ向こうの方が怪しいと思うんだがなァ」
「……地図は頭に入ってる。貧民街の方まで、全部」 
 
 おおマジか。すげえ。
 
「あァ? 前々から疑問に思ってたがよォ……アイラお前何者だァ?」
「……ただの冒険者。それより早く。……マスターも。ここは、一般人が歩くような場所じゃない」
「ああ、悪い。助かる」
 
 軽く頷き、再び先頭を歩き始めるアイラ。カインに言われて気付いたが、俺もアイラが何者なのか知らない。
 ただの冒険者というには強すぎるし、そもそも全体的にスペックが高すぎる。
 ……まあ話したくないならわざわざ聞かないが、ちょっと、いやかなり気になってきたな。そのうち聞いてみるか。
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