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1章:癒しを求めたはずが

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 結局世界を渡る理由は良く分からん、で決定らしいけど…じゃあ…

「その、元の世界に戻れるというのは、何故なんです?」
「それに関しては少々言い難い事があって…」

 と、口ごもるキルギスさんだけど…
 なんかいい香りして来たんだけど。お肉の焼ける匂い…薪で隠されて見えないのはなんでなんだ。

「元々人道的にどうなのかという話は、もちろんあったんだが」

 煙が出るとかそういうのがないから、直火で焼いてる訳じゃないのかな。暗い話なんだろうけどそっちが気になってしまう。

「こちらに来た人達が、何かしらに秀でている率が高くてな。囲い込みが激しく…それだけではなく召喚魔法を創ってしまったんだが…」

 召喚…ソッチの方が問題ありそうなんだけど。続けられた言葉は、被害が甚大で。といって困ったように笑う。どんな被害よ…

「…そうだな、召喚で呼び出したはいいが、発狂して魔力暴走を起こして、中くらいの街一つ分、消え去ってしまったんだ」

 …うわぁ…消えたってどういう事だろう。爆発とかそういう?想像つかない…

「しかも王城が中心だった物だから、国が立ち行かなくなってな。何とか遠縁の王族を王に据えたりしたものの、運営なぞ上手くいくはずもないだろう?」

 確かに。そういう運営とかする人は城にいるだろうし…多少は出かけてたりとかで難を逃れられるとしても、少人数じゃ回らないよね。あ。でも派出所じゃないけど、どこかに分散…

「領地運営をしていた者なんかも招集したようだが…領地運営はどうなるんだとなって、上手く行かなかったそうだ」
「そうなんですね…」

 なので、近隣国に少しずつ吸収されてなんとかしたらしい。とはいえ戦争なんかもしょっちゅうあって、国が出来たり消えたりなんかもよくあるとかで、国民は意外と気にせず強かに生活していたそうな。
 ちょっと悲しい。

「まあ、他にも環境に慣れなくて体調を崩す者もいたらしいしね。なのでね…まず初めに私達が所属する機関が出来上がり、そういった強引な召喚や囲い込みがない様に保護しつつ、召喚魔法の研究を重ねて、送り返す魔法が出来上がったんだ」

 かなり長い年月掛かってるらしい。なんと300年程。召喚魔法は簡単…でもないけど、元々何もしなくてもこの世界へ来る事もあってなのかすんなりと出来たらしい。
 でも、送還魔法は安全性を考えに考えた為に時間が掛かったのだとか。

「もし希望するなら、自由に行き来出来たりするんだが…」
「え、出来るんですか」
「ああ。だから…元の世界の物を持ってこられるとなると、貴女をめぐって戦争…まで行かなくとも、囲い込みは必須だろう」
「え、でもほら機関が…」

 そう、機関があるなら大丈夫でしょ?と言えば、無言でパンを差し出された。うん、さっきから良い香りがしてた正体のお肉が挟まれたパンですね。いただきます。

「一応、強引な囲い込みはない、が…強引でなければ可能なのだよ」
「え…」
「街…まあ、どこでもいいんだが、偶然を装ってぶつかるとか、ひとめぼれしたのだとか、まあ色々と」

 アニメなんかでよくある朝曲がり角でぶつかってロマンスが始まるアレか!?え、そんな手使うの!?
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