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守る方法は(ヒロイン55と連動)
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「これは傍に置いておきますよ」
「…はい」
座ったネルア嬢に満足して、一つ頷く。そうして、レイを背後に立たせて、私はネルア嬢ご希望の【遠く】へと行く。対角に木があるのでそちらでいいでしょうかね。
そちらへと歩いて少しすると、執事がくく…と、笑う。なんだと視線を向ければ、悪い笑みをしてみせる。
「筆頭があのマントの上にネルア様を座らせたら最後、抱きつぶしそうなんですが」
「…ああ、ありえますね。どうせ結婚式したらそのまま籠る場合もありますし、本当にご褒美になりそうですね」
結婚式では、ルーヴェリア様にいただいたあのマントをつけるでしょう。何か武勲や褒美等の褒章があれば、そういう物をつけるものですしね。筆頭しかつける事が許されない物ですので。
ああ、あの青の上であのチョコレート色が、あの白い身体が、狂うのは…とても良さそうです。
「ルーヴェリア様に、寝具の色に使わせてもらえばいいんじゃないですか?」
と、そんな情景を想像していると、執事にそう言われますが…流石に寝具は…
「そんなあからさまな物には使わせてもらえないかと思いますよ」
「アホの子ですが、そこら辺は分かるんですね…」
「いやに勘が鋭い時がありますし…王太子様の為に馬鹿を演じているのかと疑った時もありますが…素なんですよねぇ…なんなんですかね、あれ」
そう言って、執事と二人で唸ってしまう。まあ、だからなのか、王太子様はばかわいいと楽しんでますし、仲が良くていいんですけれどね。木へとついて、私は木に背中を預け、右足裏を木の幹に付ける。左手は、剣の柄に乗せる様にしつつ、木の幹に鞘が当たらない様に調整しています。
ああ、ネルア嬢の読み聞かせ?しっかり聞こえてますよ。
『娘は毎日の日課であるイチゴを摘みに、街の外に出ました』
『そこで、なんということでしょう。森一番の凶悪なオオカミに出会ってしまったのです』
…街の外に限らず、悪いやつというのはどこにでもいるというのにね。かわいそうに。王城で、私に見つかってしまったネルア嬢はどうなるのやら。
と、かわいらしい声に集中していると、男の子…というには大きいですが、一人こちらへとくる。
「読み聞かせはいいのですか?」
「…おれ、守りたい人がいるんだ。だから、どうしても剣を教えて欲しくて」
と、そう言ったのは…先ほど何のためにこの剣があるのかと問うて来た子ですね。あれだけ言ってもまだわからない、と。そもそも。
「その守りたい子、というのは、常に狙われるような子なのですか?」
「え…そんな事は、ないと思うけど」
「それなら、守る手段は剣以外にもあるのでは?」
そう。何も守る手段などいくらでもある。地位であったり、稼ぎであったり。我が君の場合は、そうしなければ生きられなかっただけの事。まあ…我が君の補佐になれなければなりませんから、学も得ましたが。
「でも、第二王子様だって」
「我が君と、お前で、持っているものが違いますが」
王族と平民、そして、お気楽そうにしている我が君が、常に命を狙われているという事実。
「何を勘違いしているのかわかりませんが…剣は、守る物ではなく、命を奪う物ですよ?その覚悟があるならどうぞ?」
「え…でも」
「一応は、切りかかって来た剣を払ったりしますので、ええ、守る、というのも正しい。ですが…ずっとそれだけで、相手が諦めてくれると?こちらの体力は?」
「え…」
「分かりやすくいいましょう。例えば、貴方の守りたい方がいて、暴漢に襲われたとしましょう。相手も死に物狂いで来ている場合、無事に切り抜けるには、武器を握れない様に腕を落とすか、追いかけて来れないように、足を落とすかです。できます?」
「………」
「もう一ついえば、一対一で来てくれるなんて、賊などではしてくれるはずもありませんし、一番楽なのは命を奪う事です。その覚悟がないのであれば、剣など握らぬほうがいいですよ」
ああ、ネルア嬢のお話も佳境ですね。
「騎士様、は、その覚悟が、あるっていうのか」
「覚悟など、とうの昔に捨てて来ましたねぇ…」
「え…」
覚悟を決める前に、必要に駆られましたからね。意外と問題なかったのは、元々の性格なのか、血が呪われてしまっていたのか。魔力なしにつく者は、結構苛烈だったらしいので。
「我が君の敵や憂いは、滅ぼしますよ。当然でしょう?」
「な…」
「筆頭、子供には酷なのでは」
「酷…ああ、そういえばそうなのでしたっけ。わたくし、大切な物以外は、どうでもいいので。」
「それじゃあネルア様はっ」
「大切ですよ?ああ、終わりましたね」
可愛らしい読み聞かせが終わったので、話を切り上げてネルア嬢の方へと足を踏み出せば。
「っ、覚悟はする!だから教え、」
「私共に教えて欲しくば、すぐさま死んで、我が一族へ生まれ直してきなさい」
「え…」
そもそも、うちの技術が外へ流れては困りますし…命令系統のこのラインの事もありますしね。優しく言っているうちに諦めてくれればいい物を。
「骨はありそうでしたな」
「それだけでは足りないと分かっているでしょう?」
「そうですな」
さて、あの子供は一体だれを守りたかったんでしょうねぇ。
「…はい」
座ったネルア嬢に満足して、一つ頷く。そうして、レイを背後に立たせて、私はネルア嬢ご希望の【遠く】へと行く。対角に木があるのでそちらでいいでしょうかね。
そちらへと歩いて少しすると、執事がくく…と、笑う。なんだと視線を向ければ、悪い笑みをしてみせる。
「筆頭があのマントの上にネルア様を座らせたら最後、抱きつぶしそうなんですが」
「…ああ、ありえますね。どうせ結婚式したらそのまま籠る場合もありますし、本当にご褒美になりそうですね」
結婚式では、ルーヴェリア様にいただいたあのマントをつけるでしょう。何か武勲や褒美等の褒章があれば、そういう物をつけるものですしね。筆頭しかつける事が許されない物ですので。
ああ、あの青の上であのチョコレート色が、あの白い身体が、狂うのは…とても良さそうです。
「ルーヴェリア様に、寝具の色に使わせてもらえばいいんじゃないですか?」
と、そんな情景を想像していると、執事にそう言われますが…流石に寝具は…
「そんなあからさまな物には使わせてもらえないかと思いますよ」
「アホの子ですが、そこら辺は分かるんですね…」
「いやに勘が鋭い時がありますし…王太子様の為に馬鹿を演じているのかと疑った時もありますが…素なんですよねぇ…なんなんですかね、あれ」
そう言って、執事と二人で唸ってしまう。まあ、だからなのか、王太子様はばかわいいと楽しんでますし、仲が良くていいんですけれどね。木へとついて、私は木に背中を預け、右足裏を木の幹に付ける。左手は、剣の柄に乗せる様にしつつ、木の幹に鞘が当たらない様に調整しています。
ああ、ネルア嬢の読み聞かせ?しっかり聞こえてますよ。
『娘は毎日の日課であるイチゴを摘みに、街の外に出ました』
『そこで、なんということでしょう。森一番の凶悪なオオカミに出会ってしまったのです』
…街の外に限らず、悪いやつというのはどこにでもいるというのにね。かわいそうに。王城で、私に見つかってしまったネルア嬢はどうなるのやら。
と、かわいらしい声に集中していると、男の子…というには大きいですが、一人こちらへとくる。
「読み聞かせはいいのですか?」
「…おれ、守りたい人がいるんだ。だから、どうしても剣を教えて欲しくて」
と、そう言ったのは…先ほど何のためにこの剣があるのかと問うて来た子ですね。あれだけ言ってもまだわからない、と。そもそも。
「その守りたい子、というのは、常に狙われるような子なのですか?」
「え…そんな事は、ないと思うけど」
「それなら、守る手段は剣以外にもあるのでは?」
そう。何も守る手段などいくらでもある。地位であったり、稼ぎであったり。我が君の場合は、そうしなければ生きられなかっただけの事。まあ…我が君の補佐になれなければなりませんから、学も得ましたが。
「でも、第二王子様だって」
「我が君と、お前で、持っているものが違いますが」
王族と平民、そして、お気楽そうにしている我が君が、常に命を狙われているという事実。
「何を勘違いしているのかわかりませんが…剣は、守る物ではなく、命を奪う物ですよ?その覚悟があるならどうぞ?」
「え…でも」
「一応は、切りかかって来た剣を払ったりしますので、ええ、守る、というのも正しい。ですが…ずっとそれだけで、相手が諦めてくれると?こちらの体力は?」
「え…」
「分かりやすくいいましょう。例えば、貴方の守りたい方がいて、暴漢に襲われたとしましょう。相手も死に物狂いで来ている場合、無事に切り抜けるには、武器を握れない様に腕を落とすか、追いかけて来れないように、足を落とすかです。できます?」
「………」
「もう一ついえば、一対一で来てくれるなんて、賊などではしてくれるはずもありませんし、一番楽なのは命を奪う事です。その覚悟がないのであれば、剣など握らぬほうがいいですよ」
ああ、ネルア嬢のお話も佳境ですね。
「騎士様、は、その覚悟が、あるっていうのか」
「覚悟など、とうの昔に捨てて来ましたねぇ…」
「え…」
覚悟を決める前に、必要に駆られましたからね。意外と問題なかったのは、元々の性格なのか、血が呪われてしまっていたのか。魔力なしにつく者は、結構苛烈だったらしいので。
「我が君の敵や憂いは、滅ぼしますよ。当然でしょう?」
「な…」
「筆頭、子供には酷なのでは」
「酷…ああ、そういえばそうなのでしたっけ。わたくし、大切な物以外は、どうでもいいので。」
「それじゃあネルア様はっ」
「大切ですよ?ああ、終わりましたね」
可愛らしい読み聞かせが終わったので、話を切り上げてネルア嬢の方へと足を踏み出せば。
「っ、覚悟はする!だから教え、」
「私共に教えて欲しくば、すぐさま死んで、我が一族へ生まれ直してきなさい」
「え…」
そもそも、うちの技術が外へ流れては困りますし…命令系統のこのラインの事もありますしね。優しく言っているうちに諦めてくれればいい物を。
「骨はありそうでしたな」
「それだけでは足りないと分かっているでしょう?」
「そうですな」
さて、あの子供は一体だれを守りたかったんでしょうねぇ。
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