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18:ヒーロー側時間軸【色々と準備にとりかかろうかと】

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 馬車に乗り込んで、タウンハウスまで送られたけれど、特に話すでもなく…でも、ラクシュ様は楽しそうに笑って私をずっと見てるし。恥ずかしくて、俯いているしかできなかった。
 しかも、タウンハウスについたら、手を取られて指先にキスされたし!しかも、結構長い時間…!普通、こう、ちゅっと一瞬だけして手を離すはず、なのに!唇の感触とか、体温とかまでしっかり感じ取ったわよ!…そういえば息…は、感じられなかったけれど…外だったからかしら。

「…お茶を、用意してくださる?」
「かしこまりました」

 メイドがにやにやしているのが嫌で、そう頼んだ。馬車留めに着いた時にはいなかったのに、ようやく離されて、ラクシュ様が挨拶をして馬車を少し見送ったのだけれど…さて、屋敷に入るかと振り返ったらいたのよ…少し離れたところだったけれどね。もう、笑うの堪えてるというか、そんな顔。

「それで、どこまで行ったんですか~」

 お茶を入れたメイドは、お茶を口にしてカップをテーブルへと置くなりそう言った。どこまでってあなたね…

「どこまで、と言われましても…結婚のお祝い品を選んで、昼食をご一緒した後、公園に寄っただけですわよ」
「まあ、公園!それで、公園でどんな事をお話に?」
「…王都に住めばいいとおっしゃられてたわ」
「王都にですか?」
「ええ…ほら、王都では魔術、使えないでしょう?」

 そこまで言って、ある意味不敬罪になりかねない事を話してしまった事を思い出してしまった。筆頭護衛騎士だけれど、第二王子様を良く思ってないのかしら。そういう、風ではなかったけれど…

「確かに魔術は使えませんけれど、どうしてそんな話に?」
「その、初めての顔合わせの時に、魔力がない事と、ケニアを紹介しようとしたの」
「ええ…?」
「ケニアが、ほら、ね…」

 そう言葉を濁して言うと、ああ。と納得してもらえた。一応、ほら、昨日電撃結婚した妹の、誰とでも婚約したがるというか、そういう所を言ってしまうのは憚れるので。

「それでそんな話になったのですねぇ。でも、確かに言われてみればそうですよね。どうなんですか?お嬢様としては」
「確かにそうなのですけれど…でも皆やっぱり根底に魔力のあるなしを考えてしまうものだと思いますし」

 以前、全く気にしないとおっしゃられていたけれど…でも、本当に?第二王子様についてらっしゃるラクシュ様に、聞こえないようにしているだけでは…と、そう考えてしまう。考えすぎかしら。

「それで、他には?」
「他…そうね、もし王都に住むのであれば、お城のメイドを紹介すると言われたわ」
「メイド、ですか?お嬢様が?」
「その、お城のメイドと言っても、その、貴方達の様なものではないのだとおもいますわ。貴族の女性が行儀見習いとして、とおっしゃっていたもの」

 私はまだ、日本での生活の記憶があるから、掃除洗濯はなんとかなるけれど、本当の貴族の子なら、掃除洗濯なんて出来る気がしないもの。
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