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ふしぎなたまご
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霧がかったかのように真っ白の景色。
周りをキョロキョロと見渡すが見たことのない風景だった。
「こ、ここはどこ?」
私の顔に不安の色が映る。肩より長い栗色のウェーブがかった髪がふわりと揺れ、茶色の目に影が宿る。
不安でその場に縮こまっていると目の前に光り輝く1つの卵がゆっくりとした速度で落ちてくる。
ゆっくりと顔を上げてその卵を眺める。
真っ白な卵。しかし、その卵は必死に手を伸ばしても届かない位置で止まってしまう。
自分の背が低いことを恨みつつ、なんとか指に触れようと手を伸ばしながらぴょんぴょんと跳ねる。
そして、自分の中で最高のジャンプができた。ようやく触れられると思った時に視界が暗転する。
◇
「いったーーー!」
私はいきなり現れた痛みに何が起きたのかわからないまま、少し涙目になりながらも頭を押さえ、ぴょんぴょんとその場で跳ねる。
そして、その痛みが治まってきた時に何があったのか探ってみる。
すぐそばに小さな、私の身長にぴったりの木製ベッドが置かれている。その上の布団は乱れており、触ってみるとほんのりと温かさが残っている。
「はぁ……」
私は大きくため息を吐いた。おそらく、寝ていた時にベッドから落ちてしまい、そこで頭をぶつけたのだろう。
窓の外を見るとうっすらと明るくなってきていた。
今からもう1度寝てしまうと寝坊してしまう。それに頭をぶつけたせいで目がすっかり冴えてしまっていた。
仕方ないので寝間着を脱ぐと布のワンピースに着替える。
起伏の少ない体なのですっと着ることができる。
……!? せ、成長期なんだからね。まだまだこれから大きくなるんだから。
誰かに言うわけでもないのに、必死に頭の中で言い訳をしてしまう。
言い終わってから顔を真っ赤にして俯いてしまう。そして、もう1度大きなため息を吐く。
「はぁ……」
どうして私はこんななんだろう? 村の同じ年の子はもう背も高く、女性らしい見た目なのに、どうして?
もう十五歳にもなろうかという年なのに一向に大きくならない私の体。
一度どこかおかしいのかと村のお医者さんに見てもらったことがあるけれど、体はどこもおかしくなく、発育が少し遅いだけと言われてしまった。
顔をにやけさせてなめ回すように見ていたお医者さんのお姉さん。
特に何もおかしくないのにほかにもやたら親切に調べてくれたが、それでもやはり異常はなし。
また何かあったらすぐに来ていいわよ。と息を荒げながら言ってくれていた。
すごく親切なお姉さんだけど、身の危険を感じたのはどうしてだろう?
グツグツと釜に火を焚いて、お湯を沸かす。そして、幾つかの野菜と商人から購入した『簡単! スープの素』を加えてグルグルとかき混ぜる。
このスープの素は町の調合師様が幾つかの素材を混ぜ合わせて作ったものだ。水に溶かすだけで簡単に野菜スープが作れるので私は重宝している。
け、決して料理が出来ないわけじゃないんだから……。野菜を刻んだり……、刻んだり……刻んだりとかはちゃんと出来るんだよ。ただ、それ以外は……習っていなかったから出来ないけど。
食事を終えると早速畑の方へと向かう。
家の外、すぐ目の前にある小さな畑。広さはそれなりにあるのだけれど、1人分の量でいいし、私の食べる量はそれほど多くないので必然的に畑の大きさは小さくなっていった。
元は私の両親が大きな畑を営んでいたらしいけど、私が産まれてすぐに病気で亡くなってしまったらしい。
だからこそ、私がこの家と畑を守らないと!
ギュッと両手を握って気合を入れると早速作物を収穫していく。
◇
額に汗を流しながら作物を取り終えた時、既にお日様は頭の上までやってきていた。
そろそろお昼かな?
私はウキウキとしながら家の中に入っていく。お昼ご飯も朝の残りだけど、それでも労働した後のご飯はまた格別だった。
そして、晩の分を残してお腹いっぱいになるまで食べると家の外の木陰で横になる。
満腹による心地よい幸福感と楽しげな小鳥達の歌、春の陽気に誘われて次第に瞼が重くなっていく。
今日することは終わったし、もう大丈夫だよね?
私は重くなる瞼に抗うこともせずにそのまま身を任せる。フワフワとした浮遊感。次第に夢の世界に足を踏み込んでいき……。
ボンっ!!
「わっ!? な、何!?」
いきなり体に響く低く重い爆発音が鳴り響く。楽しげに歌っていた小鳥達はその音に驚き、羽ばたいて行ってしまう。
そして、木陰で寝転んでいた私は爆発の振動で落ちてきた木の葉まみれになっていた。
体を起こし、ブルブルと左右に振ってそれを払うと音のした方に駆けていく。一応手には私用の小さな鍬を持って……。
爆発音があったところは元々は私の畑、さすがに自分で管理しきれないので使っていない部分は今は雑草が生い茂るただの空き地となっていた。
そこに大きな窪みと鮮やかな七色の輝きを放つ私より小さい、それでも普通のものに比べたらはるかに大きい卵が落ちていた。
「な、何があったの!?」
私が落ちていた卵をツンツンと鍬で突いていると近所に住むおじさん達が駆け寄ってきてくれた。
あれだけすごい音がなったんだもん。当然だよね。
「この卵が落ちてきたみたいです」
私がおじさん達に説明する。手や足、体全体を使い言葉で説明できない部分はなんとかわかってもらおうと仕草で表した。
おじさん達はイマイチ理解できないようで首を傾げていた。当然だよ。私も何が何だか分からないし……。
「とにかく、卵が落ちていただけなら大丈夫そうだな。大方大きな鳥が飛んでいる途中にでも落としたのだろう」
そう納得したおじさん達は皆散り散りに去っていった。白状に思えるかもしれないけど、なんの危険もないしこんなもんだよね。卵は私が貰っていいことになった。……卵料理。
動物の少ないこの村では肉や卵といったものは中々食べることが出来なかった。全くいないというわけではないが、特に狩りとかの出来ない私にはほとんど食べる機会がなかった。
なので、思わず口元からヨダレが垂れてきていることに気がつかなかった。
私は大きな卵を抱えるとそのまま家の中に持ってはいる。今日の晩御飯は出来ているからこの卵は明日かな? どんな味がするのだろう? これだけ大きいと何食分くらいいけるかな?
そう考えるとわくわくが止まらなかった。
周りをキョロキョロと見渡すが見たことのない風景だった。
「こ、ここはどこ?」
私の顔に不安の色が映る。肩より長い栗色のウェーブがかった髪がふわりと揺れ、茶色の目に影が宿る。
不安でその場に縮こまっていると目の前に光り輝く1つの卵がゆっくりとした速度で落ちてくる。
ゆっくりと顔を上げてその卵を眺める。
真っ白な卵。しかし、その卵は必死に手を伸ばしても届かない位置で止まってしまう。
自分の背が低いことを恨みつつ、なんとか指に触れようと手を伸ばしながらぴょんぴょんと跳ねる。
そして、自分の中で最高のジャンプができた。ようやく触れられると思った時に視界が暗転する。
◇
「いったーーー!」
私はいきなり現れた痛みに何が起きたのかわからないまま、少し涙目になりながらも頭を押さえ、ぴょんぴょんとその場で跳ねる。
そして、その痛みが治まってきた時に何があったのか探ってみる。
すぐそばに小さな、私の身長にぴったりの木製ベッドが置かれている。その上の布団は乱れており、触ってみるとほんのりと温かさが残っている。
「はぁ……」
私は大きくため息を吐いた。おそらく、寝ていた時にベッドから落ちてしまい、そこで頭をぶつけたのだろう。
窓の外を見るとうっすらと明るくなってきていた。
今からもう1度寝てしまうと寝坊してしまう。それに頭をぶつけたせいで目がすっかり冴えてしまっていた。
仕方ないので寝間着を脱ぐと布のワンピースに着替える。
起伏の少ない体なのですっと着ることができる。
……!? せ、成長期なんだからね。まだまだこれから大きくなるんだから。
誰かに言うわけでもないのに、必死に頭の中で言い訳をしてしまう。
言い終わってから顔を真っ赤にして俯いてしまう。そして、もう1度大きなため息を吐く。
「はぁ……」
どうして私はこんななんだろう? 村の同じ年の子はもう背も高く、女性らしい見た目なのに、どうして?
もう十五歳にもなろうかという年なのに一向に大きくならない私の体。
一度どこかおかしいのかと村のお医者さんに見てもらったことがあるけれど、体はどこもおかしくなく、発育が少し遅いだけと言われてしまった。
顔をにやけさせてなめ回すように見ていたお医者さんのお姉さん。
特に何もおかしくないのにほかにもやたら親切に調べてくれたが、それでもやはり異常はなし。
また何かあったらすぐに来ていいわよ。と息を荒げながら言ってくれていた。
すごく親切なお姉さんだけど、身の危険を感じたのはどうしてだろう?
グツグツと釜に火を焚いて、お湯を沸かす。そして、幾つかの野菜と商人から購入した『簡単! スープの素』を加えてグルグルとかき混ぜる。
このスープの素は町の調合師様が幾つかの素材を混ぜ合わせて作ったものだ。水に溶かすだけで簡単に野菜スープが作れるので私は重宝している。
け、決して料理が出来ないわけじゃないんだから……。野菜を刻んだり……、刻んだり……刻んだりとかはちゃんと出来るんだよ。ただ、それ以外は……習っていなかったから出来ないけど。
食事を終えると早速畑の方へと向かう。
家の外、すぐ目の前にある小さな畑。広さはそれなりにあるのだけれど、1人分の量でいいし、私の食べる量はそれほど多くないので必然的に畑の大きさは小さくなっていった。
元は私の両親が大きな畑を営んでいたらしいけど、私が産まれてすぐに病気で亡くなってしまったらしい。
だからこそ、私がこの家と畑を守らないと!
ギュッと両手を握って気合を入れると早速作物を収穫していく。
◇
額に汗を流しながら作物を取り終えた時、既にお日様は頭の上までやってきていた。
そろそろお昼かな?
私はウキウキとしながら家の中に入っていく。お昼ご飯も朝の残りだけど、それでも労働した後のご飯はまた格別だった。
そして、晩の分を残してお腹いっぱいになるまで食べると家の外の木陰で横になる。
満腹による心地よい幸福感と楽しげな小鳥達の歌、春の陽気に誘われて次第に瞼が重くなっていく。
今日することは終わったし、もう大丈夫だよね?
私は重くなる瞼に抗うこともせずにそのまま身を任せる。フワフワとした浮遊感。次第に夢の世界に足を踏み込んでいき……。
ボンっ!!
「わっ!? な、何!?」
いきなり体に響く低く重い爆発音が鳴り響く。楽しげに歌っていた小鳥達はその音に驚き、羽ばたいて行ってしまう。
そして、木陰で寝転んでいた私は爆発の振動で落ちてきた木の葉まみれになっていた。
体を起こし、ブルブルと左右に振ってそれを払うと音のした方に駆けていく。一応手には私用の小さな鍬を持って……。
爆発音があったところは元々は私の畑、さすがに自分で管理しきれないので使っていない部分は今は雑草が生い茂るただの空き地となっていた。
そこに大きな窪みと鮮やかな七色の輝きを放つ私より小さい、それでも普通のものに比べたらはるかに大きい卵が落ちていた。
「な、何があったの!?」
私が落ちていた卵をツンツンと鍬で突いていると近所に住むおじさん達が駆け寄ってきてくれた。
あれだけすごい音がなったんだもん。当然だよね。
「この卵が落ちてきたみたいです」
私がおじさん達に説明する。手や足、体全体を使い言葉で説明できない部分はなんとかわかってもらおうと仕草で表した。
おじさん達はイマイチ理解できないようで首を傾げていた。当然だよ。私も何が何だか分からないし……。
「とにかく、卵が落ちていただけなら大丈夫そうだな。大方大きな鳥が飛んでいる途中にでも落としたのだろう」
そう納得したおじさん達は皆散り散りに去っていった。白状に思えるかもしれないけど、なんの危険もないしこんなもんだよね。卵は私が貰っていいことになった。……卵料理。
動物の少ないこの村では肉や卵といったものは中々食べることが出来なかった。全くいないというわけではないが、特に狩りとかの出来ない私にはほとんど食べる機会がなかった。
なので、思わず口元からヨダレが垂れてきていることに気がつかなかった。
私は大きな卵を抱えるとそのまま家の中に持ってはいる。今日の晩御飯は出来ているからこの卵は明日かな? どんな味がするのだろう? これだけ大きいと何食分くらいいけるかな?
そう考えるとわくわくが止まらなかった。
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