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商業組合
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私たちは頑張って部屋の掃除をした。
ちびどらがたまに埃も吸い込んでしまいむせていたけど、それでもやる気を失わなかった。
「ここがおいらとミーシャの新しい拠点になるんだ! 頑張らないと! そして、錬金がもっとできるようになって……むふふっ」
余計なことを考えているようだったけど、それでもちゃんとしてくれている分助かる。
それとは反面、マークくんは私が見ていないところではサボっているので気が抜けなかった。
◇
そして、小一時間ほど掃除すると部屋の中はピカピカと輝く……まではいかなかったけど、少なくとも歩いただけで埃が立つような部屋ではなくなった。
その時に初めて気がついたのだけど、ここはどうやら元々お店をしていたようだ。明らかに表の部屋が商店のそれだった。
ここならすぐにでもお店を始められそうだね。
私は少し笑みを浮かべる。
「おい、もう掃除は良いか?」
マークくんが聞いてくる。
「うん、もう良いよー」
私は満足げに頷く。するとマークくんも嬉しそうにしていた。
「それよりこれからどうするんだ?」
「錬金で過ごせるようにお店の準備かな?」
「おいらはご飯-!」
私が言うとマークくんは少し考えてくれる。
「ここで商売をするならまずは商業組合に行く必要があるぞ。店員とかが必要なら酒場だ。よし、俺が案内してやる!」
マークくんが自分の胸を叩いてそう言ってくれる。
ただ、強く叩きすぎたようでそのあと少しむせていた。
「い、いいの?」
「おいらはご飯……」
私は本当に良いのか再度確認してみる。
「おう、俺に任せとけ!」
「お、おいら……」
嬉しそうに言い返してくるマークくん。
そう言えばさっきからちびどらの声が聞こえていた気がする。何か言っていたのかな?
私はちびどらの近くに行くとシクシクと悲しげに泣いていた。
「どうせおいらなんか役に立たないドラゴンだよ」
ちびどらがしみじみと泣いていた。
何だかすごく悪いことをした気がする。
あっ、それなら……。
「ちびどら、町に行ったらまたあのタレ焼き、食べようね」
私が微笑みながらそう言うと、悲しんでいたちびどらが一転。
嬉しそうに私の頭に乗って玄関の方を指さしていた。
「さぁ、早く行こう。タレ焼きがおいらを待ってる!!」
もう、現金だなぁ。
私は苦笑をしながらちびどらの後を追いかけた。
◇
私たちは早速街に繰り出した。
目的はもちろん……タレ焼き?
と、とにかくタレ焼きの屋台に行こう。
私はどこかを指さしているマークくんに気づかずにタレ焼きのお店に一直線に向かう。
そして、タレ焼きを購入してちびどらと分け合って食べる。
「んーーーっ。やっぱりおいしいー!」
「ほんとにそうだよな」
私たちはほっぺがとろけ落ちそうなくらい美味しいタレ焼きを満喫する。
「な、なぁ、俺にも一口……」
マークくんも少しの間プライドと格闘していたが、我慢できなくなり私に一口ねだってくる。
「ご、ごめんね。もうなくなっちゃった」
「ち、ちくしょー!!!」
マークくんが格闘している間に全てを食べきってしまう。
するとプライドを打ち砕かれたマークくんは血の涙を流しながらどこかに駆けだしていった。
◇
「もう、マークくん。機嫌を直してよ」
「つーん」
「そうだぜ。いつまでも拗ねてるとガキみたいだぞ」
「ガキじゃない!」
タレ焼きを食べられなかったマークくんは少し拗ねていた。
それでも私たちを案内してくれる。
そこまで欲しかったのならもう一本買えばよかったかな?
それなら私もまた堪能できたし。
あっでも、マークくんってルクスフォード様の子だからお金もってそうだよね。
家大きいし。
そんなことを考えながら歩いているとマークくんはお金のマークが描かれた看板の前で立ち止まる。
ここが商業組合ってとこかな?
「おい、中に入るけど、しっかりとしておけよ」
マークくんが注意してくる。
でもどういうことだろう?
マークくんの裾を掴み、中に入るとそこは温度が一度か二度くらい上がっているのかと感じるくらい妙な熱気を放っていた。
ふらっとしそうなのを我慢して中を見渡す。
カウンターにはきれいな女の人が立っている。
そして、周りにはなぜかテーブルが置かれていて、そこには私の倍くらいの体型の男の人たちがお酒を飲んでいた。
ぱっと見ただけだとわからないけど、このむせかえるようなアルコール臭。
おそらく相当度数のきついものなのだろう。
「こ、ここは魔物討伐の換金所も兼ねているんだ」
少し嫌そうな顔をするマークくん。
そして、テーブルに座っている男の人たちは私達を見てニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
でもその時、私は上半身裸の男の人たちから目を背けていてその視線には気づかなかった。
すると、目の前に一人の男の人が立ちふさがった。
「おいおい、嬢ちゃん達。ここは遊びでくるような所じゃないぜ」
その声でようやく私は男の人の顔を見る。
沢山の髭が乱雑に生えていて、髪の毛もボサボサの男の人。
その人が私をなめ回すように見ていた。
もしかしたら私の頭の上にいるちびどらを見ているのかもしれないけど、決して好ましい視線ではなかった。
「おい、いくぞ!」
マークくんは私の腕を掴むとそのままカウンターの方に歩いて行く。
「おいおい、彼氏連れかよ!」
「ひゅーひゅー、やるねー」
私達を冷やかす声がする。
それを聞いたマークくんの顔は今まで見たことないくらい真っ赤に染まっていた。
そして、その口元はギリリと言う音がしそうなくらいきつく結ばれていた。
「おい、やるのか? おいらが相手になってやる」
戦う姿勢を見せていたちびどらの頭を小突いてから私はマークくんと一緒にカウンターへと歩いて行く。
ちびどらがたまに埃も吸い込んでしまいむせていたけど、それでもやる気を失わなかった。
「ここがおいらとミーシャの新しい拠点になるんだ! 頑張らないと! そして、錬金がもっとできるようになって……むふふっ」
余計なことを考えているようだったけど、それでもちゃんとしてくれている分助かる。
それとは反面、マークくんは私が見ていないところではサボっているので気が抜けなかった。
◇
そして、小一時間ほど掃除すると部屋の中はピカピカと輝く……まではいかなかったけど、少なくとも歩いただけで埃が立つような部屋ではなくなった。
その時に初めて気がついたのだけど、ここはどうやら元々お店をしていたようだ。明らかに表の部屋が商店のそれだった。
ここならすぐにでもお店を始められそうだね。
私は少し笑みを浮かべる。
「おい、もう掃除は良いか?」
マークくんが聞いてくる。
「うん、もう良いよー」
私は満足げに頷く。するとマークくんも嬉しそうにしていた。
「それよりこれからどうするんだ?」
「錬金で過ごせるようにお店の準備かな?」
「おいらはご飯-!」
私が言うとマークくんは少し考えてくれる。
「ここで商売をするならまずは商業組合に行く必要があるぞ。店員とかが必要なら酒場だ。よし、俺が案内してやる!」
マークくんが自分の胸を叩いてそう言ってくれる。
ただ、強く叩きすぎたようでそのあと少しむせていた。
「い、いいの?」
「おいらはご飯……」
私は本当に良いのか再度確認してみる。
「おう、俺に任せとけ!」
「お、おいら……」
嬉しそうに言い返してくるマークくん。
そう言えばさっきからちびどらの声が聞こえていた気がする。何か言っていたのかな?
私はちびどらの近くに行くとシクシクと悲しげに泣いていた。
「どうせおいらなんか役に立たないドラゴンだよ」
ちびどらがしみじみと泣いていた。
何だかすごく悪いことをした気がする。
あっ、それなら……。
「ちびどら、町に行ったらまたあのタレ焼き、食べようね」
私が微笑みながらそう言うと、悲しんでいたちびどらが一転。
嬉しそうに私の頭に乗って玄関の方を指さしていた。
「さぁ、早く行こう。タレ焼きがおいらを待ってる!!」
もう、現金だなぁ。
私は苦笑をしながらちびどらの後を追いかけた。
◇
私たちは早速街に繰り出した。
目的はもちろん……タレ焼き?
と、とにかくタレ焼きの屋台に行こう。
私はどこかを指さしているマークくんに気づかずにタレ焼きのお店に一直線に向かう。
そして、タレ焼きを購入してちびどらと分け合って食べる。
「んーーーっ。やっぱりおいしいー!」
「ほんとにそうだよな」
私たちはほっぺがとろけ落ちそうなくらい美味しいタレ焼きを満喫する。
「な、なぁ、俺にも一口……」
マークくんも少しの間プライドと格闘していたが、我慢できなくなり私に一口ねだってくる。
「ご、ごめんね。もうなくなっちゃった」
「ち、ちくしょー!!!」
マークくんが格闘している間に全てを食べきってしまう。
するとプライドを打ち砕かれたマークくんは血の涙を流しながらどこかに駆けだしていった。
◇
「もう、マークくん。機嫌を直してよ」
「つーん」
「そうだぜ。いつまでも拗ねてるとガキみたいだぞ」
「ガキじゃない!」
タレ焼きを食べられなかったマークくんは少し拗ねていた。
それでも私たちを案内してくれる。
そこまで欲しかったのならもう一本買えばよかったかな?
それなら私もまた堪能できたし。
あっでも、マークくんってルクスフォード様の子だからお金もってそうだよね。
家大きいし。
そんなことを考えながら歩いているとマークくんはお金のマークが描かれた看板の前で立ち止まる。
ここが商業組合ってとこかな?
「おい、中に入るけど、しっかりとしておけよ」
マークくんが注意してくる。
でもどういうことだろう?
マークくんの裾を掴み、中に入るとそこは温度が一度か二度くらい上がっているのかと感じるくらい妙な熱気を放っていた。
ふらっとしそうなのを我慢して中を見渡す。
カウンターにはきれいな女の人が立っている。
そして、周りにはなぜかテーブルが置かれていて、そこには私の倍くらいの体型の男の人たちがお酒を飲んでいた。
ぱっと見ただけだとわからないけど、このむせかえるようなアルコール臭。
おそらく相当度数のきついものなのだろう。
「こ、ここは魔物討伐の換金所も兼ねているんだ」
少し嫌そうな顔をするマークくん。
そして、テーブルに座っている男の人たちは私達を見てニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
でもその時、私は上半身裸の男の人たちから目を背けていてその視線には気づかなかった。
すると、目の前に一人の男の人が立ちふさがった。
「おいおい、嬢ちゃん達。ここは遊びでくるような所じゃないぜ」
その声でようやく私は男の人の顔を見る。
沢山の髭が乱雑に生えていて、髪の毛もボサボサの男の人。
その人が私をなめ回すように見ていた。
もしかしたら私の頭の上にいるちびどらを見ているのかもしれないけど、決して好ましい視線ではなかった。
「おい、いくぞ!」
マークくんは私の腕を掴むとそのままカウンターの方に歩いて行く。
「おいおい、彼氏連れかよ!」
「ひゅーひゅー、やるねー」
私達を冷やかす声がする。
それを聞いたマークくんの顔は今まで見たことないくらい真っ赤に染まっていた。
そして、その口元はギリリと言う音がしそうなくらいきつく結ばれていた。
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