6 / 33
収納が少ない家屋(4)
しおりを挟む
ガリューの本宅――鍛冶屋を営んでいる彼の家は主に2つの空間に別れている。鍛治を行う空間と居住空間だ。
「この家は俺が作ったんだ!」
ガリューは嬉しそうに声を上げる。まずはこの家メインとなる鍛治の空間から案内することにした。
「ここで鍛治を行うんだ」
大きな鍛治炉が置かれた部屋――ここは表の店舗部分と違い、床が階段二段分下がっていた。
『小さな階段が廊下とこの部屋を繋いでいるな。床が土のままという大事なのかもしれない。床の上に金槌や鉄の塊なんかが転がっているけど、これも鍛治で使うものだろうか』
一人考え事をしていた先生はボソボソと呟きながら紙に何かを書き落としていった。
「何だったら鍛治を行っている場面でも見ていくか?」
ガリューが胸を叩き豪快に笑いかける。折角ここまで来たんだから研吾にも勇姿を見てもらいたい。そう思ったのだが体良く断られてしまう。
「い、いえ……、それはまた今度で」
次にやってきたのは先ほど入ってきて商品の店舗部分――ただ、ここも商品を倉庫にしまったあとだともの寂しい感じがした。
広さ十畳ほどの部屋にカウンターが一つだけ置いている。
「ここに商品を並べていたのですか?」
「いや、はじめは注文を聞いて、そこから作っていたんだ。それが次第に作る速度の方が早くなってしまって物が余るようになったんだ」
研吾は幾つかの質問をガリューに投げかけ、それを先ほどの紙に落としていた。
鍛治の空間はこれで全てだった。次は居住空間を案内していく。
まずは一階にある居室――昔は何度か使ったことがあるが、それなりにちゃんとしたキッチンを購入していた。
「このキッチンって電気とかガスを利用してるのですか?」
研吾はメモを取る手を止めてミルファーに確認する。
「いえ、これはもちろん魔石で動いてますよ」
「魔石?」
「はい、特定の魔力を帯びた石のことです。それを触れることによって火が出たり水が出たりしますね」
「設備は問題なさそうですね」
ちゃんと使えることをミルファーやバルドールに確認してもらっていた。その結果、設備は問題ないようだった。
「それでここで食事を?」
「あぁ……、確かに食事をとったりしたこともあるな」
実際はほとんど使っていないのだが直接そういうのは憚られた。なので曖昧な返事をしたが、研吾に全て見透かされてる、そんな気がした。
『うん、この部屋も最低限必要な物はそろってるみたい。ただここも物が少ないからなんとかなっているけど、いざ本格的に使用するとなると収納が足りなくなりそう。きっと家を建てたときに自分が使用するだけだから、とそこまで深く考えていなかったんだろうな。とにかくこの本宅にも収納を増やすことが急募かもしれない』
また一人でボソボソと呟き感じたことをメモに落としていた。ガリューからすればこの部屋は特にいじるところもないように見受けられるが、それが研吾との感覚の差なんだろう。
一階部分はこれだけなので、次は二階へと案内する。
『うーん、二階の床と梁の間……ここがやけに空いてるな。中二階……まではいかなくてもここにも収納スペースができるかも』
階段を上りながら器用にメモをとる。本当些細なことでもメモしてるみたいで既に一階だけで隙間なく書かれていた。
そして、二階は寝室一部屋だけあった。それなりに大きな部屋――しかし、散らかされた服がそんなに広い部屋に見せなかった。
「ま、待て! こ、ここはいいから!」
ガリューは慌てて研吾たちを追い出される。そして大慌てで荷物を片付けていく。しかし、最後まで研吾はメモを取っていた。
一通り案内したあと研吾たちはガリューの勧める酒場へとやってきた。
「いらっしゃいませ」
小さいながらもどこか趣のある店内。店主もガリューと同じくらいの年の男性だった。厳つい顔の店主が研吾たちを席に誘導する。店主の正面のカウンター席――そこに四人並んで座る。
「今日はえらく大人数なんだな」
「あぁ、ほら、その張り紙のやつ――」
「あぁ、それじゃあそっちの三人が」
「そうだ。俺の家に倉庫を作ってくれた先生方だ。しかも普通の倉庫じゃないぞ! あれだけあった物がすべてしまえるだけのとんでもない倉庫を格安で作ってくれたんだ」
ガリューが肩を力強く叩いてきたので、研吾は思わず前に蹌踉めく。
「えらく柔な男だな。大丈夫なのか?」
酒場の店主にしてはえらく口が悪い気がする。そう言いながら研吾たちの前にはエールの入ったコップが置かれる。
「あぁ。何だったらお前も一度俺の倉庫に来るといい。すごいぞ!」
「がははっ、それで以前ひどい目にあったからな。お断りだ! それにしてもついこないだまで落ち込んでいたのにな」
「おい、それは言うなよ!」
二人して高笑いしていたが研吾たちはついていけずに目の前のエールに手をつけていた。
「あっ、美味しい……」
「だろう。うちのエールは最高品だからな」
ミルファーに褒められたのが嬉しかったのか、店主はさらに大きく口を開けて高笑いしていた。
そして、一通り食べたあと研吾たちは帰っていった。
新しい倉庫ができ、心が躍るのをなんとか押さえて鍛治部屋にやってきた。あれだけの収納だ。まだまだ作っても大丈夫そうだなと鍛冶をするのにも力が入る。早速新作の剣を打ち始めると、何か用があるのか研吾がやってきた。
「どうした? 早速この家の改装を始めるのか?」
「いえ、ちょっとガリューさんの仕事ぶりを見学したくて。いいですか?」
「おう、遠慮せずに見ていってくれ」
それからは何かするわけでもなくジッとガリューの姿を見ていた。少し気になるが、独特の視点をもっているこの先生のことだ。何か必要なことなのだろうと自分に言い聞かせてなるべくいつも通りに過ごす。
朝の間は鍛治で新作を生み出し、昼からはお店のカウンターで頬杖をつきながら昼寝する。
中が片付いたからといっても今までのことがある。早々人が来るはずもなく、来た人も部屋が片付いてることで場所を間違えたかと慌てて店を飛び出すことも多々あった。それほど客が来ていないにもかかわらず……だ。
「全く、俺をなんだと思ってるんだ!」
「仕方ないですよ。今までの雪崩が起きるほど荷物があったんですから……」
「でもよー。何かこう……もやもやとしたものが残るじゃないか」
うまく伝えることが出来ない。
でも研吾ならもしかしたらわかってくれるかもという期待感もあった。
「それならいっそ、もっと驚かせてしまいましょう!」
何かいたずらを思い浮かんだ子どものように笑う研吾。いったい何を思い浮かんだのだろうとガリューは期待で胸がいっぱいだった。
「それじゃあ残りを準備してきますね。明日から数日間は工事を行いますので鍛冶屋をお休みにしてもらってもいいですか?」
「おう、それは構わないぞ。でも数日で終わるのか? こういってはなんだがもっとかかるのではないのか?」
「いえ、倉庫は初めての依頼だったので色々と調べるのに時間がかかっただけですので、今度は大丈夫です。期待しててくださいね」
「あっ、ケンゴ様。ここにいらっしゃいましたか。見てもらいたいものがあるので少し来てもらえませんか?」
走って探し回っていたのか、少し額に汗を浮かべたミルファーが研吾を見つけ安堵する。
「わかりました、すぐに行きます。それじゃあガリューさん、今日は一日ありがとうございました」
「お、おう……」
それから研吾は慌ただしく店を出て行き、ガリューは一人ぽつんと取り残された。一体どんな部屋になるのだろうか? 期待と不安でいっぱいだったガリューはこれ以上集中することもできないと思い、店を畳みいつもの酒場へと足を運ぶ。
「この家は俺が作ったんだ!」
ガリューは嬉しそうに声を上げる。まずはこの家メインとなる鍛治の空間から案内することにした。
「ここで鍛治を行うんだ」
大きな鍛治炉が置かれた部屋――ここは表の店舗部分と違い、床が階段二段分下がっていた。
『小さな階段が廊下とこの部屋を繋いでいるな。床が土のままという大事なのかもしれない。床の上に金槌や鉄の塊なんかが転がっているけど、これも鍛治で使うものだろうか』
一人考え事をしていた先生はボソボソと呟きながら紙に何かを書き落としていった。
「何だったら鍛治を行っている場面でも見ていくか?」
ガリューが胸を叩き豪快に笑いかける。折角ここまで来たんだから研吾にも勇姿を見てもらいたい。そう思ったのだが体良く断られてしまう。
「い、いえ……、それはまた今度で」
次にやってきたのは先ほど入ってきて商品の店舗部分――ただ、ここも商品を倉庫にしまったあとだともの寂しい感じがした。
広さ十畳ほどの部屋にカウンターが一つだけ置いている。
「ここに商品を並べていたのですか?」
「いや、はじめは注文を聞いて、そこから作っていたんだ。それが次第に作る速度の方が早くなってしまって物が余るようになったんだ」
研吾は幾つかの質問をガリューに投げかけ、それを先ほどの紙に落としていた。
鍛治の空間はこれで全てだった。次は居住空間を案内していく。
まずは一階にある居室――昔は何度か使ったことがあるが、それなりにちゃんとしたキッチンを購入していた。
「このキッチンって電気とかガスを利用してるのですか?」
研吾はメモを取る手を止めてミルファーに確認する。
「いえ、これはもちろん魔石で動いてますよ」
「魔石?」
「はい、特定の魔力を帯びた石のことです。それを触れることによって火が出たり水が出たりしますね」
「設備は問題なさそうですね」
ちゃんと使えることをミルファーやバルドールに確認してもらっていた。その結果、設備は問題ないようだった。
「それでここで食事を?」
「あぁ……、確かに食事をとったりしたこともあるな」
実際はほとんど使っていないのだが直接そういうのは憚られた。なので曖昧な返事をしたが、研吾に全て見透かされてる、そんな気がした。
『うん、この部屋も最低限必要な物はそろってるみたい。ただここも物が少ないからなんとかなっているけど、いざ本格的に使用するとなると収納が足りなくなりそう。きっと家を建てたときに自分が使用するだけだから、とそこまで深く考えていなかったんだろうな。とにかくこの本宅にも収納を増やすことが急募かもしれない』
また一人でボソボソと呟き感じたことをメモに落としていた。ガリューからすればこの部屋は特にいじるところもないように見受けられるが、それが研吾との感覚の差なんだろう。
一階部分はこれだけなので、次は二階へと案内する。
『うーん、二階の床と梁の間……ここがやけに空いてるな。中二階……まではいかなくてもここにも収納スペースができるかも』
階段を上りながら器用にメモをとる。本当些細なことでもメモしてるみたいで既に一階だけで隙間なく書かれていた。
そして、二階は寝室一部屋だけあった。それなりに大きな部屋――しかし、散らかされた服がそんなに広い部屋に見せなかった。
「ま、待て! こ、ここはいいから!」
ガリューは慌てて研吾たちを追い出される。そして大慌てで荷物を片付けていく。しかし、最後まで研吾はメモを取っていた。
一通り案内したあと研吾たちはガリューの勧める酒場へとやってきた。
「いらっしゃいませ」
小さいながらもどこか趣のある店内。店主もガリューと同じくらいの年の男性だった。厳つい顔の店主が研吾たちを席に誘導する。店主の正面のカウンター席――そこに四人並んで座る。
「今日はえらく大人数なんだな」
「あぁ、ほら、その張り紙のやつ――」
「あぁ、それじゃあそっちの三人が」
「そうだ。俺の家に倉庫を作ってくれた先生方だ。しかも普通の倉庫じゃないぞ! あれだけあった物がすべてしまえるだけのとんでもない倉庫を格安で作ってくれたんだ」
ガリューが肩を力強く叩いてきたので、研吾は思わず前に蹌踉めく。
「えらく柔な男だな。大丈夫なのか?」
酒場の店主にしてはえらく口が悪い気がする。そう言いながら研吾たちの前にはエールの入ったコップが置かれる。
「あぁ。何だったらお前も一度俺の倉庫に来るといい。すごいぞ!」
「がははっ、それで以前ひどい目にあったからな。お断りだ! それにしてもついこないだまで落ち込んでいたのにな」
「おい、それは言うなよ!」
二人して高笑いしていたが研吾たちはついていけずに目の前のエールに手をつけていた。
「あっ、美味しい……」
「だろう。うちのエールは最高品だからな」
ミルファーに褒められたのが嬉しかったのか、店主はさらに大きく口を開けて高笑いしていた。
そして、一通り食べたあと研吾たちは帰っていった。
新しい倉庫ができ、心が躍るのをなんとか押さえて鍛治部屋にやってきた。あれだけの収納だ。まだまだ作っても大丈夫そうだなと鍛冶をするのにも力が入る。早速新作の剣を打ち始めると、何か用があるのか研吾がやってきた。
「どうした? 早速この家の改装を始めるのか?」
「いえ、ちょっとガリューさんの仕事ぶりを見学したくて。いいですか?」
「おう、遠慮せずに見ていってくれ」
それからは何かするわけでもなくジッとガリューの姿を見ていた。少し気になるが、独特の視点をもっているこの先生のことだ。何か必要なことなのだろうと自分に言い聞かせてなるべくいつも通りに過ごす。
朝の間は鍛治で新作を生み出し、昼からはお店のカウンターで頬杖をつきながら昼寝する。
中が片付いたからといっても今までのことがある。早々人が来るはずもなく、来た人も部屋が片付いてることで場所を間違えたかと慌てて店を飛び出すことも多々あった。それほど客が来ていないにもかかわらず……だ。
「全く、俺をなんだと思ってるんだ!」
「仕方ないですよ。今までの雪崩が起きるほど荷物があったんですから……」
「でもよー。何かこう……もやもやとしたものが残るじゃないか」
うまく伝えることが出来ない。
でも研吾ならもしかしたらわかってくれるかもという期待感もあった。
「それならいっそ、もっと驚かせてしまいましょう!」
何かいたずらを思い浮かんだ子どものように笑う研吾。いったい何を思い浮かんだのだろうとガリューは期待で胸がいっぱいだった。
「それじゃあ残りを準備してきますね。明日から数日間は工事を行いますので鍛冶屋をお休みにしてもらってもいいですか?」
「おう、それは構わないぞ。でも数日で終わるのか? こういってはなんだがもっとかかるのではないのか?」
「いえ、倉庫は初めての依頼だったので色々と調べるのに時間がかかっただけですので、今度は大丈夫です。期待しててくださいね」
「あっ、ケンゴ様。ここにいらっしゃいましたか。見てもらいたいものがあるので少し来てもらえませんか?」
走って探し回っていたのか、少し額に汗を浮かべたミルファーが研吾を見つけ安堵する。
「わかりました、すぐに行きます。それじゃあガリューさん、今日は一日ありがとうございました」
「お、おう……」
それから研吾は慌ただしく店を出て行き、ガリューは一人ぽつんと取り残された。一体どんな部屋になるのだろうか? 期待と不安でいっぱいだったガリューはこれ以上集中することもできないと思い、店を畳みいつもの酒場へと足を運ぶ。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる