暗躍貴族の保身的救済 ~死にたくないので救国します!〜

空野進

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Sランク冒険者、ジークフリード(2)

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「アインを、放せ―!!」


 隠れ家にたどり着くと、突然ブライドがジークフリードに襲いかかっていた。
 確かに見方によっては俺が捕まっているようにも見えるだろう。
 でも、勝ち目のない相手に挑むのは蛮勇でしかないぞ……。

 とりあえず、ジークフリートとまともに戦わせるのはまずい……。
 俺は巻物で地面に小さな土の突起物を作る。
 すると、それにつまずいたブライトがそのまま転けていた。


「落ち着け、ブライト! 俺は捕まっていない」
「あ、あれっ? そうなのか? しかし、そいつはSランク冒険者のジークだろう?」
「あぁ、そうだ」
「どう考えても敵じゃないか!」
「いや、いきなり襲ってこないから大丈夫だ」
「ほ、本当なのか?」
「安心しろ!」


 俺が説得してようやくブライトは安心していた。


「しかし、アインを捕まえたわけじゃないのなら、どうして冒険者がこんなところに――」
「私も現状を確認しておきたかった……。それだけだ」


 短い言葉で言い切るジークフリード。
 その表情はかなり強張っていた。


「本当にすまなかった……。私にできるだけの援助をさせてもらう。あと、今後手出しさせないように提言させてもらう。私にできることはそれしかないが、本当に冒険者達が済まなかった……」


 頭を下げて謝るジークフリード。
 それを見て、俺は思わず感心してしまう。

 もう完全に腐りきっていると思っていたギルドにもこういった人間がいるんだな。

 彼だけかも知れないが、ジークフリードを旗印に掲げたらギルドは元の姿へと変わっていくかも知れない。

 少しは光明が見えたギルド。
 あとはジークフリード以外をどう排除するか……、それを考え始める。


◇◇◇


 壊れた建物の補修やけが人の治療を手伝った後、ジークフリードは帰っていった。
 そして、俺たちの方だが――。


「なぁ、ここの家を借りて隠れ家にするのはどうだ?」


 ブライトが提案してくる。
 まぁ、ブライトがこの森に身を潜める以上、それが良いだろうな。


「しかし、借りられる家なんてあるのか?」
「あぁ、何でも助けてくれたお礼に一件譲ってくれることになったんだ」
「それならこれからはここに集まるか――」


 ブライトと相談し合っているとルリカが近づいてくる。


「その、私もその活動に参加してもいいですか?」
「さすがに嬢ちゃんみたいな子供に参加させられるか。なぁ、アイン――」


 ブライトが視線を送ってくる。

 確かに言いたいことはよくわかる。しかし、このままルリカを放っておくことはできるのか?
 仕方なかったとはいえ、俺の正体を知っている彼女を……。


「いや、ルリカには参加してもらう――。今は少しでも人手が欲しいところだ。それに、魔法が使えるんだろう?」


 首を縦に振るルリカ。


「しかし、魔法ならアインも――」
「俺の巻物も有限だぞ?」
「――そうだったな。わかった。その代わり、あまり危険なところには連れて行かないからな。極力アインと行動をしろ」
「わかりました……」
「いや、俺は一人で――」
「お前が崩れたら、俺たちは終わりだからな。俺が常に付き従えない以上、誰か護衛においておきたかったんだ」
「はぁ……、わかった。ならルリカは俺と一緒に来い。でも、家族と離れることになるのは良いか? もう戻ってこられなくなるかも知れないぞ?」
「はい、国に復讐をするまでは戻らないって決めましたので――」


 決意のこもった視線を向けてくる。
 別に国に復讐をしたくて動いているんじゃないんだけど……、こうなってくるとそれを前提に、俺が殺されないようにだけしておく方が無難な気がしてきたな。

 一応いくつかの対策を考えた上で、動かなくてはいけないな……。
 そのためにも一度王国の様子を探った方が良さそうだな。


「なら、ルリカは俺に付き従ってくれ。ブライトはこの辺りで困っている奴がいたら助けてやれ。しばらくはここで強化を計る」
「いざというときに力になってもらえるようにするんだな。わかった。任せておけ!」


 ブライトは自信たっぷりに言ってくる。
 元々ここ相手にはしていたことだからな。
 これは問題ないだろう。


「では、ルリカ、行くぞ!」
「はい」


 隠れ里はブライトに任せて、俺たちはヴァンダイム領にある館へと戻っていった。
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