暗躍貴族の保身的救済 ~死にたくないので救国します!〜

空野進

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父の帰還(1)

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 反乱軍のやつらに補佐官から取り戻した金を渡す。
 すると彼らは口をぽっかり開けて驚いていた。


「こ、この金はお前が準備したものか?」
「まさか。補佐官に税が多いことを話したら快く返してくれたぞ」
「……そんなことあるはずないだろ」


 反乱軍の男が思わず突っ込んでしまう。


「いや、補佐官にもらったものだぞ? こんな大金、俺が出す理由があると思うのか?」
「それは……そうだな。さすがにこれだけの大金を一度に出せるはずがないか……」
「そういうことだ。あと、税も少しだが安くなるはずだ」
「お、お前は一体……!?」


 男は驚きのあまり、聞いてくる。


「俺はアイン。この国を救うものだ!」


 言っていて恥ずかしくなるがここはグッとこらえる。
 すると、男は思わず息を飲んでいた。


「き、救世主様……だったのか――」
「どうだ、これで俺の力を信じてくれたか?」
「い、いや……、まだ魔物の方が……」
「アイン、しっかりと魔物を討伐してやったぞ!」


 ブライトがタイミング良く倒した魔物を持ってきてくれる。
 それを見て、俺はにやり微笑んでいた。


「どうだ? これでも何か言いたいことは?」
「い、いや、何もない……」
「では、俺がここに来た理由を教えてやろう」
「そ、そういえばあなたほどのお方がどうしてこんなところに?」
「それはお前たちに忠告に来てやったんだ」
「忠告……といいますと?」
「あぁ、お前たちは国に仇なす反乱軍として知られているみたいじゃないか」
「……反乱を辞めろといいたいのですか?」


 男達の視線が鋭いものへと変わる。
 さすがに今の内容だと許容出来る範囲を超えているのだろう。
 しかし、俺も引き下がるわけにはいかない。


「いや、辞めろとは言わない。ただ、お前たちだけが動いてどうなる!」
「しかし、このままだと俺たちは飢えて死んでしまう!」
「だからこそだ! 今は一致団結して動くときではないのか?」
「っ!?」


 男達は息を飲んで俺の方に視線を向けてくる。


「し、しかし、反乱なんて誰も加わりたくない――」
「いや、国民はみな困っている。だからこそ、今は一つの旗に集まるべきじゃないか?」
「しかし、誰が長を……」
「私がなろう! 私なら諸君も信じられるだろう?」


 手を差し出す。
 すると少し考えた上で男達は一様に俺の手をつかみに来る。


「よし、諸君の意思はわかった。これからは共に頑張ろうではないか」
「あ、あぁ……。それで俺たちは何をしたらいい?」
「当面は近くの村にいる人たちを誘ってくれ。くれぐれも貴族の連中と争うなよ。あと、先ほどの金で貧しいものに食い物でも買ってやるといい」
「わ、わかった」


 さて、これで領地近くは安全になったかな。
 すぐに反乱も起きなくなったわけだし、しばしの休暇が取れそうだな。


「よろしく頼む。私の方はまた当面単独で動かしてもらう。委細はブライト、お前に任せるぞ! うまく導いてやってくれ」
「お、俺!? わ、わかった、何とか頑張ってみよう」
「まぁ、やることは集まってきた民を鍛えて欲しいってことくらいだからな。無理はしなくて良い」
「あぁ、そんなことでいいのか。わかった、任せておいてくれ」
「さて、ルリカは俺と一緒に来てくれ」
「は、はいっ」


 ルリカを連れて俺は館へと戻っていく。







「んっ、なんだか騒々しいな?」


 館へと戻ってくると、館の中は少し騒がしかった。


「本当ですね……。何かあったのでしょうか?」
「あっ、クロウリッシュ様。おかえりなさいませ」


 俺に気づいた使用人の一人が頭を下げてくる。
 せっかくなので今の騒ぎについて尋ねてみることにする。


「あぁ、ただいま。何かあったのか?」
「えぇ、もうじきご主人様がお戻りになるようで、少しでも館を綺麗にしておこうと思いまして……」
「そういうことか……」


 思い返してみれば、確かにほとんど帰っては来ないが、たまに帰ってきたときはいつも騒がしかった気がする。
 ……ルリカは隠して置いた方が良さそうだな。
 それに親が帰るまで家を出ることができなくなるだろう。


「ルリカ、当面は部屋から出るなよ!」
「は、はい、わかりました」
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