21 / 40
20.
しおりを挟む
カイは城門前へとやってきた。
城を守っている兵士は昨日とは違う人物のようだ。
ただ、やはり一人殺されたということもあるからか、城を守っている人数が一人増えて三人になっていた。
なるほどな。一応警戒はしているようだ。
ただ、兵士達には詳しい事情は知らされていないようだな。
人数が増えたことで油断しているようだった。
「あー……、こんな門の警備くらい一人でも大丈夫だろ……。なんで三人もいるんだよ……」
「良いじゃないか、暇なんだから」
「その分仕事時間も増えるんだぞ?」
「それもそうだったな……」
「いったい隊長は何を考えているんだ……」
ここまで油断しているなら潜入は簡単そうだった。
せっかくなので直接話をしてみることにした。
「すみません、少しよろしいですか?」
「あぁ……、なんだ、旅行客か? どうしたんだ」
「ここって王城……なんですよね?」
「もちろん見ての通りそうだが?」
「そうなんだ……。それじゃあここには王様とかが住んでるんですね……。それじゃあその護衛をしてる人たちはとっても強いんですよね?」
カイは普段見せないような輝いた目を見せる。
すると兵士はあきれ顔になりながら答えてくれる。
「もちろんとっても強いぞ。特にこの国には最強の兵士団長、マーグル様がいるからな」
兵士はどこか誇らしげだった。
「それなら安心ですね。ありがとうございます」
カイはお礼を言ったあとにその場を離れていった。
◇
警戒すべき相手は兵士団長だけ……。
おそらく国王のそばにいるんだろうなと想像がつく。
ただ、先に殺ってしまうと更に警戒心を煽ってしまうか。
少し考えた結果、とりあえずカイはまず王城へ潜入することを優先することにした。
すると城の中へ入っていく一般人の姿を見かける。
兵士に軽く会釈をしただけ。
それなのに兵士達も同じように軽く頭を下げただけで素通りしていた。
もしかしたら兵士達の話に何かヒントがあるかもしれないとカイは聞き耳を立てていた。
「今日はどんな料理を作ってくれるんだろうな?」
「カバンの中から何かの肉が見えた。きっと肉料理だぞ」
「カバンの中にはいる程度の量しかないのにか?」
「うっ……、そういえばそうだな。それじゃあどんな料理を作ってくれるんだろうな……」
どうやら先ほどのやつは料理人だったようだ。
さすがにこの王城内の料理を一人で担当してることはないだろう。
複数人いて当然……と考えると――。
「よし、ひとまずわかる範囲の情報はこのくらいだな」
あまり長居しても怪しまれるだろうからとカイは一旦この場を離れることにした。
◇
今度は町の中を見て回る。
今歩いているところは食品などが売られている場所で、結構人が多い。
(ここまで逃げて来られれば人混みに紛れることができるな)
カイはにやりと微笑む。
そして、商品を見て回っていると店員の一人がカイに声をかけていた。
「おっ、そこのにいちゃん。どうだい、一つ買っていかないか?」
店員が手に持ちながら進めてきたのは果物だった。
カイ自身はあまり欲しいとは思わないけど、チルへのお土産にはちょうどいいかもしれない。
せっかくなので、一つもらっていくことにした。
◇
「カイさん、お帰りなさい」
宿の部屋に戻るとチルが嬉しそうに出迎えてくれる。
「あぁ、ただいま。これ、チルへのお土産だ」
「あっ、カグの実ですね。とっても甘くて美味しいんですよ……」
チルははにかみながらカグの実を受け取ってくれる。
「それじゃあ早速皮をむいて、切り分けてきますね」
「いや、それはチルだけが食って……」
「せっかくですから一緒に食べましょう」
微笑むチルを見ていると断りにくい。
カイは苦笑まじりに頷いていた。
すると嬉しそうにチルは厨房へ……。
「ど、どうしましょう、カイさん。ここ、厨房がないです」
(まぁ、宿屋だもんな……)
苦笑しながらカイはチルを連れて女将に話をしにいく。
そして、宿の厨房を借りて、カグの実を切り分けるのだった。
城を守っている兵士は昨日とは違う人物のようだ。
ただ、やはり一人殺されたということもあるからか、城を守っている人数が一人増えて三人になっていた。
なるほどな。一応警戒はしているようだ。
ただ、兵士達には詳しい事情は知らされていないようだな。
人数が増えたことで油断しているようだった。
「あー……、こんな門の警備くらい一人でも大丈夫だろ……。なんで三人もいるんだよ……」
「良いじゃないか、暇なんだから」
「その分仕事時間も増えるんだぞ?」
「それもそうだったな……」
「いったい隊長は何を考えているんだ……」
ここまで油断しているなら潜入は簡単そうだった。
せっかくなので直接話をしてみることにした。
「すみません、少しよろしいですか?」
「あぁ……、なんだ、旅行客か? どうしたんだ」
「ここって王城……なんですよね?」
「もちろん見ての通りそうだが?」
「そうなんだ……。それじゃあここには王様とかが住んでるんですね……。それじゃあその護衛をしてる人たちはとっても強いんですよね?」
カイは普段見せないような輝いた目を見せる。
すると兵士はあきれ顔になりながら答えてくれる。
「もちろんとっても強いぞ。特にこの国には最強の兵士団長、マーグル様がいるからな」
兵士はどこか誇らしげだった。
「それなら安心ですね。ありがとうございます」
カイはお礼を言ったあとにその場を離れていった。
◇
警戒すべき相手は兵士団長だけ……。
おそらく国王のそばにいるんだろうなと想像がつく。
ただ、先に殺ってしまうと更に警戒心を煽ってしまうか。
少し考えた結果、とりあえずカイはまず王城へ潜入することを優先することにした。
すると城の中へ入っていく一般人の姿を見かける。
兵士に軽く会釈をしただけ。
それなのに兵士達も同じように軽く頭を下げただけで素通りしていた。
もしかしたら兵士達の話に何かヒントがあるかもしれないとカイは聞き耳を立てていた。
「今日はどんな料理を作ってくれるんだろうな?」
「カバンの中から何かの肉が見えた。きっと肉料理だぞ」
「カバンの中にはいる程度の量しかないのにか?」
「うっ……、そういえばそうだな。それじゃあどんな料理を作ってくれるんだろうな……」
どうやら先ほどのやつは料理人だったようだ。
さすがにこの王城内の料理を一人で担当してることはないだろう。
複数人いて当然……と考えると――。
「よし、ひとまずわかる範囲の情報はこのくらいだな」
あまり長居しても怪しまれるだろうからとカイは一旦この場を離れることにした。
◇
今度は町の中を見て回る。
今歩いているところは食品などが売られている場所で、結構人が多い。
(ここまで逃げて来られれば人混みに紛れることができるな)
カイはにやりと微笑む。
そして、商品を見て回っていると店員の一人がカイに声をかけていた。
「おっ、そこのにいちゃん。どうだい、一つ買っていかないか?」
店員が手に持ちながら進めてきたのは果物だった。
カイ自身はあまり欲しいとは思わないけど、チルへのお土産にはちょうどいいかもしれない。
せっかくなので、一つもらっていくことにした。
◇
「カイさん、お帰りなさい」
宿の部屋に戻るとチルが嬉しそうに出迎えてくれる。
「あぁ、ただいま。これ、チルへのお土産だ」
「あっ、カグの実ですね。とっても甘くて美味しいんですよ……」
チルははにかみながらカグの実を受け取ってくれる。
「それじゃあ早速皮をむいて、切り分けてきますね」
「いや、それはチルだけが食って……」
「せっかくですから一緒に食べましょう」
微笑むチルを見ていると断りにくい。
カイは苦笑まじりに頷いていた。
すると嬉しそうにチルは厨房へ……。
「ど、どうしましょう、カイさん。ここ、厨房がないです」
(まぁ、宿屋だもんな……)
苦笑しながらカイはチルを連れて女将に話をしにいく。
そして、宿の厨房を借りて、カグの実を切り分けるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる