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チルをブラークの店に送っていったあと、カイはアルマの店へとやってきた。
当然のことながらアルマは眠っている……と思ったのだが、意外なことに彼女は目を覚ましていて、まるでカイが来ることを予知していたようだった。
「珍しいな……」
「えぇ、トラブルに巻き込まれたんでしょ?」
「あぁ、だからあんたの魔法を借りにきたんだ」
「とりあえず後払いでいいわ。今回のことは少しだけ私にも責任があるから……」
「責任?」
「えぇ、誰に使ったかまでは知らないけど、強制の魔法が込められたスクロースを販売したの」
「……なるほどな。その相手がギルド長だったと……」
確かに強制の魔法を使えば無理やり服従させることもできる。
ただ、それ以外にも強制を使うには条件があった。
相手が弱っていること。
相手が同意すること。
その二つを満たした上で魔法を使うとようやく効くというものだ。
奴隷等に堕とすときに使う魔法になるのだが……。
「誘惑のやつが素直に聞いたとは考えにくいな。何か弱みを握ったのか……、それとも――」
最悪の予想もしつつ、まずは誘惑を治してもらわないと始まらない。
「それでアルマにはその症状が治せるのか?」
「もちろんよ。自分で作ったものを治せないと後々困るでしょ」
「じゃあ早速頼む」
「毎度あり。金貨三枚ね」
「後払いでいいんだろう?」
「えぇ、さっき言ったとおりよ。それじゃあ早速その患者のところまで案内してくれるかしら?」
「あぁ……」
俺は誘惑を捕らえている家へと戻っていく。
すると部屋の中ではまだ誘惑がぐるぐる巻きに拘束されながら眠っているようだった。
「これは……ひどいことをするわね。これをネタに揺すってもいいかしら?」
「駄目に決まってるだろう。元はお前がまいた種だろう? それでどうやったら治せるんだ?」
「簡単よ。こうやってそっと手を当てて――」
アルマは誘惑の手に自分の手を当てる。
するとアルマの手が光り出す。
「はい、もう終わりよ。これでもう治ったわ」
「治ったってことはやっぱり――」
「えぇ、間違いなく私のスクロースが使われていたわね」
「そうか……」
そうなるとやはりギルド長が――。
「う、うーん……」
考え込んでいると誘惑がゆっくり目を覚ます。
「あ、あれっ、ここは?」
「ここは俺の家だ」
俺が口に出すと誘惑が不思議そうな表情を浮かべる。
「あ、あれっ? どうして私が? それにあなたは確かギルドの職員の――」
「そんなことはどうでもいい。それよりも何があったんだ?」
「そ、そうね……。た、確か私はギルド長に捕まってそれで――」
誘惑が頭を押さえる。
もしかして、無理矢理記憶を封じられた障害が――。
「そんな障害はないわよ。ただ記憶が混濁しているだけね。ゆっくり思い出してみて……。一体何があったのかしら?」
アルマの目が少し光ると誘惑が少しうつろな目になりながらゆっくりと語り出す。
「わ、私はギルド長に連れられて、そして、そこで無理矢理口を開かそうとしたの」
「一体どんなことを吐かせようとしたのかしら?」
「暗殺王の姿を――よ。もちろん私は拒んだわ。そうじゃないと私が殺されてしまうもの。すると今度は吐かないと殺しの冒険者をけしかけると言ってきたの。どう転んでもナンバーズに殺されてしまう。そう思ったから必死に命乞いをしたわ。すると、『私の言うことを聞くなら命だけは助けてやる』と言われて頷いてしまったの」
なるほど……。確かに命がかかってるとなると必死にもなるか……。
「わかった。それでどうして俺を狙ったんだ?」
「それはわからない。ただ、それで全て解決するからと命令されて仕方なく――」
なるほどな。俺が向こうを殺すタイミングを伺っていたのと同時に向こうも俺を殺そうとしていたんだな。理由はやはり俺の正体がばれたか、疑うレベルになっているのだろう。
当然のことながらアルマは眠っている……と思ったのだが、意外なことに彼女は目を覚ましていて、まるでカイが来ることを予知していたようだった。
「珍しいな……」
「えぇ、トラブルに巻き込まれたんでしょ?」
「あぁ、だからあんたの魔法を借りにきたんだ」
「とりあえず後払いでいいわ。今回のことは少しだけ私にも責任があるから……」
「責任?」
「えぇ、誰に使ったかまでは知らないけど、強制の魔法が込められたスクロースを販売したの」
「……なるほどな。その相手がギルド長だったと……」
確かに強制の魔法を使えば無理やり服従させることもできる。
ただ、それ以外にも強制を使うには条件があった。
相手が弱っていること。
相手が同意すること。
その二つを満たした上で魔法を使うとようやく効くというものだ。
奴隷等に堕とすときに使う魔法になるのだが……。
「誘惑のやつが素直に聞いたとは考えにくいな。何か弱みを握ったのか……、それとも――」
最悪の予想もしつつ、まずは誘惑を治してもらわないと始まらない。
「それでアルマにはその症状が治せるのか?」
「もちろんよ。自分で作ったものを治せないと後々困るでしょ」
「じゃあ早速頼む」
「毎度あり。金貨三枚ね」
「後払いでいいんだろう?」
「えぇ、さっき言ったとおりよ。それじゃあ早速その患者のところまで案内してくれるかしら?」
「あぁ……」
俺は誘惑を捕らえている家へと戻っていく。
すると部屋の中ではまだ誘惑がぐるぐる巻きに拘束されながら眠っているようだった。
「これは……ひどいことをするわね。これをネタに揺すってもいいかしら?」
「駄目に決まってるだろう。元はお前がまいた種だろう? それでどうやったら治せるんだ?」
「簡単よ。こうやってそっと手を当てて――」
アルマは誘惑の手に自分の手を当てる。
するとアルマの手が光り出す。
「はい、もう終わりよ。これでもう治ったわ」
「治ったってことはやっぱり――」
「えぇ、間違いなく私のスクロースが使われていたわね」
「そうか……」
そうなるとやはりギルド長が――。
「う、うーん……」
考え込んでいると誘惑がゆっくり目を覚ます。
「あ、あれっ、ここは?」
「ここは俺の家だ」
俺が口に出すと誘惑が不思議そうな表情を浮かべる。
「あ、あれっ? どうして私が? それにあなたは確かギルドの職員の――」
「そんなことはどうでもいい。それよりも何があったんだ?」
「そ、そうね……。た、確か私はギルド長に捕まってそれで――」
誘惑が頭を押さえる。
もしかして、無理矢理記憶を封じられた障害が――。
「そんな障害はないわよ。ただ記憶が混濁しているだけね。ゆっくり思い出してみて……。一体何があったのかしら?」
アルマの目が少し光ると誘惑が少しうつろな目になりながらゆっくりと語り出す。
「わ、私はギルド長に連れられて、そして、そこで無理矢理口を開かそうとしたの」
「一体どんなことを吐かせようとしたのかしら?」
「暗殺王の姿を――よ。もちろん私は拒んだわ。そうじゃないと私が殺されてしまうもの。すると今度は吐かないと殺しの冒険者をけしかけると言ってきたの。どう転んでもナンバーズに殺されてしまう。そう思ったから必死に命乞いをしたわ。すると、『私の言うことを聞くなら命だけは助けてやる』と言われて頷いてしまったの」
なるほど……。確かに命がかかってるとなると必死にもなるか……。
「わかった。それでどうして俺を狙ったんだ?」
「それはわからない。ただ、それで全て解決するからと命令されて仕方なく――」
なるほどな。俺が向こうを殺すタイミングを伺っていたのと同時に向こうも俺を殺そうとしていたんだな。理由はやはり俺の正体がばれたか、疑うレベルになっているのだろう。
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