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二
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祐真が仕事に出かけた時間を見計らって、私は家に帰ってきた。
部屋の中はぐちゃぐちゃだった。
私を追い出した後、祐真は随分、好き勝手に過ごしていたらしい。
私は玄関で座り込んだ。
「もう……嫌だ」
その呟きは、ずっと我慢して、見て見ぬふりをしていた本心であった。
『まあ、恋人関係に口出しするつもりはないですけど、この先考え直したほうがいいと思いますよ?』
あの人の言葉を思い出す。
もし、それが今なのだとすれば。
決断した途端、体が自然と動き、私は貴重品や必要な物を集めて紙袋に詰めていた。
そのとき、玄関が開く音がした。
「あれ?咲楽戻ってたんだ」
何事もなかったように、明るい声で祐真が言った。
体が強ばるのを感じる。
「祐真こそ、仕事はどうしたの?」
「はあ?家開けて出れるわけないじゃん。お前のせいで休みとることになったんだろ」
だったら、私が帰ってきたとき、今までどこにいたの?
私は唇を噛み締め、出かけた言葉を無理矢理に呑み込む。
紙袋を見た祐真が、顔をしかめた。
「咲楽。何これ?」
「……」
顔を背け、黙ったまま項垂れていると、祐真の手が私の肩を掴んだ。そのまま強引に床に倒される。
「……やめて」
恐怖で声が震えてしまう。
私はもう祐真といたくない。
私の方こそ、言ってやる。
もう二度と、あんたの顔なんか見たくない、と。
「ねえ、咲楽。どうして俺を睨むの?」
見下ろす目が、冷たく、蔑んでいる。
「咲楽」
近づけられる顔を拒もうと、私は抵抗をする。
逃げようと足掻くが、祐真の押さえつける力の方が強く、微動だにしない。
「そんなに嫌がられると、さすがの俺でも傷つくよ」
祐真は私の両手を足で固定すると、服のボタンを外していく。
「嫌!やめて、祐真!」
祐真が私の首筋に舌を這わせようとしたとき、彼の動きが止まった。
「ねえ、咲楽。正直に答えて。どこでお風呂に入ったの?」
「それは……」
私は祐真の怯んだ隙きを突き、覆いかぶさる体をはね除けた。そして、財布が入った会社用の鞄や紙袋を掴むと、玄関に走った。
しかし、靴を履くのにもたつき、祐真に後ろから抱きつかれる。
「離して!」
大声でそう叫ぶが、祐真は私を引きずり戻そうとした。
「咲楽。俺は怒ってなんかいないよ。ただ、話し合いたいだけだよ」
「私は話すことなんてない」
「どこ行こうとしているのか知らないけれど、どこにも逃さないよ。咲楽」
耳元で言われる彼の言葉が気持ち悪い。
持っている鞄で振り払おうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。
「すみません、警察の者ですが」
助かった。私は靴を手に持つと、玄関のドアを開けて飛び出した。
男性の警察官が、飛び出してきた私を見て驚き、目を丸くする。
私は警察の人の横をすり抜け、無我夢中で走って逃げた。
「ちょっと、君?!」
「咲楽!!」
祐真は私に行く所なんて、どこにもないと思っているだろう。私が向かっている場所。そこはーー。
五月女さんのマンションに着くと、玄関の花壇の縁に腰を下ろし、缶コーヒーを飲む彼の姿があった。
「五月女さん、どうしてここに?」
五月女さんは私に振り返り、あの時と同じように溜め息を吐いた。
「だから、それは俺の台詞。また裸足で歩いてる」
ここまで止まらず、一気に走ってきたので、靴を履くことを忘れていた。
「五月女さん、私……」
その先の言葉が見つからなくて、迷っていると、五月女さんが私の前に来て、自分の上着を肩にかけてくれた。
「やっぱ、警察呼んでおいて正解だったな」
「え?じゃあ、あの警察の人は」
「俺が電話した」
私は、五月女さんの上着を胸の前で合わせて、握りしめた。
「あの、私をここに置いてくれませんか?」
すると、五月女さんは私の頭に手を乗せた。
「言っときますけど、玄関は駄目ですよ」
「……!はいっ」
迷惑に思われるかもしれない。そう思っていたのに、彼は普通に、傍にいることを許してくれた。それだけで嬉しく、ホッとした。それと同時に、今さら祐真に襲われたときの恐怖が、また蘇って体が震えてしまう。
「……。宮木さん、ちょっと失礼します」
五月女さんは私の手から、持っていた荷物を取ると、私を横抱きにしてマンションに入っていく。
あまりに軽々と抱き上げるものだから、自分に体重があるのか心配になる。
「五月女さん!その、恥ずかしいので降ろしてもらえたら」
そう言うが、五月女さんは絶対に降ろそうとはしなかった。
「宮木さん。そんな大声出したら、マンションの住人が出てきますよ?」
「……はい」
せめて、ドキドキと鳴る煩い鼓動が、彼に伝わらないよう祈った。
しかし、家の中に入っても彼は私を抱いたままであった。
「どうせなら、風呂に入りますか?」
「え?風呂?」
それって、五月女さんと?一緒にお風呂に入るってこと?
顔が熱くなり、ますます心臓の鼓動が騒がしく鳴る。
「足洗うなら、もう風呂入ったほうが早いかなって」
「………。そうですね」
なんだそういうことだったのか、と勝手に舞い上がって沈む。
風呂場まで運んでもらい、降ろされた。
五月女さんって、もしかして、天然たらし?
私は頭をひねり、唸った。
風呂から上がり、寝間着に着替えて出た。
五月女さんは、また台所で缶ビールを呑んでいた。
「晩ご飯食べずに酒ですか?」
朝にも思ったが、食に関しては、とことん不健康な生活をしている。
「晩ご飯も一緒にとってるよ。ほら」
そう言って、私に見せたのは、枝豆と生ハムチーズのおつまみであった。
明日は、食材の買い物が大変そうだ。
「宮木さんの晩ごはんは……ゼリー飲料でいい?」
たぶんそれは、五月女さんの明日の朝ごはん。
「私も枝豆つまませてもらうのでいいです」
「じゃあ、残りは全部あげる」
枝豆だけでなく、生ハムチーズが乗った皿も渡される。
「酒は冷蔵庫の中にあるから、お好きにどうぞ」
「あ……はい」
喉が乾いていたので、お酒ではない飲み物をもらおうとしたが、見事に缶ビールしかなかった。
五月女さんが台所を出てしばらくすると、シャワーの音が聞こえてきた。その音だけで何か色々と想像してしまい……エロい。
祐真と同棲していたときは、別にシャワーの音なんて何ともなかったのに、やっぱり五月女さんだからだろうか。
「でも、いつまでもここにいることは、できないよね……」
まだ少し先の悩みに、私は一人呟き、テーブルに突っ伏した。
祐真の元から逃げてきたってだけで、まだきちんと別れてはいない。それに、彼は『逃さないよ』と言っていた。この先どうなるのか、不安だらけだし、怖い。
「……私は貝になりたい」
「それってホタテ?」
いつの間にか風呂場から出てきていた彼が、私を見下ろしていた。
髪の濡れた風呂上がりの五月女さん。エロいを越してどエロい。
「何で貝と言えば、ホタテなんですか」
「何となく?」
私は彼の答えに吹き出して笑った。
「宮木さん、これは?」
彼が隣に座ってきて、テーブルの上のコップを指した。
このコップは、あっちで使っていたもので、一つだけ持ってきたのだ。
ちなみに、入っている中身はビールではなく、ただの水道水。
「なんで水道水を?」
「だって、昨日はビールを呑んだから寝ちゃったんじゃないですか。起きてたら、五月女さんを床で寝させることなかったのに」
「へえ」
「何ですか?その目は……」
五月女さんが私を覗き込んで、からかうように微笑んできた。
「いや?そんなに俺と寝たかったのかな、って」
「……!」
ここで、そんなことはないと否定すれば、また彼にしてやられることになる。今日という今日こそ、ベッドで寝てもらわなくてはならない。
「そ、そうですよ。だって、私、一人では寝れませんから」
今度は五月女さんが吹き出して笑う。
「無理しなくていいですよ。宮木さん」
立ち上がって離れようとする彼の手を、私は咄嗟に掴んだ。
「無理してません!だから、一緒に寝てください」
自分がすごい口説き文句を言っている自覚はある。
また笑って流されると思っていたのに、五月女さんは口元を手で覆って私から目を逸らした。
「宮木さん。言おうと思ってたんですけど。こうやって簡単に、男の人の家に上がることをお願いしたり、誘うようなこと言うのは駄目ですよ」
「それは!五月女さんだから……」
急に恥ずかしくなって、掴んでいた手を離すと、五月女さんが腰を下ろして、私に詰め寄ってきた。顔が近くて、目が泳ぐ。
「それは、俺を男として見てないってこと?」
「そうじゃなくて。……五月女さんのことはちゃんと、男性だと意識はしています」
「意識してやってる?」
「……そうかも?」
五月女さんの口が耳元に寄せられる。そして、囁くような声で言われる。
「そこは曖昧にしないでください」
息が当たるだけで、腰にくるものがある。
自然と手が重なり、指が絡んだ。
頬に、唇に、首筋に、ゆっくりと丁寧にキスが落とされる。
「宮木さん。逃げるなら今ですよ?」
熱を帯びた目を向けられ、私は受け入れるように彼の首に手を回した。
「……あっ」
五月女さんの手が寝間着の中に侵入してきて、上にあるものを弄る。
彼は私の反応を確かめながら、指を滑らせる。
五月女さんにもっと触られたい。
私は首に回した腕に力を込め、彼を自分に引き寄せた。
静かに床に押し倒され、角度を変えて、私たちは何度も唇を重ね合わせた。
「ん……そ…とめ…さ」
頭が甘く痺れ、ぼうっとしてくる。揺れる視界の中で、映る彼の顔は、まるで別人のようで。
この人でもこんな顔をするんだ。そう思うと、酷くたまらなくなる。
いつの間に、五月女さんのことがこんなにも、好きになっちゃったんだろう。
初めてこの部屋に来たとき、泊める条件があると言われ、体を求められたらどうしようと不安に思った。それなのに、今は求められていることが嬉しい。
「宮木さん、何か考えてる?」
大きな手が私の髪を梳いて、頭をなでてくれる。
「五月女さんのこと、考えてます」
「俺のこと?」
「五月女さんのそういう顔や目、嫌いじゃないです。私」
「宮木さんのえっち」
彼は寝間着を捲り上げると、片方の胸の膨らみを強く揉み、もう片方は固くなった先を、舌で舐め始めた。
「……ぁあっ!」
私は思考も全て投げ出し、身を彼に委ねて、目を閉じた。
続
部屋の中はぐちゃぐちゃだった。
私を追い出した後、祐真は随分、好き勝手に過ごしていたらしい。
私は玄関で座り込んだ。
「もう……嫌だ」
その呟きは、ずっと我慢して、見て見ぬふりをしていた本心であった。
『まあ、恋人関係に口出しするつもりはないですけど、この先考え直したほうがいいと思いますよ?』
あの人の言葉を思い出す。
もし、それが今なのだとすれば。
決断した途端、体が自然と動き、私は貴重品や必要な物を集めて紙袋に詰めていた。
そのとき、玄関が開く音がした。
「あれ?咲楽戻ってたんだ」
何事もなかったように、明るい声で祐真が言った。
体が強ばるのを感じる。
「祐真こそ、仕事はどうしたの?」
「はあ?家開けて出れるわけないじゃん。お前のせいで休みとることになったんだろ」
だったら、私が帰ってきたとき、今までどこにいたの?
私は唇を噛み締め、出かけた言葉を無理矢理に呑み込む。
紙袋を見た祐真が、顔をしかめた。
「咲楽。何これ?」
「……」
顔を背け、黙ったまま項垂れていると、祐真の手が私の肩を掴んだ。そのまま強引に床に倒される。
「……やめて」
恐怖で声が震えてしまう。
私はもう祐真といたくない。
私の方こそ、言ってやる。
もう二度と、あんたの顔なんか見たくない、と。
「ねえ、咲楽。どうして俺を睨むの?」
見下ろす目が、冷たく、蔑んでいる。
「咲楽」
近づけられる顔を拒もうと、私は抵抗をする。
逃げようと足掻くが、祐真の押さえつける力の方が強く、微動だにしない。
「そんなに嫌がられると、さすがの俺でも傷つくよ」
祐真は私の両手を足で固定すると、服のボタンを外していく。
「嫌!やめて、祐真!」
祐真が私の首筋に舌を這わせようとしたとき、彼の動きが止まった。
「ねえ、咲楽。正直に答えて。どこでお風呂に入ったの?」
「それは……」
私は祐真の怯んだ隙きを突き、覆いかぶさる体をはね除けた。そして、財布が入った会社用の鞄や紙袋を掴むと、玄関に走った。
しかし、靴を履くのにもたつき、祐真に後ろから抱きつかれる。
「離して!」
大声でそう叫ぶが、祐真は私を引きずり戻そうとした。
「咲楽。俺は怒ってなんかいないよ。ただ、話し合いたいだけだよ」
「私は話すことなんてない」
「どこ行こうとしているのか知らないけれど、どこにも逃さないよ。咲楽」
耳元で言われる彼の言葉が気持ち悪い。
持っている鞄で振り払おうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。
「すみません、警察の者ですが」
助かった。私は靴を手に持つと、玄関のドアを開けて飛び出した。
男性の警察官が、飛び出してきた私を見て驚き、目を丸くする。
私は警察の人の横をすり抜け、無我夢中で走って逃げた。
「ちょっと、君?!」
「咲楽!!」
祐真は私に行く所なんて、どこにもないと思っているだろう。私が向かっている場所。そこはーー。
五月女さんのマンションに着くと、玄関の花壇の縁に腰を下ろし、缶コーヒーを飲む彼の姿があった。
「五月女さん、どうしてここに?」
五月女さんは私に振り返り、あの時と同じように溜め息を吐いた。
「だから、それは俺の台詞。また裸足で歩いてる」
ここまで止まらず、一気に走ってきたので、靴を履くことを忘れていた。
「五月女さん、私……」
その先の言葉が見つからなくて、迷っていると、五月女さんが私の前に来て、自分の上着を肩にかけてくれた。
「やっぱ、警察呼んでおいて正解だったな」
「え?じゃあ、あの警察の人は」
「俺が電話した」
私は、五月女さんの上着を胸の前で合わせて、握りしめた。
「あの、私をここに置いてくれませんか?」
すると、五月女さんは私の頭に手を乗せた。
「言っときますけど、玄関は駄目ですよ」
「……!はいっ」
迷惑に思われるかもしれない。そう思っていたのに、彼は普通に、傍にいることを許してくれた。それだけで嬉しく、ホッとした。それと同時に、今さら祐真に襲われたときの恐怖が、また蘇って体が震えてしまう。
「……。宮木さん、ちょっと失礼します」
五月女さんは私の手から、持っていた荷物を取ると、私を横抱きにしてマンションに入っていく。
あまりに軽々と抱き上げるものだから、自分に体重があるのか心配になる。
「五月女さん!その、恥ずかしいので降ろしてもらえたら」
そう言うが、五月女さんは絶対に降ろそうとはしなかった。
「宮木さん。そんな大声出したら、マンションの住人が出てきますよ?」
「……はい」
せめて、ドキドキと鳴る煩い鼓動が、彼に伝わらないよう祈った。
しかし、家の中に入っても彼は私を抱いたままであった。
「どうせなら、風呂に入りますか?」
「え?風呂?」
それって、五月女さんと?一緒にお風呂に入るってこと?
顔が熱くなり、ますます心臓の鼓動が騒がしく鳴る。
「足洗うなら、もう風呂入ったほうが早いかなって」
「………。そうですね」
なんだそういうことだったのか、と勝手に舞い上がって沈む。
風呂場まで運んでもらい、降ろされた。
五月女さんって、もしかして、天然たらし?
私は頭をひねり、唸った。
風呂から上がり、寝間着に着替えて出た。
五月女さんは、また台所で缶ビールを呑んでいた。
「晩ご飯食べずに酒ですか?」
朝にも思ったが、食に関しては、とことん不健康な生活をしている。
「晩ご飯も一緒にとってるよ。ほら」
そう言って、私に見せたのは、枝豆と生ハムチーズのおつまみであった。
明日は、食材の買い物が大変そうだ。
「宮木さんの晩ごはんは……ゼリー飲料でいい?」
たぶんそれは、五月女さんの明日の朝ごはん。
「私も枝豆つまませてもらうのでいいです」
「じゃあ、残りは全部あげる」
枝豆だけでなく、生ハムチーズが乗った皿も渡される。
「酒は冷蔵庫の中にあるから、お好きにどうぞ」
「あ……はい」
喉が乾いていたので、お酒ではない飲み物をもらおうとしたが、見事に缶ビールしかなかった。
五月女さんが台所を出てしばらくすると、シャワーの音が聞こえてきた。その音だけで何か色々と想像してしまい……エロい。
祐真と同棲していたときは、別にシャワーの音なんて何ともなかったのに、やっぱり五月女さんだからだろうか。
「でも、いつまでもここにいることは、できないよね……」
まだ少し先の悩みに、私は一人呟き、テーブルに突っ伏した。
祐真の元から逃げてきたってだけで、まだきちんと別れてはいない。それに、彼は『逃さないよ』と言っていた。この先どうなるのか、不安だらけだし、怖い。
「……私は貝になりたい」
「それってホタテ?」
いつの間にか風呂場から出てきていた彼が、私を見下ろしていた。
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「何となく?」
私は彼の答えに吹き出して笑った。
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ちなみに、入っている中身はビールではなく、ただの水道水。
「なんで水道水を?」
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「へえ」
「何ですか?その目は……」
五月女さんが私を覗き込んで、からかうように微笑んできた。
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「……!」
ここで、そんなことはないと否定すれば、また彼にしてやられることになる。今日という今日こそ、ベッドで寝てもらわなくてはならない。
「そ、そうですよ。だって、私、一人では寝れませんから」
今度は五月女さんが吹き出して笑う。
「無理しなくていいですよ。宮木さん」
立ち上がって離れようとする彼の手を、私は咄嗟に掴んだ。
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自分がすごい口説き文句を言っている自覚はある。
また笑って流されると思っていたのに、五月女さんは口元を手で覆って私から目を逸らした。
「宮木さん。言おうと思ってたんですけど。こうやって簡単に、男の人の家に上がることをお願いしたり、誘うようなこと言うのは駄目ですよ」
「それは!五月女さんだから……」
急に恥ずかしくなって、掴んでいた手を離すと、五月女さんが腰を下ろして、私に詰め寄ってきた。顔が近くて、目が泳ぐ。
「それは、俺を男として見てないってこと?」
「そうじゃなくて。……五月女さんのことはちゃんと、男性だと意識はしています」
「意識してやってる?」
「……そうかも?」
五月女さんの口が耳元に寄せられる。そして、囁くような声で言われる。
「そこは曖昧にしないでください」
息が当たるだけで、腰にくるものがある。
自然と手が重なり、指が絡んだ。
頬に、唇に、首筋に、ゆっくりと丁寧にキスが落とされる。
「宮木さん。逃げるなら今ですよ?」
熱を帯びた目を向けられ、私は受け入れるように彼の首に手を回した。
「……あっ」
五月女さんの手が寝間着の中に侵入してきて、上にあるものを弄る。
彼は私の反応を確かめながら、指を滑らせる。
五月女さんにもっと触られたい。
私は首に回した腕に力を込め、彼を自分に引き寄せた。
静かに床に押し倒され、角度を変えて、私たちは何度も唇を重ね合わせた。
「ん……そ…とめ…さ」
頭が甘く痺れ、ぼうっとしてくる。揺れる視界の中で、映る彼の顔は、まるで別人のようで。
この人でもこんな顔をするんだ。そう思うと、酷くたまらなくなる。
いつの間に、五月女さんのことがこんなにも、好きになっちゃったんだろう。
初めてこの部屋に来たとき、泊める条件があると言われ、体を求められたらどうしようと不安に思った。それなのに、今は求められていることが嬉しい。
「宮木さん、何か考えてる?」
大きな手が私の髪を梳いて、頭をなでてくれる。
「五月女さんのこと、考えてます」
「俺のこと?」
「五月女さんのそういう顔や目、嫌いじゃないです。私」
「宮木さんのえっち」
彼は寝間着を捲り上げると、片方の胸の膨らみを強く揉み、もう片方は固くなった先を、舌で舐め始めた。
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