270 / 476
第262話:ぐちゃぐちゃでぬちゃぬちゃ。
しおりを挟む「ラムちゃん! こいつら全部で何匹くらい居る!?」
上空で成り行きを見守っているラムに確認を取ると「二百はおるのう」と絶望的な言葉が返ってきた。
つまり俺達は今から……。
「こいつら全部に一度飲み込まれなきゃいけないって事になるわね……はは、私汚されちゃう……」
ティアの表情から覇気が消え、感情が消え、無になった。
「お、おい……ほかに何かないのか? 例えば口開けた瞬間に口の中に魔法ぶち込むとかさ」
ティアはゆっくりこちらに振り向いて、力なく首を横に振った。
そして。
遠くからびゅーん! と伸びてきたぬめぬめしたピンク色の何かに絡めとられて飛んで行った。
「ティアっ!?」
どうやらそれはエリマキワニガエルの舌だったようで、ティアは抵抗する事もなくその口の中へ消えていった。
「ひ、ひぇぇ……ごしゅじん、ど、どどどどうしたら……」
「わ、わからん……!」
ぼばんっ!
エリマキワニガエルの腹部が勢いよく破裂し、あっさりと息絶える。
ティアが体内からやってくれたらしい。
しかし、ティアは全身頭からつま先までぬちゃぬちゃした粘液まみれになっていて、無表情なのに今にも泣き出しそうな雰囲気だった。
ティアはこちらにチラっと視線を向けると、グッと親指を立てサムズアップし、そのまま親指でエリマキワニガエルを指さす。
お前らも早くやれと言わんばかりだった。
「ネコ……覚悟を決めろ。いいか、飲み込まれたら体内から攻撃だ。分かったな?」
……返事は無い。
「ネコ……?」
ネコの居た場所を見ると、既に彼女はそこにおらず、別方向からの舌に絡めとられて今まさに丸呑みされたところだった。
「あぁ……、ネコまで……」
すぐにエリマキワニガエルの腹を掻っ捌いてぬっちゃぬちゃのネコが現れた。
その眼からは光が失われ、無論表情からいつものアホ面と笑顔は消失していた。
エリマキワニガエルの集団は、仲間が無残に殺されているというのに全く引こうとはせず、ただひたすらに襲い掛かってくる。
まるで蟻の軍隊のようだ。
個がいくら死のうが気にしない。種として生き残ればそれでいい。
そんな無茶苦茶な力強さを感じる。
俺は、恥ずかしながらこの敵から逃げたいと思ってしまった。
ぐちゃぐちゃぬちょぬちょになりながら坦々とエリマキワニガエルを始末していくティアとネコを置いて、逃げてしまいたいと思ってしまった。
『ミナト君、覚悟を決めなさい! 君が率先してこいつらを倒すのよ!』
……よし、逃げよう!
『……えっ? 嘘、本気で言ってる?』
こんな奴等の相手してられるかーっ!
俺はその場から逃走しようとした。割と本気で逃げようと思った。
その時だ。
「ミナト、流石にそれはダメじゃろ……諦めよ」
天から幼女の声。
そして俺が全力で蹴った筈の地面は、存在しなかった。
思い切りその場で足が空回り。
盛大にジメっとした湿地に頭から突っ込む。
「ぐえっ」
「天罰じゃ天誅じゃっケラケラケラ!」
本当にケラケラ言いながら笑う奴初めて見たよ!
「くっそ、こうなったらこの辺り一面吹き飛ばして消し炭にしてや……うわーっ!」
体制を整えようと思った時には俺の足に奴等の舌が絡みついていて、物凄い勢いで引き寄せられていく。
空中でなんとか舌を切りつけたものの、本当に一切効果がなく弾かれてしまった。
そして、大きく開けられたその口に放り込まれる。
視界が真っ暗になり、次の瞬間勢いよく溢れ出したねとねとした液体が俺の身体に降り注ぎ、そのまま狭い食道へ流し込まれていく。
生暖かいぬめぬめする気持ち悪いぃぃぃっ!
食道自体はとても短く、その後ぼとりと少し広い場所へ落とされた。腰から下くらいまでねとねと溶液で満たされている。
ここが胃で、この液体は胃酸か何かのようだ。
皮膚がほんのりピリピリするのを感じる。
『さっさと脱出しないと溶かされちゃうわよ!』
さすがにもうドラゴン並の皮膚強度になってる俺はそうそう溶かされたりしないだろう?
『いや、君じゃなくて……』
まぁいい、早くこんな所から出よう。
胃の中で適当な魔法を炸裂させると、いとも簡単にはじけ飛びでろでろの胃酸と共に青空の下へ帰還する。
こんな事をあと何回繰り返せばいいんだ……?
単純計算で敵が二百体前後だとした場合、こちらの戦力は三人。
一人あたま六十~七十体程度倒さなければいけない計算になる。
これを後七十回繰り返せっていうのか……?
俺はともかくティアやネコは大丈夫だろうか? 皮膚が溶かされてしまうのでは……?
『安心して。こいつの胃液は長時間浸かり続けたりしない限り大丈夫よ。人体はね』
人体は、ってどういう……?
「ってうわーっ!」
今度は別のエリマキワニガエルに飲み込まれる。
先程とまったく同じで、真っ暗になってねめぬめをぶっかけられて飲み込まれて……ぼちゃんと胃液プールに放り込まれて胃をぶち破って生還。
「うえっ、気持ち悪っ……」
ティアが言ってたのはこういう意味か……。
人としての尊厳とか、大事な物ををぐちゃぐちゃぬちゃぬちゃに汚された気分。
なんかもう、泣きそう。
0
あなたにおすすめの小説
ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした
黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。
死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。
絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。
これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる