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第422話:黒歴史の夜。
しおりを挟む「ん……うぅん……」
なんだか異常に寝苦しい。
頭を悩ませる事が多すぎて満足に眠る事も出来なくなってしまったんだろうか。
いつの間にか布団を押しのけてしまっていたようなので寝ぼけながら布団を掴む。
「にゃぁ♪」
……にゃぁ?
「ごしゅじんってばだいたんですぅ♪」
あれこれ悩み過ぎて幻聴が聞こえたんだ。
そうに違いない。
万が一俺のベッドにネコが潜り込んでいたんだとしてもそれがどうした。
よくある事だし今更気にする事じゃない。
無視して寝てしまうに限る。
掴んだ布団を自分の方へ引き寄せようとして、違和感に気付く。
この布団随分あったけーな。
「ごしゅじんいたいいたいいたいですーひっぱらないでくださいよぅ……」
あぁ、どうやらネコが布団に潜り込んでるのは確定らしい。
「お前なぁ……別に勝手に潜りこむのはいつもの事だから驚きゃしないけどさぁ……いい加減に……」
頭向きを変えてネコの居る方を向く。
「ぎゃーっ!!」
「ふにゃぁぁっ♪」
俺が布団だと思って掴んでたのは、ネコの、む、む、むむむ……!!
「ごしゅじん……ちょっと痛いですぅ」
「バカ野郎なんで服着てねぇんだテメェ!!」
俺の隣には全裸のネコがいて、俺が鷲掴みにしてたのはネコの胸だった。
「ごしゅじんだって服脱いでるじゃないですかぁ」
「俺は下着はつけとるわいボケェ!!」
『取り乱し過ぎて面白い通り越して軽く引くわ』
「ど、どどどどういうつもりだキサマ!」
「キサマじゃなくてユイシスですよぉ?」
「知っとるわい! 何しに来やがった!」
ネコはにっこりと笑った。
「私の名前ちゃんと覚えてますぅ?」
「な、なんだよ急に」
「私がなんの為に来たかって聞いたじゃないですかぁ」
「お前の名前……? ユイシス・ウィンザー……」
「にゃんにゃん♪」
「バカボケコラァッ!!」
ユイシスが突然俺に覆いかぶさって来た。
「ごしゅじん、そろそろ私ともそういう事したっていいじゃないですかぁ。レイラちゃんばっかりズルいですぅ!」
「ま、待て! レイラとの事は誤解なんだってば!」
「でも一緒に寝たんですよねぇ?」
「……そ、それは」
『否定は出来ないわよねぇ本当だもの』
あれは脅されて……!
「だから私、もう引きませんからね? 今日こそ覚悟してくださいですぅ♪」
「待ってくれ……! 話せば分かる!」
「ダメですぅ。ごしゅじんはなんだかんだ言い訳して絶対逃げちゃうので今日は逃がしませんよぅ」
ネコが俺を押し倒したような形で上からじゅるりと舌なめずりをした。
えっろ……!
『この状況でそう思えるなら大したもんよ。もうなりゆきに任せちゃえばいいんじゃないかしら?』
「ごしゅじん……今私を受け入れてくれたら耳も尻尾も触り放題ですよぅ?」
「うぐっ……お前、それは卑怯だろ……!」
『全裸の女子よりけも耳尻尾な所なのが君らしくていいと思うわ』
「うおぉぉ頭の中のママドラがうるせーっ!」
「ママドラさん? イルヴァリース様、もし私がここでごしゅじん食べちゃっていいならしばらく見守ってて下さい」
「お、おい目が正気じゃないぞ。まて、おいどこ触ってやがるやめろ!!」
ネコが俺のへその辺りに指を触れ、そのままつーっと胸元まで指を這わせていく。
ぞぞぞっと寒気なのかなんなのか分からない感覚が身体を駆け巡り、俺はもう限界だった。
「ネコ……! さすがにこれ以上はダメだすまんっ!」
ここまで想いをストレートにぶつけてきたネコに対して失礼だとは思う。
だけど、これ以上は俺がどうかしてしまいそうだった。
それが男としてなのか女としてなのかすら分からない状態なのが最悪に終わってる。
転移魔法を使いその場から脱出。
家の上空へ逃れた。
「……はぁ、はぁ……あの馬鹿ネコ……!」
「はぁ、お主そんな恰好で何しとるんじゃ」
ふいに声をかけられビクリと身体が跳ねる。
「ユイシスに言われて見張っておればやっぱり逃げ出しおったか。後続の為にも多少進展してもらわにゃ困るのじゃがのう」
声のする方向へ振り向くと、ラムが屋根の上に座り込んで呆れ顔で俺を見上げていた。
「ら、ラムちゃん? こんな所で何を……」
「だから見張りじゃよ。ちなみにここから更
遠くへ逃げようとしても無駄じゃ。転移しようとしたら即妨害かけるのじゃ」
「ら、ラムちゃんまで…」
まさかラムまでネコに加担していると思わなかった。
「それに、下着一枚でどこへいくつもりだったんじゃこの破廉恥者め」
いやいやもっと破廉恥な奴が部屋に居るんだけど!?
「という訳じゃからお主はもう一度やり直しじゃ」
ラムに何か言い返そうとした瞬間、無理矢理ラムの強制転移で俺は自室に舞い戻った。
どすんと床に落下し腰を打つ。
「いっでぇ……!」
「ごしゅじん……逃げても無駄だって言いましたよねぇ?」
「く、来るな……! 近付くなーっ! 誰か、誰か助けてくれーっ!!」
ラムのやつ俺を魔力の鎖で雁字搦めにしやがった……!
「ふふふっ、騒いでも誰も来ませんよぉ?」
そうだ、シルヴァの奴が妙に意味深な事を言っていた。
今日は誰も家に居ないし邪魔者はいないとかなんとか。
それに、覚悟を決めろと。
「畜生シルヴァの奴までグルかよぉぉぉ!!」
「ごしゅじん……私の事嫌いですかぁ?」
違う、そうじゃない。
そうじゃないんだがそうじゃない!
「落ち着け、無理矢理するような事じゃないだろ……!」
「私、もう決めたんですよぉ。いつまでも受け入れてもらえず逃げられてたらいつの間にか他の人に持っていかれちゃうんじゃないかなーって思って。だから、今日何がなんでもおいしく頂いちゃおうって」
ネコの目が怪しく輝いている。
裸体の彼女は四つん這いになってゆっくりと俺に迫り、俺をベッドまで引きずっていくとぺろりと舌を出した。
「ひ、ひぃぃ……」
「怯えちゃって可愛いですぅ」
「た、たすけ……」
「だーめっ♪」
そこから先、この日の事は……。
もう何も語りたくない。
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