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第2話 決行前夜
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玲於に家出を持ち出されたあの日から、6 日がたった。
家出をするかしないか決める日まであと1日。即ち、生まれて初めて私の意思でものを決定するまであと1日しかない、ということだ。
家出はいけないこと。そう分かっているから。しては行けない、とわかっているから。でも、決められない。なんでなんだろう。自分の行先も決められない自分に、また悲しみを抱く。あの日から玲於が来なくなったことにすら、悲しみを抱く。一体私は、あと何回悲しめばいいんだろう。
あと何回悲しみを味わえば、「楽しい」だとか、「嬉しい」みたいな、明るい感情を持つことが出来るのだろうか。
そう考えても、出てくるのはなんとも形容しがたい悲しみだけ。
知らぬ間、涙が溢れる。
「…ぅっ…うぅっ…。」
「うるせぇ!!黙れブス!」
何度聞いたか分からない怒号とともに、拳が飛んできた。
「っ…がっ……」
「夜中にメソメソ泣くんじゃねえよクソアマが!てめえなんて生まれてこなきゃ良かったんだ!!死ね!!」
「うぅ…」
涙が溢れる。泣くななんて言われても、悲しいんだから仕方ない。でも怒りは出てこない。やり場のない悲しみをぶつける場はない。すぅっとこの悲しみがどこかに溶けるのを、ただ待つしかない。このまま待てば、またすぐ大丈夫になるはず。大丈夫。大丈夫。
それまではそうだった。
でも、ダメだった。玲於が来ないからかもしれない。誰とも話していないからかもしれない。理由は分からないけど、どんなに時間が経っても涙が出てくる。
「ぇ…っ?どうして…っ!どぅ…して!」
「あ゛ぁ!?黙れって言ったのが聞こえなかったかこのクソ野郎!…わかった!死にてぇなら殺してやる!」
「…!まって…ちがう、ちがうの!!」
「なにがちがうってんだぁぁぁぁ!」
ぶん
「あっ」
私は____死を、覚悟した。
家出をするかしないか決める日まであと1日。即ち、生まれて初めて私の意思でものを決定するまであと1日しかない、ということだ。
家出はいけないこと。そう分かっているから。しては行けない、とわかっているから。でも、決められない。なんでなんだろう。自分の行先も決められない自分に、また悲しみを抱く。あの日から玲於が来なくなったことにすら、悲しみを抱く。一体私は、あと何回悲しめばいいんだろう。
あと何回悲しみを味わえば、「楽しい」だとか、「嬉しい」みたいな、明るい感情を持つことが出来るのだろうか。
そう考えても、出てくるのはなんとも形容しがたい悲しみだけ。
知らぬ間、涙が溢れる。
「…ぅっ…うぅっ…。」
「うるせぇ!!黙れブス!」
何度聞いたか分からない怒号とともに、拳が飛んできた。
「っ…がっ……」
「夜中にメソメソ泣くんじゃねえよクソアマが!てめえなんて生まれてこなきゃ良かったんだ!!死ね!!」
「うぅ…」
涙が溢れる。泣くななんて言われても、悲しいんだから仕方ない。でも怒りは出てこない。やり場のない悲しみをぶつける場はない。すぅっとこの悲しみがどこかに溶けるのを、ただ待つしかない。このまま待てば、またすぐ大丈夫になるはず。大丈夫。大丈夫。
それまではそうだった。
でも、ダメだった。玲於が来ないからかもしれない。誰とも話していないからかもしれない。理由は分からないけど、どんなに時間が経っても涙が出てくる。
「ぇ…っ?どうして…っ!どぅ…して!」
「あ゛ぁ!?黙れって言ったのが聞こえなかったかこのクソ野郎!…わかった!死にてぇなら殺してやる!」
「…!まって…ちがう、ちがうの!!」
「なにがちがうってんだぁぁぁぁ!」
ぶん
「あっ」
私は____死を、覚悟した。
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