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第一章
運命の2択!真実or大嘘?
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「遅いじゃない! お兄ちゃんが時間どおりの電車で帰ってこないから、沙苗ひどい目に遭ってるんだよ」
少女は責め立てるように、抗議の視線で幸村を見上げた。
「俺が……?」
幸村は心の中で自らを指差さすと自問していた。
『お兄ちゃん』と呼ばれることに違和感はなかったし、ある意味において正しかった。
幸か不幸か幸村には実際、二つ下の妹がいたし呼び方も一言一句、アクセントまで同じである。
決定的に違うのは、幸村の妹は『ゆき』という名前であり、間違っても『沙苗』ではかった。
自分の母親に隠し子でもいない限り……
幸村は少女の澄み切った瞳の中に真意を求める。
少女は懇願していた。繊細なガラス細工のような瞳は、今にも壊れそうなくらい弱々しく見えた。
自分に残されている微かな希望を、すべて目の前にいる幸村に託しているように思えた。
「あの……」
少女に尋ねようとした瞬間、警察官が身を乗り出すようにして幸村の顔を覗き込む。
目の前で起こった奇跡の再会劇に、遠慮のない猜疑心の眼差しを向けていた。
視界に飛び込んだ内村に、幸村の意識が現実に戻る
瞬時に二つの選択を迫られた幸村は僅かな沈黙を作ると、意を決したように答えを口にした。
「うちの妹が何か?」
幸村の口から出た回答に警察官は驚き、少女は胸を撫で下ろす。
「妹? 本当か?」
「はい、沙苗はうちの妹です。僕、今年の春から東京の大学に通っていて、ちょっと早めの夏休みで帰ってきたんです」
実際は今から東京に戻るところだったが、改札口の前にいる自分が『到着したのか』、『帰るのか』なんて、目の前の警察官にわかるわけがない。
幸村は素早くリュックから学生証を取り出すと、警察官に提示する。
警察官はそれを手に取ると、訝しげに幸村の素姓を確認した。
「東京の大学ねぇ……」
一応は納得したというように幸村に学生証を返す。
彼が有能な警察官であったら、幸村の家にでも電話をかけて詳細を確認するところなのだが、どうやらそこまでの手間をかけるつもりはなさそうだった。
「一応帰る時間は母に言ってあったので、それで迎えに来てくれたんだと思います。だよね?」
「うん……本当はお母さんが車で迎えに来る予定だったんだけど、用事ができちゃって、それて私が……」
実の妹がいるおかげで、違和感無く少女と偽装のやり取りすることが出来た。
少女の方も機転を利かして、さもそれが事実であるかのように迫真の演技をしていた。
「じゃあ、何で正直に言わなかったんだ?」
警察官が容赦なく問い詰める。
「だって、お巡りさんがガンガン来るので怖くなっちゃって、私……」
先ほどまでの威勢はどこへやら――少女は今にも泣き出しそうな表情になると、小刻みに体を震わせる。
「沙苗は、過去に学校で虐めにあった経験があって……それでパニック障害に陥る時があるんです。外部からの高圧的な圧力を受けると特に……」
努めて冷静に説明する幸村の口調が、内村の中に罪悪感を生み出す。
「ほ、本官はただ……」
「ごめんなさい、お巡りさん」
助け船を出すように少女が謝罪する。相手の面目をつぶさないように――なおかつ事態の早い終息を促すには最良のタイミングだった。
「僕の方からも謝ります。申し訳ございませんでした」
「まあ、事情がわかれば、本官としてもそれでいいわけで……」
追い打ちをかけるように幸村が頭を下げると、内村は自らの心が広いことをアピールするべく大らかに笑ってみせた。
「ご迷惑をお掛けしました。さ、帰ろうか、沙苗」
「うん……あ、でもお母さんに買い物を頼まれてるの」
「じゃあ、一緒に買い物に行こうか」
「うん」
少女は元気に頷く。全てが円満に解決したように笑顔を浮かべると、幸村の腕を取って商店街の方に歩き出す。
「じゃあ、僕達はこれで……」
「あ、ああ……」
内村の中に釈然としない『何か』が残っていたが、仲睦まじく去っていく兄弟の後ろ姿を笑顔で見送った。
少女は責め立てるように、抗議の視線で幸村を見上げた。
「俺が……?」
幸村は心の中で自らを指差さすと自問していた。
『お兄ちゃん』と呼ばれることに違和感はなかったし、ある意味において正しかった。
幸か不幸か幸村には実際、二つ下の妹がいたし呼び方も一言一句、アクセントまで同じである。
決定的に違うのは、幸村の妹は『ゆき』という名前であり、間違っても『沙苗』ではかった。
自分の母親に隠し子でもいない限り……
幸村は少女の澄み切った瞳の中に真意を求める。
少女は懇願していた。繊細なガラス細工のような瞳は、今にも壊れそうなくらい弱々しく見えた。
自分に残されている微かな希望を、すべて目の前にいる幸村に託しているように思えた。
「あの……」
少女に尋ねようとした瞬間、警察官が身を乗り出すようにして幸村の顔を覗き込む。
目の前で起こった奇跡の再会劇に、遠慮のない猜疑心の眼差しを向けていた。
視界に飛び込んだ内村に、幸村の意識が現実に戻る
瞬時に二つの選択を迫られた幸村は僅かな沈黙を作ると、意を決したように答えを口にした。
「うちの妹が何か?」
幸村の口から出た回答に警察官は驚き、少女は胸を撫で下ろす。
「妹? 本当か?」
「はい、沙苗はうちの妹です。僕、今年の春から東京の大学に通っていて、ちょっと早めの夏休みで帰ってきたんです」
実際は今から東京に戻るところだったが、改札口の前にいる自分が『到着したのか』、『帰るのか』なんて、目の前の警察官にわかるわけがない。
幸村は素早くリュックから学生証を取り出すと、警察官に提示する。
警察官はそれを手に取ると、訝しげに幸村の素姓を確認した。
「東京の大学ねぇ……」
一応は納得したというように幸村に学生証を返す。
彼が有能な警察官であったら、幸村の家にでも電話をかけて詳細を確認するところなのだが、どうやらそこまでの手間をかけるつもりはなさそうだった。
「一応帰る時間は母に言ってあったので、それで迎えに来てくれたんだと思います。だよね?」
「うん……本当はお母さんが車で迎えに来る予定だったんだけど、用事ができちゃって、それて私が……」
実の妹がいるおかげで、違和感無く少女と偽装のやり取りすることが出来た。
少女の方も機転を利かして、さもそれが事実であるかのように迫真の演技をしていた。
「じゃあ、何で正直に言わなかったんだ?」
警察官が容赦なく問い詰める。
「だって、お巡りさんがガンガン来るので怖くなっちゃって、私……」
先ほどまでの威勢はどこへやら――少女は今にも泣き出しそうな表情になると、小刻みに体を震わせる。
「沙苗は、過去に学校で虐めにあった経験があって……それでパニック障害に陥る時があるんです。外部からの高圧的な圧力を受けると特に……」
努めて冷静に説明する幸村の口調が、内村の中に罪悪感を生み出す。
「ほ、本官はただ……」
「ごめんなさい、お巡りさん」
助け船を出すように少女が謝罪する。相手の面目をつぶさないように――なおかつ事態の早い終息を促すには最良のタイミングだった。
「僕の方からも謝ります。申し訳ございませんでした」
「まあ、事情がわかれば、本官としてもそれでいいわけで……」
追い打ちをかけるように幸村が頭を下げると、内村は自らの心が広いことをアピールするべく大らかに笑ってみせた。
「ご迷惑をお掛けしました。さ、帰ろうか、沙苗」
「うん……あ、でもお母さんに買い物を頼まれてるの」
「じゃあ、一緒に買い物に行こうか」
「うん」
少女は元気に頷く。全てが円満に解決したように笑顔を浮かべると、幸村の腕を取って商店街の方に歩き出す。
「じゃあ、僕達はこれで……」
「あ、ああ……」
内村の中に釈然としない『何か』が残っていたが、仲睦まじく去っていく兄弟の後ろ姿を笑顔で見送った。
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