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一郎と濁った目
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目が濁っているのが自分でよくわかる。透き通った空気を吸い込むことが、ふと、空を綺麗だなあと思うことができなくなったのは、いつからだったろうか。週末、男はライブハウスに行った。
※
“誰も聞いてないロックンロール!”
汚い格好で綺麗な目をした少年の歌を聞いた。濁った目から水が流れ出て、少し綺麗な気持ちになった気がする。
「僕ら、ベースがメンバーにいないから、探しているよ。どんな人でもいい、綺麗じゃなくてもいい、そこに本当があればそれでいいよ」
と目の綺麗な少年は言った。
目の濁った私でもいいのだろうか。なんとなく仕事に就いて、もう20年は働いた。
学生の頃、ギターを買ったつもりで、ベースを買ってしまったから、ああ、それでも私はベースを弾いていた。
あんまり上手くならなかったけど、目が濁り始めるその時まで、よく触っていた気がする。まだ、実家にあったろうか。と、考えていたら、少年と目があった。
「ねえ、CDがあったら、買わせておくれ。それで、、」吸い込まれるように、話しかけてしまった。そんな風に言うつもりはなかったのに、気がついたら名刺を渡していた。
「ベース、弾けるか分からないが、昔やってたんだ。私でもよければ、連絡をください。」
「すぐに連絡するよ、おじさん、綺麗な目をしているね」
少年の言葉に驚いた。私の目は、こんなに濁っているじゃないか。それとも、どうだろう、私は本当を生きていられたのかもしれない。
※
3日ほどして、少年から連絡がきた。一緒にバンドをやらないか、と、言っているがなかなか無茶な話だと思った。
ともかく、ベースを持って一度会う話になったので、実家に連絡を入れた。
そういえば、最近は家族ともあまり話していなかった。
「母さん、ベースはまだ家にあったろうか。」
そうメールを送ってから、ふと空を見上げたら、綺麗だと思った。
※
“誰も聞いてないロックンロール!”
汚い格好で綺麗な目をした少年の歌を聞いた。濁った目から水が流れ出て、少し綺麗な気持ちになった気がする。
「僕ら、ベースがメンバーにいないから、探しているよ。どんな人でもいい、綺麗じゃなくてもいい、そこに本当があればそれでいいよ」
と目の綺麗な少年は言った。
目の濁った私でもいいのだろうか。なんとなく仕事に就いて、もう20年は働いた。
学生の頃、ギターを買ったつもりで、ベースを買ってしまったから、ああ、それでも私はベースを弾いていた。
あんまり上手くならなかったけど、目が濁り始めるその時まで、よく触っていた気がする。まだ、実家にあったろうか。と、考えていたら、少年と目があった。
「ねえ、CDがあったら、買わせておくれ。それで、、」吸い込まれるように、話しかけてしまった。そんな風に言うつもりはなかったのに、気がついたら名刺を渡していた。
「ベース、弾けるか分からないが、昔やってたんだ。私でもよければ、連絡をください。」
「すぐに連絡するよ、おじさん、綺麗な目をしているね」
少年の言葉に驚いた。私の目は、こんなに濁っているじゃないか。それとも、どうだろう、私は本当を生きていられたのかもしれない。
※
3日ほどして、少年から連絡がきた。一緒にバンドをやらないか、と、言っているがなかなか無茶な話だと思った。
ともかく、ベースを持って一度会う話になったので、実家に連絡を入れた。
そういえば、最近は家族ともあまり話していなかった。
「母さん、ベースはまだ家にあったろうか。」
そうメールを送ってから、ふと空を見上げたら、綺麗だと思った。
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