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一緒に幸せになろう
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「これが全てだよ。今リュシーのことを好きなのは同情でも償いでもない。本当に心の底からリュシーが好きなんだ。これだけは信じてほしい」
アルの過去の話を聞いた。何より、驚いたのがアルが私と似たような待遇、いやそれは失礼か。私以上の待遇を受けていることだった。それ以外は、なんとも思わなかった。全ては私が盲目であったことが招いたことだから。それにしても、一国の第三王子が受けていい扱いではないと思う。それに、陛下だって自分の間違いで生まれた子なのにそこまで冷遇する必要があるのだろうか。
「アル、私は本当に過去についてはもう何も思ってないの。それより、あなたの待遇に衝撃を受けていたの」
私が言ったことに対し、アルは目を見開いていた。
「僕の待遇?」
「うん。普通じゃない。王子が受けていい待遇じゃないよ」
どうにかしてあげたい。そう思うけれど王家の問題だし、私がどうこう言えるものではない。きっと今の私は、公爵令嬢というだけでそれ以外に何もない空っぽの令嬢だ。王家に物申したければきっとレオン様をも超える賢者にならなければいけない。でも、アルはそれを望んでいないかもしれない。
「アル、今の待遇を変えたいと思ったことはある?」
「うーん。そこまで思ってないよ。だってリュシーと婚約者でいられれば僕は幸せだから」
そう屈託のない笑顔で笑うアルに私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「わかった。でも、アルが変えたいと願ったら私は全部の力を尽くして協力する。だから、すぐに教えて?」
「ありがとう、リュシー」
そう言って軽く私の頬にキスをした。
「アル!?」
そう声をあらげる私を気にしていないような微笑みをアルは浮かべた。
「そうやってリュシーはいつでも僕を喜ばせてくれる。感謝しきれないぐらいに」
「感謝されたいからやってるんじゃないよ。私がそうしたいだけ」
これは自己満足だ。私がリリアに嫉妬したせいで、レオン様が狂いアルの命も結果的に奪うことになってしまった。きっとアルは私のせいだとは思っていないだろうけれど。私にできることをしたいんだ。そう考えていると、頬をツンと突かれた。
「ねぇリュシー。もしかして僕が生贄になって死んでしまったこと、リュシーのせいだって思ってる?」
的確に当てられてしまいぎくっとした。図星だということを全面に出すように黙ってしまった。話さなければいけなかったのに、何を話せばいいかわからなかった。
「図星、だね」
そう言われてもっと体が固まった。アルはどんなことを言うだろうか。
「リュシー。そう思っているのであれば僕も君に一生をもって償いをする」
「それは!」
「それは嫌、だよね」
アルは私を優しく説得する。その声がなぜだか私の涙腺を刺激した。だけど、唇を食いしばり必死に我慢をした。
「リュシーが僕にそう望まないように、僕もリュシーに罪の意識を持ってほしくないんだ……あぁ、泣かないで。泣いてほしくないんだ」
必死に堪えていたはずのものが溢れ出してしまった。混乱しているアルが歪んだ世界ごしに見える。私にも泣いている理由がわからなかった。抑えようとしても、全くもって溢れるものは止まらなかった。
「リュシー。大丈夫、大丈夫。誰もリュシーのことは責めないよ。リュシーも大人の毒に蝕まれた一人なんだから」
赤子をあやすように、正面から私の背中に手をまわしポンポンとしてくれる。その手の温かさに、その優しさに何度も私は泣いてしまった。それはずっと私の涙が枯れるまでアルは続けてくれた。
「泣き止んだ?」
私は鼻を啜りながら頷く。あぁ、もうこんなに泣くなんて。きっと目も鼻も真っ赤になっているだろう。
「リュシー」
「うん?」
「過去のことなんか忘れて幸せに生きて」
「やだ」
断られることがないと思っていたアルはえっと小さく声をあげた。きっとその言葉は私を案じたもの。だけど、私はそこにアルがいないような物言いなのが気になった。だから。
「アルも一緒に、だよ。アルも一緒に幸せになるの」
駄々っ子のような私の物言いに、アルはふっと笑った。
「うん。そうだね。二人でだね」
オレンジ色に染まった日に照らされながら私たちは二人で笑った。これからの幸せを願いながら。
アルの過去の話を聞いた。何より、驚いたのがアルが私と似たような待遇、いやそれは失礼か。私以上の待遇を受けていることだった。それ以外は、なんとも思わなかった。全ては私が盲目であったことが招いたことだから。それにしても、一国の第三王子が受けていい扱いではないと思う。それに、陛下だって自分の間違いで生まれた子なのにそこまで冷遇する必要があるのだろうか。
「アル、私は本当に過去についてはもう何も思ってないの。それより、あなたの待遇に衝撃を受けていたの」
私が言ったことに対し、アルは目を見開いていた。
「僕の待遇?」
「うん。普通じゃない。王子が受けていい待遇じゃないよ」
どうにかしてあげたい。そう思うけれど王家の問題だし、私がどうこう言えるものではない。きっと今の私は、公爵令嬢というだけでそれ以外に何もない空っぽの令嬢だ。王家に物申したければきっとレオン様をも超える賢者にならなければいけない。でも、アルはそれを望んでいないかもしれない。
「アル、今の待遇を変えたいと思ったことはある?」
「うーん。そこまで思ってないよ。だってリュシーと婚約者でいられれば僕は幸せだから」
そう屈託のない笑顔で笑うアルに私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「わかった。でも、アルが変えたいと願ったら私は全部の力を尽くして協力する。だから、すぐに教えて?」
「ありがとう、リュシー」
そう言って軽く私の頬にキスをした。
「アル!?」
そう声をあらげる私を気にしていないような微笑みをアルは浮かべた。
「そうやってリュシーはいつでも僕を喜ばせてくれる。感謝しきれないぐらいに」
「感謝されたいからやってるんじゃないよ。私がそうしたいだけ」
これは自己満足だ。私がリリアに嫉妬したせいで、レオン様が狂いアルの命も結果的に奪うことになってしまった。きっとアルは私のせいだとは思っていないだろうけれど。私にできることをしたいんだ。そう考えていると、頬をツンと突かれた。
「ねぇリュシー。もしかして僕が生贄になって死んでしまったこと、リュシーのせいだって思ってる?」
的確に当てられてしまいぎくっとした。図星だということを全面に出すように黙ってしまった。話さなければいけなかったのに、何を話せばいいかわからなかった。
「図星、だね」
そう言われてもっと体が固まった。アルはどんなことを言うだろうか。
「リュシー。そう思っているのであれば僕も君に一生をもって償いをする」
「それは!」
「それは嫌、だよね」
アルは私を優しく説得する。その声がなぜだか私の涙腺を刺激した。だけど、唇を食いしばり必死に我慢をした。
「リュシーが僕にそう望まないように、僕もリュシーに罪の意識を持ってほしくないんだ……あぁ、泣かないで。泣いてほしくないんだ」
必死に堪えていたはずのものが溢れ出してしまった。混乱しているアルが歪んだ世界ごしに見える。私にも泣いている理由がわからなかった。抑えようとしても、全くもって溢れるものは止まらなかった。
「リュシー。大丈夫、大丈夫。誰もリュシーのことは責めないよ。リュシーも大人の毒に蝕まれた一人なんだから」
赤子をあやすように、正面から私の背中に手をまわしポンポンとしてくれる。その手の温かさに、その優しさに何度も私は泣いてしまった。それはずっと私の涙が枯れるまでアルは続けてくれた。
「泣き止んだ?」
私は鼻を啜りながら頷く。あぁ、もうこんなに泣くなんて。きっと目も鼻も真っ赤になっているだろう。
「リュシー」
「うん?」
「過去のことなんか忘れて幸せに生きて」
「やだ」
断られることがないと思っていたアルはえっと小さく声をあげた。きっとその言葉は私を案じたもの。だけど、私はそこにアルがいないような物言いなのが気になった。だから。
「アルも一緒に、だよ。アルも一緒に幸せになるの」
駄々っ子のような私の物言いに、アルはふっと笑った。
「うん。そうだね。二人でだね」
オレンジ色に染まった日に照らされながら私たちは二人で笑った。これからの幸せを願いながら。
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******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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