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2章 村での生活
27話 感受性の高さ故に……
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2章 27話
宿の一階に降りていくと、受付のカウンターのところで女将さんとラベンダーがなにかを食べながら談笑していた。
やはりおやつの時間か!
「お二人とも、こんにちは!」
俺が声をかけると、女将さんはともかくラベンダーは気付いていなかったから飛び上がって驚いた。
「ひゃっ!?」
「おはようさん! 昨日よりずいぶん顔色が良さそうじゃないか」
「そうですか? 今日は仕事に余裕があったからですかね」
女将さんは俺に挨拶を返しつつも、ラベンダーに呆れた顔を向けた。
「……ラベンダー……あんた、いくらなんでも驚きすぎじゃないかい?」
……初対面の時は、ラベンダーが過剰に驚いたことで酷い目に遭ったんだっけなぁ……
俺が遠い目で女将さんに吹っ飛ばされたことを思い出している時、ラベンダーは小声で女将さんに反論していた。
「だって……村で男の人の声を聞くことなんか、ほとんどないんだもん……」
「あんたこの間は先生とか言って懐いてただろ?」
「……いきなりだったし……」
女将さんはため息をついて、こめかみを押さえている……
「あんたねぇ……いきなりだったとしても、挨拶もしないでその態度はないだろう……?」
ラベンダーはあっと言う顔をすると、慌てて挨拶をしてきた。
「ごっごめんなさい先生! こんにちは!」
「あはは、気にしなくていいよ。改めてこんにちは!」
俺は苦笑しながら気にしなくていいよと言ったが、女将さんは渋い顔をしている。
まぁ、宿屋の娘がお客さんに対して挨拶も満足にできないのはまずいもんな。
「この子の人見知り、なんとかならないもんかねぇ……」
ため息と共に悩みを口に出した女将さんだが、ラベンダーには聞こえていなかったようだ。
しかし居ることに気付いていれば特に問題はなさそうだし、人見知りとは少し違うような……?
どっちかというと、精神的に少し弱くて驚きやすいだけと言うか……
そんなことを考えながらラベンダーを見やると、俺に許してもらえてほっとしたのか笑顔が戻っていた。
むしろ弾けるような笑みを浮かべているし、やはり人見知りとは違うだろう。
「女将さん、たぶんラベンダーは人見知りじゃないですよ」
「そうなのかい? じゃあなんであんなに驚きやすいのかね……」
「恐らく、凄く感受性が高いんじゃないかと。ラベンダーが気付いてない時は、動物の声とかにも驚いたりしてませんか?」
女将さんは少し考え込んでいたが、返事を返してきたのはラベンダーだった。
「先生、なんで分かったんですか?」
「簡単さ。俺も同じタイプだからだよ」
「そうなんですか!? ……とてもそうは思えないです……」
「いや、森とか入っても警戒しすぎて疲れちゃうくらいだからね」
現実の世界でも五人に一人はいると言われている、感受性が強くて刺激に敏感な体質の人。
良く言うビビりな人なんかはこれに当てはまるのかもしれない。
周りを気にしやすく色々なことに対して察しがいいが、非常に精神的なストレスに弱いのも特徴だ。
そしてここが一番の問題なのだが、五人に一人……つまり八割くらいの人には非常に理解されにくいと言うことになる。
なぜそんなことで驚くのか
なぜそんなにネガティブなのか
なぜそんなにすぐ疲れてしまうのか
こう言われることが良くある人は、その敏感な体質の人ではないかと思われる。
そういう俺も、その事でかなり悩んだものだ。
身近な人が誰も気にしないような音や匂いなどに過剰に反応していた俺は、異端児扱いだった……
人から色々と相談されることは多くても、こちらが相談できる相手はおらず……
同じような体験をしてきたお客さんと話す事がなかったら、未だに俺は植物しか話し相手がいないぼっちだったかもしれないな……
色々と嫌なことを思い出していると、頬に何かふわふわしたものが──
《リョウさん、大丈夫ですよ。私が付いてますから、ぼっちになんかさせません!》
不覚にも涙が出そうになってしまった。
「先生? そんな悲しそうな顔して、どうしたんですか……?」
いけない、同じような症状のラベンダーが居るんだった。
嫌なことを思い出してるのを察知される可能性も高いし、気を付けないとな。
「ごめんごめん、ちょっと昔の事を思い出しちゃってね」
「……丁度いいかもしれないね」
ふと、女将さんがなにかを呟いた。小声だったため聞き取れなかったが……
「ちょっとあんた……いや、リョウさん。お前さんにちょいと頼みがあるんだがね?」
真面目な顔で女将さんが頼みごとをしてきた。
しかしなんと言うか……女将さんにさん付けされるのは、鳥肌が立つな……
「俺の名前、良く覚えてましたね……と言うか、リョウでいいですよ」
「職業柄、顔と名前を覚えるのは得意なのさ」
俺の名前を覚えていたことに驚くと、女将さんはニヤッと笑いながらそう答えた。
うん、やはり女将さんに神妙な顔は似合わないよな!
「あんた……なんか失礼なこと考えてないかい?」
げっ……鋭い……
「そんなことないですよ! ところで頼みというのは?」
「誤魔化すのが下手だねぇ……ま、そこも信用できるところだがね」
誤魔化すのが下手で信用されるってのも……なんか複雑な気分だ……
「頼みなんだがね……他でもないラベンダーの事さ。あんた……リョウに時間があるときで構わないから、ラベンダーが過剰に驚くのをなんとかできないかい?」
難題だな……性質であって病気とかではないからな……どう答えるべきかな……?
宿の一階に降りていくと、受付のカウンターのところで女将さんとラベンダーがなにかを食べながら談笑していた。
やはりおやつの時間か!
「お二人とも、こんにちは!」
俺が声をかけると、女将さんはともかくラベンダーは気付いていなかったから飛び上がって驚いた。
「ひゃっ!?」
「おはようさん! 昨日よりずいぶん顔色が良さそうじゃないか」
「そうですか? 今日は仕事に余裕があったからですかね」
女将さんは俺に挨拶を返しつつも、ラベンダーに呆れた顔を向けた。
「……ラベンダー……あんた、いくらなんでも驚きすぎじゃないかい?」
……初対面の時は、ラベンダーが過剰に驚いたことで酷い目に遭ったんだっけなぁ……
俺が遠い目で女将さんに吹っ飛ばされたことを思い出している時、ラベンダーは小声で女将さんに反論していた。
「だって……村で男の人の声を聞くことなんか、ほとんどないんだもん……」
「あんたこの間は先生とか言って懐いてただろ?」
「……いきなりだったし……」
女将さんはため息をついて、こめかみを押さえている……
「あんたねぇ……いきなりだったとしても、挨拶もしないでその態度はないだろう……?」
ラベンダーはあっと言う顔をすると、慌てて挨拶をしてきた。
「ごっごめんなさい先生! こんにちは!」
「あはは、気にしなくていいよ。改めてこんにちは!」
俺は苦笑しながら気にしなくていいよと言ったが、女将さんは渋い顔をしている。
まぁ、宿屋の娘がお客さんに対して挨拶も満足にできないのはまずいもんな。
「この子の人見知り、なんとかならないもんかねぇ……」
ため息と共に悩みを口に出した女将さんだが、ラベンダーには聞こえていなかったようだ。
しかし居ることに気付いていれば特に問題はなさそうだし、人見知りとは少し違うような……?
どっちかというと、精神的に少し弱くて驚きやすいだけと言うか……
そんなことを考えながらラベンダーを見やると、俺に許してもらえてほっとしたのか笑顔が戻っていた。
むしろ弾けるような笑みを浮かべているし、やはり人見知りとは違うだろう。
「女将さん、たぶんラベンダーは人見知りじゃないですよ」
「そうなのかい? じゃあなんであんなに驚きやすいのかね……」
「恐らく、凄く感受性が高いんじゃないかと。ラベンダーが気付いてない時は、動物の声とかにも驚いたりしてませんか?」
女将さんは少し考え込んでいたが、返事を返してきたのはラベンダーだった。
「先生、なんで分かったんですか?」
「簡単さ。俺も同じタイプだからだよ」
「そうなんですか!? ……とてもそうは思えないです……」
「いや、森とか入っても警戒しすぎて疲れちゃうくらいだからね」
現実の世界でも五人に一人はいると言われている、感受性が強くて刺激に敏感な体質の人。
良く言うビビりな人なんかはこれに当てはまるのかもしれない。
周りを気にしやすく色々なことに対して察しがいいが、非常に精神的なストレスに弱いのも特徴だ。
そしてここが一番の問題なのだが、五人に一人……つまり八割くらいの人には非常に理解されにくいと言うことになる。
なぜそんなことで驚くのか
なぜそんなにネガティブなのか
なぜそんなにすぐ疲れてしまうのか
こう言われることが良くある人は、その敏感な体質の人ではないかと思われる。
そういう俺も、その事でかなり悩んだものだ。
身近な人が誰も気にしないような音や匂いなどに過剰に反応していた俺は、異端児扱いだった……
人から色々と相談されることは多くても、こちらが相談できる相手はおらず……
同じような体験をしてきたお客さんと話す事がなかったら、未だに俺は植物しか話し相手がいないぼっちだったかもしれないな……
色々と嫌なことを思い出していると、頬に何かふわふわしたものが──
《リョウさん、大丈夫ですよ。私が付いてますから、ぼっちになんかさせません!》
不覚にも涙が出そうになってしまった。
「先生? そんな悲しそうな顔して、どうしたんですか……?」
いけない、同じような症状のラベンダーが居るんだった。
嫌なことを思い出してるのを察知される可能性も高いし、気を付けないとな。
「ごめんごめん、ちょっと昔の事を思い出しちゃってね」
「……丁度いいかもしれないね」
ふと、女将さんがなにかを呟いた。小声だったため聞き取れなかったが……
「ちょっとあんた……いや、リョウさん。お前さんにちょいと頼みがあるんだがね?」
真面目な顔で女将さんが頼みごとをしてきた。
しかしなんと言うか……女将さんにさん付けされるのは、鳥肌が立つな……
「俺の名前、良く覚えてましたね……と言うか、リョウでいいですよ」
「職業柄、顔と名前を覚えるのは得意なのさ」
俺の名前を覚えていたことに驚くと、女将さんはニヤッと笑いながらそう答えた。
うん、やはり女将さんに神妙な顔は似合わないよな!
「あんた……なんか失礼なこと考えてないかい?」
げっ……鋭い……
「そんなことないですよ! ところで頼みというのは?」
「誤魔化すのが下手だねぇ……ま、そこも信用できるところだがね」
誤魔化すのが下手で信用されるってのも……なんか複雑な気分だ……
「頼みなんだがね……他でもないラベンダーの事さ。あんた……リョウに時間があるときで構わないから、ラベンダーが過剰に驚くのをなんとかできないかい?」
難題だな……性質であって病気とかではないからな……どう答えるべきかな……?
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