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「ただいま」
凌が出ていって暫くすると、ハルオが帰ってきた。
「……」
玄関先まで出迎えれば、靴を脱いで上がったハルオが、僕の背中に片腕を回して抱き締める。
「ごめん、遅くなって」
「……」
「はい、これ。一緒に食べようと思って買いに行ったら……思いの外遠くて」
身体を離したハルオが苦笑いをし、持っていたケーキ箱を僕に寄越す。
「……」
「雑誌に載る程、有名らしいよ。さくらは、知ってる?」
言いながらフード付きのパーカーを脱ぎ、リビングへと足を踏み入れる。受け取った箱をもう一度確認してみるけど、刻まれていた洋菓子店のロゴは見た事もないものだった。
「……わぁ、今日も美味そうだな」
パーカーをハンガーに掛け、ガラステーブルに並べられた料理を見たハルオが顔を綻ばせる。
「毎日幸せだよ。……疲れて帰ってきた俺を、さくらが出迎えてくれて。美味しい手料理まで食べられるなんてさ」
「……」
一体、どんな気持ちで言っているんだろう。
僕を、通い妻をしていたというセフレの人の代わりにしてる……?
重く嫌な感覚が、身体中を駆け巡る。
「今日、何かあった?」
食卓を囲んで開口一番、ハルオがいつもの台詞を吐く。
「……」
……何か、って。
この何気ない一言が、僕を憂鬱な気分にさせる。
「学校で何か、変わった事は?」
肉じゃがを箸で突きながら、ハルオがまたいつもの台詞を投げかける。
「……別に、何も」
「本当に?」
答えて直ぐ、探るような問いかけ。その刹那、喉の奥がキュッと締まる。
「うん……」
……何か、疑ってる?
答えながら、椀を持って味噌汁に口を付ける。
「……」
暫く僕の様子をじっと窺っていたハルオが、スッと視線を外す。そして茶碗から椀に持ち替え、僕と同じように味噌汁を啜る。
ズズ……
「……」
全ての行動を監視されているかのようで、居心地が悪い。
「今度の休み、二人で買い物に出掛けないか?」
「……」
澱んだ空気を払拭するかの如く、ハルオが再び口を開く。だけどその声に余裕はなく、かえって落ち着かない。
「いつも俺を支えてくれるさくらに、何かプレゼントしたいんだよ」
「……」
「服とか、どうかな。……余り持って無かったよね」
ハルオが、気遣うように僕の顔を覗き込む。
「……」
一見、選択肢がありそうな台詞。でも僕には、最初から選択肢なんてない。
「………、うん」
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