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宝石箱をひっくり返したよう、とはよく言ったもので。
ガラス張りの向こう──直ぐ足下に見える街路樹には、青と白が入り混じったLEDのイルミネーションが上品に輝き、遠く郊外へと連なる車のヘッドライトや赤色のテールランプが、不規則に光って見える。
これらを美しいだとか綺麗だとか感じて、人々を魅了するのは……本能的に闇が怖いからだろうか。
「……」
こういう景色なら、今までハイジと一緒に見てきた。
夜の繁華街をバイクで走り抜け、やっと見つけた格安ホテルの窓から、二人並んで眺めたのを覚えてる。
身体を重ねた温もりなら、今でも思い出せるのに。
何でだろう……思い出されるのは、竜一の事ばかり──
『この数ヶ月で、俺を忘れたとは言わせねぇぞ──工藤さくら』
『俺の留守中、他の男を咥え込みやがって……』
『……俺は、アゲハが嫌いだ』
ハロウィンの夜──集団レイプに遭い、繁華街の隅に捨てられた僕を見つけ出し、掬い上げてくれた竜一。
だけど、思わせぶりな態度や台詞を吐いておきながら、僕を簡単に手放した。
結局僕は──アゲハの身代わりにされただけ……
そう割り切れたら、どんなに楽だろう。
早く、忘れたい。
だけど。一度でも知ってしまった心地良い温もりや、力強い竜一の心音、心と心が触れ合ってひとつになっていく感覚は……もう、僕の細胞ひとつひとつに刻み込まれてしまっていて……忘れられそうにない。
「……」
そっと視線だけを動かして、空に向ける。
竜一の心は、まるでこの繁華街に浮かぶ夜空の星のよう。
眩い輝きに阻まれ、何処までも深い闇の向こうへと潜り込んでしまっていて。……全然、見えない。
*
「……きみ、一人?」
外を眺めていると、ガラスに薄らと映る僕の顔の隣に、小さな顔がぼんやりと映る。
驚いて振り返れば、シャンパングラスを片手に僕に微笑みかける、華やかな雰囲気の男性が立っていた。
「初めまして、だよね?」
色気のある二重のつり目。宝石のように輝く瞳。その目尻にあるセクシー黒子。スッと通った鼻筋。形の良い唇。白い歯。
それは、芸能界に疎い僕でも知ってる──人気俳優の、樫井秀孝。
「……」
キラキラと煌めく芸能人オーラを纏いながら、熟れた果実のような甘い匂いを辺りに漂わせ……驚く僕の鼻腔を柔らかく擽る。
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