17 / 62
魚 耳飾り 蜂蜜
注文した品が運ばれる。
湯気の立つ、鰯のトマトソーススパゲティ。
パスタの上に、焼いた鰯が丸ごとドンと乗ってるのかな……なんて、馬鹿な想像をしてしまったけど。解された鰯の身がトマトソースと絡まり、ねじ巻いたパスタにオリーブオイル、フレッシュバジルが彩り良く飾られていて……
「……美味しい」
「良かったです」
カルボナーラをフォークに巻き取りながら、誠が僕に微笑み掛ける。
もの静かで。落ち着いた大人の雰囲気。清潔感があって。優しくて。
向けられたその双眸は、間接照明の柔い光に照らされて……蜂蜜のようにとろっと甘く、色気を含み……
「………」
指先が、震える。
……こんなの、好きになっちゃう。
好きになっちゃうよ───
雨の匂いが微かに残る、裏路地。
煌びやかな光を放つ表通り。
駅までの道程を、並んで歩く。
「寒く、ないですか?」
「……はい」
答えながら、片手で胸元を押さえる。
……夢なら、まだ醒めないで。
もう少し、このままでいさせて……
冷たい空気に晒された手や頬から、集まった熱がどんどん奪われていく。
淋しい気持ちが募り、マフラーを持ち上げ鼻先を覆いながら、街のネオンが鮮やかに反射する、濡れた道路に視線を落とす。
もうすぐ、駅前。
夢のような時間は、もう終わる……
「……」
煌々とした駅構内。
最終に近い事もあり、乗り降りする人の数は少ない。キオスク等の店舗はシャッターが閉まり、閑散としたそこに物寂しい雰囲気が漂う。
「今日は、楽しかったです」
改札口前。向かい合って立つ誠が、僕に爽やかな笑顔を見せる。
「僕も、楽しかったです」
その笑顔につられ微笑みながら、悴む手をギュッと握る。
「………良かった……
良かったです。やっと、成宮さんの笑顔が見られて」
表情を大きく崩した笑顔。そこから滲み出る、柔らかな優しさ。
口角を綺麗に持ち上げたまま、瞬きを数回し──不意に伸ばされた大きな手に、頭を優しくぽんぽんされる。
……わ……
それだけで、熱い。
トクトクと、煩い程に心臓が早鐘を打ち──聞こえてしまったらどうしようと、俯く。
「……」
今日の事は全部、僕を慰める為の成り行き。そんなの、解ってる。
でも、こんな事までされたら……勘違いしちゃうよ──
最寄り駅から少し離れた住宅街にある、築二十年余のアパート。
足音を響かせながら階段を登り、一番奥にある自宅へと向かおうとして、足が止まる。
よく見れば、人影──外灯の僅かな光を取り込んだ薄闇の中、玄関ドアを背に誰かが座り込んでいる。
瞬間、映画のワンシーンを思い出し、ゾクッと背筋が凍った。
「………え、」
怖ず怖ずと近付いてみれば、踞っている人の耳元に、僅かに光るピアスが。
あれって、もしかして……
「……悠!?」
湯気の立つ、鰯のトマトソーススパゲティ。
パスタの上に、焼いた鰯が丸ごとドンと乗ってるのかな……なんて、馬鹿な想像をしてしまったけど。解された鰯の身がトマトソースと絡まり、ねじ巻いたパスタにオリーブオイル、フレッシュバジルが彩り良く飾られていて……
「……美味しい」
「良かったです」
カルボナーラをフォークに巻き取りながら、誠が僕に微笑み掛ける。
もの静かで。落ち着いた大人の雰囲気。清潔感があって。優しくて。
向けられたその双眸は、間接照明の柔い光に照らされて……蜂蜜のようにとろっと甘く、色気を含み……
「………」
指先が、震える。
……こんなの、好きになっちゃう。
好きになっちゃうよ───
雨の匂いが微かに残る、裏路地。
煌びやかな光を放つ表通り。
駅までの道程を、並んで歩く。
「寒く、ないですか?」
「……はい」
答えながら、片手で胸元を押さえる。
……夢なら、まだ醒めないで。
もう少し、このままでいさせて……
冷たい空気に晒された手や頬から、集まった熱がどんどん奪われていく。
淋しい気持ちが募り、マフラーを持ち上げ鼻先を覆いながら、街のネオンが鮮やかに反射する、濡れた道路に視線を落とす。
もうすぐ、駅前。
夢のような時間は、もう終わる……
「……」
煌々とした駅構内。
最終に近い事もあり、乗り降りする人の数は少ない。キオスク等の店舗はシャッターが閉まり、閑散としたそこに物寂しい雰囲気が漂う。
「今日は、楽しかったです」
改札口前。向かい合って立つ誠が、僕に爽やかな笑顔を見せる。
「僕も、楽しかったです」
その笑顔につられ微笑みながら、悴む手をギュッと握る。
「………良かった……
良かったです。やっと、成宮さんの笑顔が見られて」
表情を大きく崩した笑顔。そこから滲み出る、柔らかな優しさ。
口角を綺麗に持ち上げたまま、瞬きを数回し──不意に伸ばされた大きな手に、頭を優しくぽんぽんされる。
……わ……
それだけで、熱い。
トクトクと、煩い程に心臓が早鐘を打ち──聞こえてしまったらどうしようと、俯く。
「……」
今日の事は全部、僕を慰める為の成り行き。そんなの、解ってる。
でも、こんな事までされたら……勘違いしちゃうよ──
最寄り駅から少し離れた住宅街にある、築二十年余のアパート。
足音を響かせながら階段を登り、一番奥にある自宅へと向かおうとして、足が止まる。
よく見れば、人影──外灯の僅かな光を取り込んだ薄闇の中、玄関ドアを背に誰かが座り込んでいる。
瞬間、映画のワンシーンを思い出し、ゾクッと背筋が凍った。
「………え、」
怖ず怖ずと近付いてみれば、踞っている人の耳元に、僅かに光るピアスが。
あれって、もしかして……
「……悠!?」
あなたにおすすめの小説
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
キミが、僕を選ぶまで
天かす
BL
誰にも選ばれなかった僕を選んだのは、白い獣だった。
人間と、人間と以外の生物の特徴を併せ持つ“半人”が共に生きる世界。
この世界では、人は六歳から十六歳までの間に、自らのパートナーとなる半人の幼体を選び、育てる義務を負っている。
けれど深森 夜(フカモリ ヨル)は、十五歳になった今も、パートナーがいなかった。
周囲に置いていかれ、価値がないような痛みを抱えながらも、彼が半人を求め続けるのには理由がある。
ある日突然姿を消した幼馴染――薮颯太。
「彼は半人と共に消えたらしい」
その噂をきっかけに、夜は半人保護機関へ入るため、自分のパートナーを探し続けていた。
そんなある雨の日。
保護施設の奥で夜が出会ったのは、傷だらけで倒れた白い獣。
その出会いはやがて、選ぶはずだった少年と、選ばれることを望んでいた半人、二人の運命を大きく変えていく――。
これは、ずっと誰にも選ばれなかった少年が、たった一人の半人に選ばれるまでの物語。
そして、やがてその白い獣に平凡男子な夜が、溺愛執着されるまでの二人の出会いの話。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
📌本編モブ視点による、番外エピソード
「君はポラリス ― アンコール!:2年後の二人と俺と」を追加しました。