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誕生 ライター 傷跡
園を抜け、駅へと向かう。
意識しないよう、努めてきたのに。あれから殆ど会話が無くなり……俯きながら歩く。
「……少し、寄っていきませんか?」
立ち止まった誠が、僕に優しく声を掛ける。
見れば、見逃しそうな程細い脇道の入口に、お洒落な立て看板が置かれ……その奥に、カフェがあった。
「……、はい」
布製カバーの掛かったティーポットを持ち上げ、紅茶をカップに注ぐ。
柔らかい光が差し込み、キラキラと透き通る赤褐色の水色。そこに輪切りのレモンを落とせば、ふわっと一段明るくなる。
「ハッピー、バースデー!!」
奥の席にホールケーキを運んだ店員が、祝福の声を上げた。
立てた蝋燭に、業務用のライターで火を付けていく。そして、バースデーソングと共に手拍子が鳴り響いた後、わっと上がる歓喜の声。
「……思いがけず成宮さんと会えて、今日は楽しかったです」
整った唇からそんな言葉を紡がれ、僕の頬が熱く火照る。
「……あの、聞いても宜しいでしょうか?」
「はい……」
遠慮がちに尋ねる誠が、僕の首筋に視線を移した後、直ぐに逸らす。
「成宮さんは……お付き合いされてる方が、いらっしゃるのでしょうか」
「……え……」
驚きを隠せず、俯く。
「……」
話した方が、いいよね。
この痕を付けたのは、元彼だって──『元』彼……?
違う。元彼なんかじゃなくて……今も続いてる……彼氏……
やっと塞がりかけた、心の傷跡。
悠とすれ違ってしまった話を思い返せば、そこが疼いて、苦しい……
「成宮さんは、可愛らしくて。……その、すみません。僕には、どうしても可愛く見えてしまうんです」
「……」
瞬きを数回し、堅い表情ながら誠が僅かに頬を赤らめる。
「僕は、物心ついた時から……異性ではなく、同性に惹かれてしまうタイプの人間です。
ですので、以前居酒屋で、成宮さんが僕に言った言葉が……僕には、デートのお誘いにしか、聞こえませんでした………」
「──!」
テーブルの下に隠した両手を、ギュッと握り締める。
あの日……勇気を出して言った言葉の意図が、ちゃんと、伝わっていたなんて………
伏せたままの瞳が潤み、熱い涙がポロポロと零れ落ちる。
慌てて涙を拭おうとすれば、誠の指がスッと目の前に現れ……
濡れた頬に触れ、そっと横に引いた。
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