50 / 62
歩道橋 執着 百合
光り輝く白百合の蕾。
心無しか、クリニックに訪れた時よりも開いているような気がした。
会計を終え、外に出る。
院内の清潔な空気とは違い、排気ガスに塗れた街の空気。文明の恩恵を受けながらも、こんな薄汚れた空気を吸って生きていかなければならないのかと思うと……何だかいたたまれない。
駅に向かう途中、大きな歩道橋を渡っていると商業施設が見えた。その建物にある、大きな液晶スクリーン。プロモーション映像が流れた後、画面いっぱいに、デジタル時計が表示される。
その瞬間、ハッと我に返った。
「……悠、ごめん。もうすぐバイトの時間だから……」
「そこ、俺も行くわ」
「……え」
悠ののんびりとした返しに、驚く。
「バイトしてる双葉の姿、大輝が知ってて俺が知らないのは、何か不公平で癪に障るしな」
「……えぇっ、そういう理由……?!」
「そういう理由だよ」
慌てる僕の反応が面白いのか。悠がやけにニヤニヤする。
「……別に来たって、何にも面白くないよ」
「んだよ。大輝には見せられて、俺には見せたくねーのかよ」
「そうじゃないけど。……もぅ、遅刻しちゃう……!」
らちの明かない問答を繰り返す暇はなく。悠を連れて駅まで走った。
カウンターに座る悠に、アイスコーヒーを出す。
急がせたせいで、暑いらしい。
パーカーのショルダー部を肩から外し、襟元を空気に曝す。深めに被ったキャップはそのまま。片手でグラスの上部を持ち、ストローを器用に避けながらごくごくと飲む。
「可愛い。良く似合ってんじゃん」
「……ありがと。……でも、可愛くは、……ないと思う」
キャップのツバから覗く、真っ直ぐな悠の双眸が僕を捕らえる。
白いシャツに黒のキャスケット帽とカフェエプロン。胸にはネームプレートを付けただけの、とてもシンプルな格好。
「他にいねーの、店員」
「うん。最初は先輩と二人でやってたんだけど……今は一人だよ」
「そっか。大変だな」
「ううん、そうでもないよ。……ここは、常連さんで成り立ってるような店だし。混み合う時間さえ過ぎれば、後はマイペースに仕事できるから……」
心無しか、クリニックに訪れた時よりも開いているような気がした。
会計を終え、外に出る。
院内の清潔な空気とは違い、排気ガスに塗れた街の空気。文明の恩恵を受けながらも、こんな薄汚れた空気を吸って生きていかなければならないのかと思うと……何だかいたたまれない。
駅に向かう途中、大きな歩道橋を渡っていると商業施設が見えた。その建物にある、大きな液晶スクリーン。プロモーション映像が流れた後、画面いっぱいに、デジタル時計が表示される。
その瞬間、ハッと我に返った。
「……悠、ごめん。もうすぐバイトの時間だから……」
「そこ、俺も行くわ」
「……え」
悠ののんびりとした返しに、驚く。
「バイトしてる双葉の姿、大輝が知ってて俺が知らないのは、何か不公平で癪に障るしな」
「……えぇっ、そういう理由……?!」
「そういう理由だよ」
慌てる僕の反応が面白いのか。悠がやけにニヤニヤする。
「……別に来たって、何にも面白くないよ」
「んだよ。大輝には見せられて、俺には見せたくねーのかよ」
「そうじゃないけど。……もぅ、遅刻しちゃう……!」
らちの明かない問答を繰り返す暇はなく。悠を連れて駅まで走った。
カウンターに座る悠に、アイスコーヒーを出す。
急がせたせいで、暑いらしい。
パーカーのショルダー部を肩から外し、襟元を空気に曝す。深めに被ったキャップはそのまま。片手でグラスの上部を持ち、ストローを器用に避けながらごくごくと飲む。
「可愛い。良く似合ってんじゃん」
「……ありがと。……でも、可愛くは、……ないと思う」
キャップのツバから覗く、真っ直ぐな悠の双眸が僕を捕らえる。
白いシャツに黒のキャスケット帽とカフェエプロン。胸にはネームプレートを付けただけの、とてもシンプルな格好。
「他にいねーの、店員」
「うん。最初は先輩と二人でやってたんだけど……今は一人だよ」
「そっか。大変だな」
「ううん、そうでもないよ。……ここは、常連さんで成り立ってるような店だし。混み合う時間さえ過ぎれば、後はマイペースに仕事できるから……」
あなたにおすすめの小説
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
キミが、僕を選ぶまで
天かす
BL
誰にも選ばれなかった僕を選んだのは、白い獣だった。
人間と、人間と以外の生物の特徴を併せ持つ“半人”が共に生きる世界。
この世界では、人は六歳から十六歳までの間に、自らのパートナーとなる半人の幼体を選び、育てる義務を負っている。
けれど深森 夜(フカモリ ヨル)は、十五歳になった今も、パートナーがいなかった。
周囲に置いていかれ、価値がないような痛みを抱えながらも、彼が半人を求め続けるのには理由がある。
ある日突然姿を消した幼馴染――薮颯太。
「彼は半人と共に消えたらしい」
その噂をきっかけに、夜は半人保護機関へ入るため、自分のパートナーを探し続けていた。
そんなある雨の日。
保護施設の奥で夜が出会ったのは、傷だらけで倒れた白い獣。
その出会いはやがて、選ぶはずだった少年と、選ばれることを望んでいた半人、二人の運命を大きく変えていく――。
これは、ずっと誰にも選ばれなかった少年が、たった一人の半人に選ばれるまでの物語。
そして、やがてその白い獣に平凡男子な夜が、溺愛執着されるまでの二人の出会いの話。