52 / 62
和菓子 踏切 警戒色
隣の椅子に置かれたのは、ビジネスバッグと老舗和菓子屋の菓子折。
この後、取引先に訪問するのだろうか。
「……いらっしゃいませ」
「こんにちは」
気恥ずかしさに顔を赤らめていれば、優しく微笑んだ誠が挨拶を返してくれる。
「次の仕事まで少し時間が空いたので、双葉さんの顔を見に来ました」
瞬きを数回した後目を細め、形の良い唇の両端が上がり、綺麗な弧を描く。
「元気そうで、良かったです」
「………はい」
緊張から、中々心臓が落ち着いてくれない。
誠さんと恋人同士になった実感が、まだあまり湧かなくて。未だに片思いを続けているかのよう。
「──!」
外した視線の先に見えたのは、電話をする悠の後ろ姿。
「………あの、誠さん。……すみません、今、ここに悠が来てます……」
その言葉に、誠の顔が一瞬強張る。
「すみません。……まだきちんと、誠さんとの事を、話せてなくて……」
「そうですか」
「……ごめんなさい」
「いえ。そんなに謝らないで下さい。……双葉さんの気持ちが、真っ直ぐ僕に向いているのなら……僕は、幾らでも待ちますよ」
誠の言葉や優しさに、胸がキュッと締め付けられる。
悠の事で、気を悪くした筈なのに……
カンカンカン……
警戒色である、黄色と黒の長い棒が下りる。
電話を終えた悠が戻ってから、カウンター越しに座る悠と会話を再開した。
でも、その間も気になって。何度か誠の背中へと、視線を送ってしまっていた。
誠はコーヒーを一杯飲み終えると、直ぐに席を立つ。特に会話を交わす事も無く、会計を済ませ店を立ち去った。
ゴォーッ
目の前を、快速電車が通る。
風圧がかかり、吹き付けられた髪が靡く。
「……双葉」
轟音にかき消される声。
乱れた横髪に差し入れられる、悠の指。
隣に立つ悠を見れば、その手が後頭部に回り、強く引き寄せられて……
「……!!」
迫った悠の唇が、僕の唇を塞ぐ。
一瞬反応が遅れ、体を押し返すも、容赦なく咥内に舌を捩じ込まれ……
ゴォーッ
カンカンカン……
脳内に響く轟音。乱れ狂う髪。
通り過ぎると同時に、唇が離される。
「…………ゆ……う、」
「双葉。俺から離れんなよ」
「……え……」
不安を煽る赤い点滅と警告音が消え、遮断機が上がる。
その向こう側に広がるのは、真っ暗な闇、闇、闇──
殆ど外灯も無く、人の気配すら感じない。
「……」
悠と僕だけ。
ここに立っているのは、悠と僕の……二人。
──どうしよう。
不安に駆られる僕の手を、悠の手がギュッと掴む。
この後、取引先に訪問するのだろうか。
「……いらっしゃいませ」
「こんにちは」
気恥ずかしさに顔を赤らめていれば、優しく微笑んだ誠が挨拶を返してくれる。
「次の仕事まで少し時間が空いたので、双葉さんの顔を見に来ました」
瞬きを数回した後目を細め、形の良い唇の両端が上がり、綺麗な弧を描く。
「元気そうで、良かったです」
「………はい」
緊張から、中々心臓が落ち着いてくれない。
誠さんと恋人同士になった実感が、まだあまり湧かなくて。未だに片思いを続けているかのよう。
「──!」
外した視線の先に見えたのは、電話をする悠の後ろ姿。
「………あの、誠さん。……すみません、今、ここに悠が来てます……」
その言葉に、誠の顔が一瞬強張る。
「すみません。……まだきちんと、誠さんとの事を、話せてなくて……」
「そうですか」
「……ごめんなさい」
「いえ。そんなに謝らないで下さい。……双葉さんの気持ちが、真っ直ぐ僕に向いているのなら……僕は、幾らでも待ちますよ」
誠の言葉や優しさに、胸がキュッと締め付けられる。
悠の事で、気を悪くした筈なのに……
カンカンカン……
警戒色である、黄色と黒の長い棒が下りる。
電話を終えた悠が戻ってから、カウンター越しに座る悠と会話を再開した。
でも、その間も気になって。何度か誠の背中へと、視線を送ってしまっていた。
誠はコーヒーを一杯飲み終えると、直ぐに席を立つ。特に会話を交わす事も無く、会計を済ませ店を立ち去った。
ゴォーッ
目の前を、快速電車が通る。
風圧がかかり、吹き付けられた髪が靡く。
「……双葉」
轟音にかき消される声。
乱れた横髪に差し入れられる、悠の指。
隣に立つ悠を見れば、その手が後頭部に回り、強く引き寄せられて……
「……!!」
迫った悠の唇が、僕の唇を塞ぐ。
一瞬反応が遅れ、体を押し返すも、容赦なく咥内に舌を捩じ込まれ……
ゴォーッ
カンカンカン……
脳内に響く轟音。乱れ狂う髪。
通り過ぎると同時に、唇が離される。
「…………ゆ……う、」
「双葉。俺から離れんなよ」
「……え……」
不安を煽る赤い点滅と警告音が消え、遮断機が上がる。
その向こう側に広がるのは、真っ暗な闇、闇、闇──
殆ど外灯も無く、人の気配すら感じない。
「……」
悠と僕だけ。
ここに立っているのは、悠と僕の……二人。
──どうしよう。
不安に駆られる僕の手を、悠の手がギュッと掴む。
あなたにおすすめの小説
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
キミが、僕を選ぶまで
天かす
BL
誰にも選ばれなかった僕を選んだのは、白い獣だった。
人間と、人間と以外の生物の特徴を併せ持つ“半人”が共に生きる世界。
この世界では、人は六歳から十六歳までの間に、自らのパートナーとなる半人の幼体を選び、育てる義務を負っている。
けれど深森 夜(フカモリ ヨル)は、十五歳になった今も、パートナーがいなかった。
周囲に置いていかれ、価値がないような痛みを抱えながらも、彼が半人を求め続けるのには理由がある。
ある日突然姿を消した幼馴染――薮颯太。
「彼は半人と共に消えたらしい」
その噂をきっかけに、夜は半人保護機関へ入るため、自分のパートナーを探し続けていた。
そんなある雨の日。
保護施設の奥で夜が出会ったのは、傷だらけで倒れた白い獣。
その出会いはやがて、選ぶはずだった少年と、選ばれることを望んでいた半人、二人の運命を大きく変えていく――。
これは、ずっと誰にも選ばれなかった少年が、たった一人の半人に選ばれるまでの物語。
そして、やがてその白い獣に平凡男子な夜が、溺愛執着されるまでの二人の出会いの話。