54 / 62
もどかしい 指先 弄ぶ
しおりを挟む
**
何度足が竦んだだろう。
スマホに登録した住所をアプリの地図で調べ、ようやく悠の実家に辿り着いたものの……
「……」
ここまで来て、僕が首を突っ込んでいいものかと弱気になっていた。
時代を感じる造り──当時の流行りであったのだろう、西洋の造形を取り入れた二階建ての家。
それを少し離れた所から眺めていると、不意に玄関のドアが開いた。
出てきたのは、二十代半ばの綺麗な女性。
セカンドオピニオンで訪れたメンタルクリニックで、悠に兄弟はいないと言っていた……
──という事は。
あれが悠の、奥さん……
そう思った途端、身体に緊張が走る。
ゆっくりと大きく深呼吸をし、意を決して足を一歩前に踏み出す。
「……あの、すみません」
カチャン、と門の鍵を掛けるその女性を呼び止める。
大通りに面した場所にある、大手のファミリーレストラン。平日のせいか、そこまで混み合ってはいない。
相向かいに座る彼女が、テーブルに片肘をついて僕に微笑む。
「……成宮双葉くん、よね。
悠から良く話を聞かせて貰ったり、写真も見た事があるから、直ぐに解ったわ」
そう言いながら、グラスに刺さったストローを指先で弄ぶ。
カラン……と、氷とグラスのぶつかり合う爽やかな音が、辺りに響く。
「私ね。これでも二人の事、密かに応援してたのよ」
……え……
「……あ。私の事、もしかして悠の嫁とか思った?
ふふ、ごめんね。挨拶が遅れました。私、悠の姉の響子です」
「──え、」
驚く僕に、響子が豪快に笑う。
一見お淑やかなせいもあって、そのギャップにも驚く。
そんな僕から視線を外し頬杖をつくと、ストローでグラスの中を掻き混ぜる。
「私ね、母の連れ子なの。
……悠とは半分血が繋がった、姉弟。
父方に親権が移るまで、悠と大輝と私の三人で、よく遊んだものよ」
「……」
何となく、想像してしまう。
幼い悠と大輝と響子の三人が、燥ぎながら野原を駆け回り、ダイヤモンドのようにキラキラと輝く毎日を過ごしながら、笑い合ってる姿を。
「……ああ、そうそう! 大輝もね、悠とは腹違いの兄弟なのよ」
屈託のない笑顔を見せ、響子がさらりと暴露する。
「──、」
何度足が竦んだだろう。
スマホに登録した住所をアプリの地図で調べ、ようやく悠の実家に辿り着いたものの……
「……」
ここまで来て、僕が首を突っ込んでいいものかと弱気になっていた。
時代を感じる造り──当時の流行りであったのだろう、西洋の造形を取り入れた二階建ての家。
それを少し離れた所から眺めていると、不意に玄関のドアが開いた。
出てきたのは、二十代半ばの綺麗な女性。
セカンドオピニオンで訪れたメンタルクリニックで、悠に兄弟はいないと言っていた……
──という事は。
あれが悠の、奥さん……
そう思った途端、身体に緊張が走る。
ゆっくりと大きく深呼吸をし、意を決して足を一歩前に踏み出す。
「……あの、すみません」
カチャン、と門の鍵を掛けるその女性を呼び止める。
大通りに面した場所にある、大手のファミリーレストラン。平日のせいか、そこまで混み合ってはいない。
相向かいに座る彼女が、テーブルに片肘をついて僕に微笑む。
「……成宮双葉くん、よね。
悠から良く話を聞かせて貰ったり、写真も見た事があるから、直ぐに解ったわ」
そう言いながら、グラスに刺さったストローを指先で弄ぶ。
カラン……と、氷とグラスのぶつかり合う爽やかな音が、辺りに響く。
「私ね。これでも二人の事、密かに応援してたのよ」
……え……
「……あ。私の事、もしかして悠の嫁とか思った?
ふふ、ごめんね。挨拶が遅れました。私、悠の姉の響子です」
「──え、」
驚く僕に、響子が豪快に笑う。
一見お淑やかなせいもあって、そのギャップにも驚く。
そんな僕から視線を外し頬杖をつくと、ストローでグラスの中を掻き混ぜる。
「私ね、母の連れ子なの。
……悠とは半分血が繋がった、姉弟。
父方に親権が移るまで、悠と大輝と私の三人で、よく遊んだものよ」
「……」
何となく、想像してしまう。
幼い悠と大輝と響子の三人が、燥ぎながら野原を駆け回り、ダイヤモンドのようにキラキラと輝く毎日を過ごしながら、笑い合ってる姿を。
「……ああ、そうそう! 大輝もね、悠とは腹違いの兄弟なのよ」
屈託のない笑顔を見せ、響子がさらりと暴露する。
「──、」
0
あなたにおすすめの小説
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
君に二度、恋をした。
春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。
あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。
――もう二度と会うこともないと思っていたのに。
大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。
変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。
「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」
初恋、すれ違い、再会、そして執着。
“好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか――
すれ違い×再会×俺様攻め
十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
フードコートの天使
美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。
あれから5年。
大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。
そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。
それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。
・・・・・・・・・・・・
大濠純、食品会社勤務。
5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。
ずっと忘れない人。アキラさん。
左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。
まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。
・・・・・・・・・・・・
両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる