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キング編
449.
しおりを挟む「嬉しいなぁ……まさか、元締めである桐谷サンが、俺の本当の父親かもしれないなんて」
屋久の口端が僅かに持ち上がる。
「確かに。桐谷サンの言う通り、アレはクソジャンキーで、文字通り自分のクソに塗れて死んでいった、クソ情けない男ですよ。
俺を産んだ女も、男を見る目がないですね。……あんなクズ野郎より、桐谷サンの方が断然いいに決まってます」
「……」
屋久の言葉に、男──桐谷が訝しげな、しかし食い入るような眼で屋久をじっと見据える。
「もし母が、桐谷サンのオンナでいたなら、あんな不様な死に方なんてしなかった。それに、俺自身もあのクソ野郎に犯されずに済んだでしょうね。
……幾らこの顔が、母に似ているからって──」
眼を細め穏やかに微笑み掛ければ、母のそれと重なったのか……桐谷の片眉が僅かに持ち上がる。
「でも……だからこそ、良かったのかもしれません」
「……」
「頭のキレる桐谷サンなら、もうお解りですよね。
自分の子供かもしれない俺が、あのクソ溜めからのし上がり、今や太田組組長の養子。そして、世間を震撼させたvaɪpərの現リーダー。
……充分、利用価値があるとは思いませんか?」
淡々と屋久がそう畳み掛ければ、腹の中を探るように見つめていた桐谷が、ふと顔を綻ばせる。
「………面白いじゃねぇか」
ボソリと呟き、ニヤける口元。
構えたダーツの矢を放り投げるように箱へと戻す。
「気に入った。今までの無礼は水に流してやる。但し──」
ギラギラする二つの眼。そこに劣情が滲み、桐谷が厭らしく舌舐めずりをする。
「──案の定、桐谷は俺の亡き母に随分な未練があったみたいでね。存分に俺を堪能したよ」
「……」
「所謂、口淫ってヤツだ」
僕の顎先に掛けた屋久の手。その親指が、僕の下唇に触れる。そして意地悪げに少しだけ捲り、その指先を咥内へと僅かに差し込む。
「……」
その後、製造元との取引は白紙に戻し、桐谷から安価で卸す形となった。が、その実態は酷いもので、vaɪpərが大きくなればなる程足下を見られ、その単価は倍以上に跳ね上がった。
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