シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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キング編

473.

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天井の照明を落とし、遠くのカウンター上部にあるスポットライトのみが点灯する、薄暗い部屋。
注射が終わると、ベッドサイドに運んだダイニングチェアに腰を掛け、足を組んだ屋久が、文庫本サイズの本を開く。

「………目を閉じて……ゆっくり、深呼吸。……そう、全身の力を抜いて……リラックス……」
「……」
「それじゃあ、少しずつ時間を巻き戻していくよ……」

穏やかで、優しい声。
屋久の言葉に誘導され、身体中の力が抜け落ちていく。
やがて、ベッドの中に身体が沈んでいき、まるで水中に沈んだかのような感覚に襲われる。



ぴちゃん……

暗闇に近い空間。
足下には、波一つない水面。
そこに爪先を付けば、真っ白な波紋が反響音を立てて広がっていく。
その波紋を追い掛けるように光る、蒼色のキラキラと輝く発光体。それはまるで、夜光虫のよう。

「………やっと、来てくれた」

光の輪を追い掛けていった視線の先──波紋に揺れた水面に、俯き加減の男の子の影がぼんやりと映る。

「待ちくたびれたよ、さくら」
「……え……」

水面ギリギリに浮かぶ、僕そっくりの『僕』。

まるで、鏡を見ているかのよう。でも、見た目は僕そっくりなのに、纏う雰囲気は全然違っていて。
過去、色んな人達から聞いていた『小さな若葉』という表現が、ピッタリ合っている事に気付かされる。

「大丈夫。僕は味方だから。……味方っていうか、君自身なんだけどね」
「……」
「可哀想に。色んな男の所にたらい回しにされて、すっかり弱っちゃったね。
……ふふ。でもそのお陰で、僕は時々外に出られるようになったけど。ククク……」

笑いを堪えるような、薄気味悪い声。
顎を少し引き、口元に握った拳を当て、下卑するような目付き。刺すような視線で僕を見据える。

「………ねぇ、下を見てよ」
「え……」
「いいから」

言われるがまま、怖ず怖ずと足下を見る。



ぽちょん……

蒼い発光体の波紋がひとつ、水面に広がっていく。
真っ暗だと思われていた水面下がぼぅっと白く光り、やがて透き通って見えてくる。まるで水面が、透明ガラスにでもなったかのように。

その中央。
蠢く、何か。
目を凝らして見れば、それは餌に群がる虫けらに似ていて。


「──!」

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