シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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キング編

478.

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「……そうなる前に、インナーチャイルドが引き受けたものを引き取って、向き合うんだ。
少しずつでいい。そうやって心を穢していけば、いずれインナーチャイルド自体を取り込んで、支配する事ができる」
「……そんな、事……できるの?」
「できるよ。俺も基和カズも、心の中に巣くっていたインナーチャイルドを取り込んで、乗り越えてきたんだからね」
「……」

……それが、成長……?
みんな、そうやって大人になっていくの……?

ハイジも、寛司も、蕾も──誰もがみんな……そうやって……

「心配しなくていい。姫には、俺がついているんだから」
「……」

このまま……屋久に縋っていいんだろうか。
土壇場にきて、ふとそんな不安が過る。

「………ねぇ、基成」 
「ん?」
「ピアス。……僕にピアス、付けて……」

乾いた唇を小さく動かし、切羽詰まった目をゆっくりと屋久に向ける。

……もう、僕には……無い。
竜一から貰ったピアスしか……縋れるものが……

「………わかった。明日の夜、空けてあげるよ」

優しい笑みを漏らし、屋久が僕の耳朶をそっと摘まむ。


「……」

もう、他に道はない。
対峙して取り込まなければ、心の中にいる『僕』が暴走して……僕自身は、消えてしまうかもしれない。

いつの間にか、ホットミルクの湯気が消えている。代わりに現れたのは、表面にできた薄い膜。まるで、表層と深層部との交わりを断つかのように。

「……」

──でも。
もしかしたら……それでもいいのかもしれない。
僕の魂ごと、消えて無くなるのであれば、それでも……
取り返しがつかない所で、突然僕の意識に切り替わらないのであれば……

このまま消えても……別にいい。
狂気的とはいえ、生命力の漲ってる『僕』なら……多分、屋久と上手く渡り歩いていける。ここを脱出する事だってできる。
それに、きっと……僕自身の身体を、こんな酷い目には遭わせない。

「……」

……本当、酷いな。
こんな姿になってしまっているのに、殆ど何も口にしないし。
遂には、手首まで切って……

チラリと視界に映る、手首の包帯。
痛みというよりも、あの時の衝撃が脳裏を襲う。

それとも……
このままもう一人の『僕』と、心中してしまおうか。
ふと、そんな考えが過った──時だった。



『──さくら』


脳の奥に響く、僕を呼ぶ声。

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