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エピローグ
542.
しおりを挟む──『助かって良かったね。……て言いたい所だけど。あのまま死んじゃった方が、君にとっては楽だったかもしれないね。
極度の栄養失調。……それと、レイプによる感染症』
コツコツコツ……
『心配しなくていいよ。直ぐにどうこうするつもりはないから。
姫にはこの先、やって貰わなきゃならない事があるしね』──
「──!!」
再生されたそれは、悪意を含む吉岡の肉声であった。
──『さて。何か聞きたい事はある?』
『──五十嵐、は……?』
『くッ、ハハハハッ!! 聞きたい事ってそこ?! 姫をレイプした相手がそんなに心配なんだ……
やっぱ姫って、世間知らずのお『姫』様……なんだねぇ』──
さくらの、擦れて消え入りそうな声。それに被せるように失笑し、食いものにするかの如く罵倒する吉岡の声。
「……、お前」
その間五十嵐は、分が悪そうに俯く。
それまでの行動の意味がモルの中で繋がれば、五十嵐に対する嫌悪感で満ち溢れる。
──『………どうして菊地さんが殺されたのか。その理由は知りたくないんだね?』──
本題に入ると、静物のように反応の無かった深沢の指先がピクリと動く。
──『姫が世話になっていた凌の事は、良く知ってるよね。その凌が、元太田組と繋がりのある:vaɪpər(ヴァイパー)に殺された事も』
『……』
『……それを知った兄貴分の八雲が俺に近付き、凌を殺した:組織(ヴァイプ)リーダーに報復したいと、この計画を持ち掛けてきたんだよ』──
「………八雲、か」
深沢が小さく声を洩らす。
「お前、知ってるか?」
「はい。菊地さんが抱えていた、狩りグループの一人ッス」
「……お前が前にいた所か……」
そう洩らしながら、深沢が顎先に指を掛ける。何かを考えているかの如く、少しだけ揺れる視線。それが、モルから五十嵐へと移る。
「しかし、これだけでは……工藤さくらが実行犯ではないという証拠にはならない」
「──でもっ!」
顔を伏せながら、五十嵐が声を張り上げる。床に付いた手を震わせながら。
「やったという証拠も、ないですよね」
「……」
五十嵐の言葉を受け、僅かに持ち上がる瞼。瞳が小さく揺れた後、唇の片端がクッと持ち上がる。
「成る程」
「……」
「菊地の、女を見る目は正しかった……って事か」
そう吐露した深沢の目が鋭く尖り、五十嵐ではない何処か遠くを睨む。
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