シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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ハイジ編

126.

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「………姫」

心外そうな瞳が、僕を見つめる。

多分、酷い顔をしてるんだろう。
文字通りの性暴力を受け、腫れた顔は乾いた血に塗れ……全然説得力なんて、ないのかもしれない。

「……」

モルは、知らないんだ。
ここでの出来事を、何一つ。
目に見えてるものだけしか、多分見えてない。

でも、それは仕方がない事だと思う。
モルにとっては、この光景こそが真実なのだから──


「……シャワー、浴びたい。モル、肩貸して……」

視線を下げ、小さく呟きながらケットを外す。ベッドに片手を付き腰を浮かせ、モルに身体を寄せる。

「了解ッス」

ベッド端に座り、自身の肩に僕の腕を回して引っ張り上げようとした。

──その時。



「……よぉ、モル!」


勢いよくドアが開き、低声と共に大きな影が部屋に侵入する。

黒革の靴。高級スーツ。オールバックにドス黒いオーラ。
何処からどう見ても、ソッチの世界だと解るその人は──


「………龍、さん」


モルの驚いた声。

「……」

忘れもしない。
竜一のアパートに、ハイジと共に現れた──大友組の若頭補佐。

「ここまで案内、ご苦労だったな」
「……!」

眉尻を吊り上げ、息を飲むモル。……後を付けられていた事を悟ったんだろう。

「……まさか、ハイジがこんな所に住んでたとはなァ」

そう言いながら、ゆっくりとした足取りで龍成が此方に近付く。
僕の背中に当てられていたモルの手が、僕の二の腕を摑んで強く引き寄せる。

「モル。さっきお前、”姫”とか言ってなかったかァ? 
何だお前……そのオンナに惚れてんのか」

龍成がベッド端にドカッと座る。
そして足を組み、自身の顎先に手を掛け、少し離れた所から僕をジッと見据えた。


「まさか。ハイジの姫ッスから」


へらっと笑ってモルが答えれば、龍成の口端が緩く持ち上がった。


「……山本のオンナ、の間違いだろ?」


ねっとりと、絡み付くような視線。嫌悪感を剥き出しながら、睨み返す。


「それから、アゲハの実弟。……だよなァ、工藤さくら」


その目が据わり、瞬時に迫力が増す。





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