216 / 559
菊地編
216.
しおりを挟む伝票に伸ばされた手。
それが視界の端に映れば、慌ててスプーンを手に取った。ハンバーグを小さく切り、ご飯と一緒に口へと運ぶ。
その様子に気付いた寛司が、拾い上げた伝票をそっとテーブルに戻す。
「………」
……何となく感じる、視線。
もぐもぐと、咀嚼を繰り返しながら黒目だけを上に動かせば、小動物を愛でるかような顔つきの寛司と目が合う。
その目は、以前、バーのVIPルームで、焼き飯を食べようとした僕をじっと見つめる、ハイジの目と似ていて………
「……どうした?」
僕の変化に気付いたらしい寛司が、テーブルに片肘をついて僕に微笑む。
多分、言わなくても伝わってる。……でも、今その名前は……言えない。
「……」
「何だよ」
「……そんなに見たら、恥ずかしい……」
「そうか」
目を伏せながら答えれば、返ってきたのは嬉しそうな寛司の声。
車を路地裏にあるパーキングに停め、繁華街へと向かって歩く。
サングラスに顎髭。ノースリーブにハーフパンツ。真夏のような格好に加え、剥き出しになっている、アトピー肌と湿疹。
そのせいで、悪目立ちしてしまうんだろう。チャラ目の若い男達が寛司に気付くなり、軽く頭を下げて挨拶をしてくる。
こういう姿を見ると、やっぱり実感する。
寛司が、一般人じゃないんだって。
「……服でも、買うか」
「え……」
「お前、最近それしか着てねぇだろ?」
寛司が僕に流し目をし、口元を緩ませる。
「直ぐそこに、俺の弟分がやってるセレクトショップがある」
「……」
「いくぞ」
手を掴まれる。
絡められる、指と指。
それまで触れてなかった分、心と心が密接したような、高揚感に包まれる。
「……うん」
繁華街の入り口に流れる川。
その川面を映す、見事な柳。
繁華街中心の華やかさとは異なり、和を感じさせるこの風情は、まるで小江戸。ここだけが小さく切り取った、城下町のよう。
飲み屋、レストラン、雑貨店、……様々な個人店が軒を連ね、それぞれが風景とマッチした、品のある店構え。
「……ああ、ここだ」
寛司が足を止める。
見れば、古い雑居ビルをリノベーションしたような、お洒落な外観。
道路に面した一階に三店舗が並び、どの入り口も個性的な装飾が施されている。
中でも一番左の店舗は、見るからにガラの悪そうな男達が好むような雰囲気を醸し出していた。
10
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる