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キング編
356.
しおりを挟む「早く開けろっ、!」
「………おいバカッ。ドアを叩くなって言われてんの、忘れたのか?」
ドアの向こう。誰かが近付きながら、怒鳴り散らす男を注意する。
「………あぁっ?!」
「お前、キングに殺されんぞ!」
「………」
──キング
キング、って……?
蕾の方へと視線を移すものの、その瞳は脅えきっていて微動だにしない。
「そこのワゴンに乗せときゃあ、俺達が離れた頃を見計らって、蕾がドアを開けんだよ」
「はぁ……? 何で手渡しじゃねぇんすか?」
「……お前なぁ、マジで話聞いてなかったのかよ。……蕾はある条件を満たすと、誰彼構わず襲いかかって堀りまくんだよ」
「……」
「あー、あー、信じてねぇな。
覚醒した時の奴は尋常じゃねぇ。少年院ん中でそのスイッチが入った事があって。そん時、看守を含めて十数人を拉致監禁し、思うがままに野郎共をレイプしまくったんだってよ」
「………はぁ……」
半ば信じられないと言った様子の男の声。
その話なら、以前真木から聞いた事がある。ファミレスで、寛司に飲ませる白い粉を渡された時だ。
僕も話を聞いた時、そんな人間が本当にいるのか、俄に信じられなかったけど……今なら、容易に想像がつく。
「じゃあキングは、その猛獣を手懐けて部屋飼いしてんすか?」
「……まぁ、そういう事だ」
「……」
「けどなぁ。飼ってんのは、何も猛獣だけじゃねぇんだぜ……」
宥めていた男の声色が一変する。
それまでの先輩風を吹かすような物言いとは違い、舌舐めずりし、下心を丸出しにした……醜くて厭らしい声。
「エロくて可愛い、キングのオンナだよ」
「………」
「お前は今日入ったばっかだから、知らねぇよなぁ……」
肩だか背中だかを2度叩く音がし、足音と共に声が遠ざかっていく。
「………」
雨が降りしきる中──車が駐まったのは、竜一が用意してくれたアパートから目と鼻の先にある、二階建ての住宅。
ひび割れて苔の生えた高い塀に囲まれ、庭には雑草が蔓延り、壊れた傘や子供用の黄色い長靴、薄汚れたあひるやシャベル等のプラスチック玩具が散乱している。
基泰に手を引かれ、飛び石の上を歩いて行けば、昭和の匂いがするレトロモダンな戸建ての玄関に辿り着く。
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