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キング編
381.蕾の過去
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ひやりとした感覚がし、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
思うより先に手をやれば、冷たいものが額に置かれている事に気が付く。
「……」
取り上げて見れば、それは小さく折り畳んだ濡れタオル。
ぼんやりとする思考。霧がかった視界。
タオルを掲げたままでいれば、その向こうに人影が見えた。
………誰、だろう……
白んでぼやけている視界。
瞬きをひとつするものの、その姿形や色彩は、中々はっきりとしない。
焦点の合わない瞳を少し細め、その人影をじっと見つめていれば、口元が動いたのが解った。
「………よ、……よかっ……」
弱々しい声。
少し、震えてる……?
ゆっくりと瞬きをし、再び目を凝らす。
少しずつだけど、次第にクリアになっていく視界。
その瞳のレンズに映り込んだのは──後ろに束ねた赤い髪、首に巻かれた鎖、不安げに揺れ動く、二つの瞳。
「………らい」
名前を呼べば、揺れていた蕾の瞳が止まり、瞼が大きく持ち上がる。
「これ、蕾が……?」
「………うん」
「……」
「で、でも……さわって、ない……」
こくんと大きく頷いた後、否定するように、慌てて首を横に振る。
『触っちゃ駄目だよ』──屋久の言いつけを、律儀に守ろうとしているんだろう。
でも、それだけじゃない。
意識を失っていた僕を心配して……これを……
「……」
僕の軽はずみな行動のせいで、蕾は首に鎖を括られてしまったというのに。
「………、」
ありがとう──そう伝えたかったのに、中々口から出てきてくれなくて。
軽く目を瞑り、空気に晒され再び冷えたタオルを片頬に当てる。
あんな事があったからなのか。まだ、身体は熱くて。蕾がくれたこれは……ひんやりとしていて気持ちいい。
「………ごめ、……なさ……い……」
喉奥から絞り出したような、か細い声。
その声に導かれて目を開ければ、蕾の瞳から涙が零れていた。
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