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31.告白
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岩瀬が言っていた通り、樫井秀孝の未成年者に対する性加害報道は既に風化していた。あれだけ怖くて付けられなかったテレビも、今では普通に見られている。
久し振りに来た学校は、平穏そのもので。ハンチング帽の男やジャーナリストらしき人物の姿は無く、職員室前も騒がしくはなかった。
それでも。ネットに流れるニュースや動画配信サイトでは、事件のまとめや考察がチラホラと上がっているらしく。教室のドアを開けた瞬間、僕の姿を捉えた女子の一人が、クラスメイト全員に聞こえる声でその内容を喋り始めた。
「……」
……別に、どうだっていい。
僕に直接危害を加えてこない限り、気になんてしてやるもんか。
一変した空気に居心地の悪さを感じながらも、平静を装って自席へと向かう。
此方から関わらなければ、約7割の人間が僕をスルーする──若葉から聞いたその法則を思い出して深呼吸をすれば、不安に追い詰められそうだった:精神(こころ)に少しだけ余裕が生まれる。
ショルダーバッグを机の横に引っ掛け、引いた椅子に腰を掛けると、窓の外を眺めながら片肘をつく。
「……」
部屋に籠もっていた時から、ずっと気掛かりな事があった。
最後に見た凌の姿が思い出される度に、チラつくハイジの暴行事件。
約束の三ヶ月なら、もう過ぎた。
もしニュースを聞きつけて、ハイジが学校に乗り込んでいたとしたら……そういう噂が立っていても可笑しくはない。
でも、聞こえてくるのは樫井秀孝の事件だけだから、まだ戻って来てはいないんだろう。
……今更になって思う。ヤバい仕事って、一体何だったんだろう。
凌の姿と重なるハイジ。
晩夏に起こした暴行事件のせいで、同じ末路を辿っていたとしたら──
「……」
清々しい程の、澄み切った青空。
暑い季節に見た入道雲や強い日射し等は、もう跡形も無い。
もし、何事もなければ……今もハイジと一緒に居られたかもしれない。ハルオに束縛される事も無く、凌に嵌められる事も無く。
だけどきっと、いつまでも同じ場所に留まり続ける事なんて出来ないんだろう。いつか賽を振る時が来て、同じ結末を迎えるハメになるのかもしれない。
「……」
そう思ったら、目の奥が少しだけ痛み、視界の端が滲む。
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